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事例紹介

2019.07.04

スタジアムを軸とした多角的な事業展開で地方のハンデを克服『鹿島アントラーズ』後編

独自の事業で経営を拡大し、プロスポーツビジネスという枠組みにとらわれず、地方中小企業のビジネスモデルとしても注目されている『鹿島アントラーズ』。
前編では、ホームゲームの興行を中心とした『フットボールビジネス』について、取締役事業部長の鈴木秀樹さんにお話を伺いました。今回は後編として、『ノンフットボールビジネス』について具体的にいくつかご紹介します。

 

同社の多様な事業展開を可能にしている理由の1つが、スタジアムの指定管理者となっているという点です。鈴木さんは「指定管理者制度が導入された2006年からスタジアムの管理運営を受託しています。使える場所があるということで『売り物』が一気に広がります」と説明します。
「同時期にスタジアムの拡張工事をして、収容人数は1万5千人から4万人になりました。ただ、フタを開けてみると当初の想定とは異なり、収容率は50%以下。どうやって収益を確保していくのか、事業全体の見直しを迫られ、スタジアムを有効活用しながら、サッカーファン以外の人にスタジアムに足を運んでもらえる仕組み作りに取り組んできました」
カシマサッカースタジアムは、建設段階から売店の出店を想定してコンコースにガス管や水道管が整備されています。これにより、試合観戦に訪れた人は温かくて美味しい料理を食べられることから、グルメスタジアムとも呼ばれています。試合開催日以外にも、毎年夏にはビアガーデンを開催。現在では、夏の風物詩として地域の人が多く訪れる人気イベントとなっています。

 

 

スタジアムの敷地内も活用しています。2006年にフィットネスクラブ『カシマウェルネスプラザ』をスタジアム内に開設し、2015年にはアントラーズのチームドクターが持つスポーツ医学のノウハウを地域医療向上に活かした『アントラーズスポーツクリニック』を併設。フィットネス事業や医療施設の利用者の多くは、周辺の地域住民だそうです。
「サッカーファンはほんどいないと思います。でも、アントラーズという看板があるから信頼して来てくれるんです。フットボールファンじゃない人たちと接点を持ち始めると、たとえば『チームドクターを紹介して』と言われたり、彼らのニーズがアントラーズの持っているリソースに合致してきたんです。そこで調査をすると、この地域は医療過疎地に近いことが判明しました。こうして事業の見通しを立てたうえで始動したんです」
さらに2019年6月には運営する『カシマサッカーミュージアム』が全面リニューアルオープンしたほか、温泉湯治施設『Antlers TŌJI』がカシマウェルネスプラザ内に開業したばかりです。

 

『アントラーズスポーツクリニック』©KASHIMA ANTLERS

 

温泉湯治施設『Antlers TŌJI』©KASHIMA ANTLERS

 

試合で使われるピッチも有効活用していると言います。芝にテントを張って宿泊するキャンプイベントやウェディングの前撮り、会社の研修など活用方法はさまざまです。

 

指定管理者になる前はプロアマを含めて50試合程度で、イベントなども開催していませんでしたが、現在では年間約90試合をおこない、試合日以外のイベントなどは年間10件以上あります。
鈴木さんは「サッカーとしての場所でなく、いろんな場所として積極的に活用できるスタジアムとして価値が上がっています。今後もどんどん活用してもらいたいです」

 

ピッチを活用したキャンプイベント©KASHIMA ANTLERS

 

通常、競技用の高品質な芝は管理も難しく、張り替えには時間と費用がかかります。このようにピッチすら活用できるのは、鹿島だけの特別な理由があります。新たなビジネスとして展開し始めた「芝ビジネス」です。「たくさん活用すれば当然芝は痛みます。それならば芝生を張り替えればいいじゃないというシンプルなアイデアです」と鈴木さんは笑います。
天然芝にこだわり、鹿嶋市の気候に適した品種を新たに海外で開発。張り替え技術はオランダで研修し、圃場で養生した芝を絨毯のようにロールで巻き取り、スタジアムに搬入する『ビッグロール工法』を採用することで工期を短縮、カシマサッカースタジアムでは通常数ヶ月かかる芝の張り替えを、21日間に短縮することに成功したそうです。さらに、芝の成長を促すLED照射システムの開発や、冬場に芝が枯れないように年間常緑化をするための特殊な保温シートも独自開発しています。
昨年3月、鹿島アントラーズは、この一連の技術をカシマサッカースタジアムだけでなく、他スタジアムのピッチコンサルティング事業(ターフプロジェクト)としてビジネス展開することを発表しました。現在、日本中央競馬会(JRA)にも採用されています。

 

©KASHIMA ANTLERS

 

そのほかにも、国内外のスポーツビジネス関係者を招いたフォーラムの開催など同社のノンフットボールビジネスは多岐にわたります。「廃校の活用に関する相談など、いろいろなビジネスの話がきています。同僚からはもっとサッカーの話をしてくれと冗談で言われるくらいです」
一方で、そうした多様な事業の目的については、「私たちのクラブの目的はやはり『全てはチームの勝利のため』なんです。『強化費があるか?』 と聞かれたとき、『ある』と言える事業収入を確保することが私たちの役割です」と、ぶれることがありません。

鹿島アントラーズの展開する事業はそれぞれが決して無関係ではなく、チームを強くすることでブランドが育ち、そのブランド力を中心に据えて新たな事業を展開する。そうして事業収入を拡大することが、チームの強化へと繋がっていく、というように循環しているのです。
地方にある鹿島アントラーズは、決して恵まれた経営環境とは言えませんが、知恵を絞ることで課題に対する新たな課題解決の切り口を見出してきました。それを自らの力でビジネスへと発展させる経営手法自体がクリエイティブであると言えるのではないでしょうか。地方の中小企業にとって、学ぶべき点が多くある鹿島に、引き続き注目したいと思います。