MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2018.06.07

場所性を活かし、商いの場へと再生させる長期的なプロジェクト『別府オダサク倶楽部』

今回は、かつて別府市民の 「台所」として賑わっていた、別府中央市場という場所にある、空き地を活用するプロジェクトについてご紹介します。

別府中央市場は、戦後間もなく満州から引き揚げた人たちが開いた市場でした。1階が店舗、2階が住居になった小さな建物が密集し、たくさんの人々が1コマ4畳半の空間で商いと生活を営んでいました。昭和30年代に大きな火災に見舞われますが、その後復興を遂げ、戦後の路地構造を残したまま現在に至る貴重な空間です。休眠状態の土地や建物が多くありますが、近年はベトナム料理屋、コーヒースタンド、チャレンジショップなどがオープンし始め、魅力的なエリアに変わりつつあります。

 

別府市で「路地のあるまちづくり」をテーマに活動する『別府オダサク倶楽部』。その事務局の代表を務める中野 護さんは、中心市街地に空き物件が増えていくのを見るに見兼ねて、別府中央市場跡の一角に建物と土地を購入しました。

この活用に悩んでいた中野さんは『クリエイティブ相談室』を利用し、一級建築士の光浦高史さんとタッグを組みます。そして、小規模な商いのプレーヤーが集まる場として再生させるため、長期的なビジョンで場所の使い方をデザインするプロジェクトが始まりました。

 

3月2日に行われた『報告会』での事例報告の様子

 

前職は新聞記者だった中野さん。『別府オダサク倶楽部』を立ち上げたきっかけは、大阪の法善寺横丁が火災に遭い、そこから再生した記事を読んだことでした。

「僕は記者時代から別府の路地に興味があり、調べているうちに、大阪に路地の小説家として知られる織田 作之助を愛するまちづくり団体『オダサク倶楽部』があることを知りました。この団体に相談し、2003年10月に『別府オダサク倶楽部』を立ち上げました」

中野さんは「路地で商いができて、人が暮らしを営んでいける、そういう正常な新陳代謝がおこなわれる仕組みがほしい」という思いを抱き、2013年には『全国路地サミット in 別府温泉』を開催。同時期に別府中央市場の建物と土地を衝動的に購入したものの、その活用法や資金の工面について具体的な計画が立たないまま、5年が経過していました。

 

ピンクが別府中央市場で、緑色が中野さんの所有する土地 (DABURA.mのHPより)

 

そのような状況のなか、昨年11月におこなった『CREATIVE PLATFORM CAFÉ vol.8』への参加をきっかけに、中野さんは『クリエイティブ相談室』を利用します。ヒアリングを経て、『別府オダサク倶楽部』と『DABURA.m 株式会社』の代表取締役で一級建築士の光浦高史さんとのマッチングによる事業が始動しました。

 

光浦さんは大分市を拠点に、さまざまな建築設計やリノベーション、地域デザインなどに携わっています。光浦さんのインタビューはこちらをご覧ください。

 

光浦さんは中野さんからかつての中央市場の様子や「この場所に2.5坪(四畳半)のディベロッパーたちを呼び戻したい」という長年抱いている思いを聞き、現地視察を重ねました。

 

中野さんの所有する土地を視察する様子

 

光浦さんは、ただ建物を建てるのではなく、地べたから商売を始めて次第に建築空間に変化していく段階を踏むという、中野さんの想いを具現化するための長期的なプロセスを提案しました。それは、1コマ4畳半の場所にいかにプレイヤーを集め、開発していくかという課題に対しての4つのステップから成ります。

 

ステップ1:空き地を整備して、貸はらっぱとして貸し出す

貸はらっぱとは、誰でも少ない初期投資で場所を活用できる、いわば誰もが経営者や表現者になれる空間。全国でも、東京・谷中や千葉県千葉市稲毛区などで実践されている事例がある。

 

 

ステップ2:可動建築で場所の活用を促す

「何かをしたい」人に対し、屋台やリヤカーのような可動建築を貸し出すことで起業や活動のスタートを促すとともに、この場所での恒常的なプレイヤーを募る。

 

 

ステップ3:建築を作る

この場所やステップ2で募った出店希望者にふさわしい建築物を作る。入居者から賃料を得ることで収益を上げ、建設にかかる費用を回収する。

 

 

上述の3つのステップを経て、ステップ4で町への波及を目指します。

「周囲にある休眠状態の物件や空間を探し出し、新たな活用方法を探りながら、別府中央市場全体がどのような変化を遂げていくのが良いかを、場所の使い手たちと考えていきたい」と光浦さんは語ります。

 

この提案を受けて、『DABURA.m』が主体となり運営する『貸原四畳半(かしばるよじょうはん)』が2018年5月1日にオープンしました。別府の貸間文化をもじって名付けられたこの事業は、貸原っぱと可動建築も含めて機能させ、1コマ4畳半の空間を気軽に使えるようにするプロジェクトです。ポップアップショップやファーマーズマーケットなど、使い方は借り手の自由。既に『ゆふファーマーズカフェ in BEPPU』が日常的に開催されて地元のファンを集めていて、留学生やアート系の学生からも利用の打ち合わせが進んでいるそうです。

 

 

 

 

(左)光浦高史さん、(右)中野 護さん

 

『貸原四畳半』の詳細とオープニングパーティーの様子

 

中野さんは「この場所がオープンできたのは、光浦さんとのマッチングの成果です。ここは原っぱのイメージなので、屋内ではできないことを楽しんでほしいですね」と笑顔で語りました。

最後に、光浦さんに今後の展開についてお聞きしました。

「事業のイメージを1人で形にするのは難しい部分もあると思いますが、『持っているもの』を持ち寄ってコラボレーションすることで形になることもあるとおもいます。これからがスタートです。別府の中心市街地を歩いていると、この町のポテンシャルをまだまだ発揮できていないと感じます。この貸原っぱで、観光客も気軽に参加できるイベントを開催したり、親しい友人とパーティーをしたりするのもいいですね。我々も使い方を試行錯誤しているところなので、使い手と一緒に考えながら、このエリア自体の可能性を広げていきたいと思っています」

 

この事例は、中野さんの強い思いに光浦さんが伴走し、いまスタートを切ったところです。別府中央市場は、これから新たなビジネスを生むためのチャレンジや表現の場として成長していくでしょう。今後、自由度が高く気軽に取り組めるという利点を活かしたユニークな使い方が生まれ、まちが変化していく過程を見守っていきたいと思います。

 

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

『貸原四畳半』 http://dabura-m.info/1041

光浦高史さん http://creativeoita.jp/database/mitsuura/

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –