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事例紹介

2017.09.21

マーケットに新たなポジションを生み出した『コエドブルワリー』

埼玉県川越市に本社を置き、30年ほど前から有機農産物に特化した商社として歩んできた『株式会社 協同商事 コエドブルワリー』。同社が約20年前から始めた、川越市産のさつまいもを使ったビール製造は、ブランディングデザイナー西澤明洋さん(エイトブランディングデザイン)との出会いを経て、国内外で高い評価を受けるクラフトビール『COEDO』へと大きく飛躍します。従来の市場にはなかった国産クラフトビールという新たなポジションを作り出した経緯や、地域に根ざしたもの作りのあり方について、代表取締役社長の朝霧重治さんにお話を伺いました。

 

『株式会社 協同商事 コエドブルワリー』代表取締役社長の朝霧重治さん

 

小江戸と呼ばれ、都心からのアクセスも良い観光地・川越市。駅から車で20分ほどのところに、協同商事が運営する小さなビール醸造所『COEDO Craft Beer 1,000 Labo』があります。

「ここで我々は1996年にビール製造を開始しました。その後、主力工場は移転し、ビール事業を拡張したのですが、もし、この小さなタンクで細々とビール製造を続けていたら、『COEDO』は生まれなかったかもしれません」そう語るのは『株式会社 協同商事 コエドブルワリー』代表取締役社長の朝霧重治さん。

「当社は北海道から石垣島まで契約農家を持つ、有機農産物に特化した専門商社です。手作りこそ面白いというクラフトマンシップのもとに、30年前から農産物を加工して付加価値をつける、いわゆる六次化に取り組んできました」

ビール製造の規制が緩和されたのは1994年。バブル経済の崩壊後、全国の地方都市が受けた経済的ダメージに対する政策の1つとして、小規模でのビール製造の許認可がおりました。そんな折に、協同商事は川越市の名産品であるさつまいものなかでも、形の悪いものは味は良くても規格外品となり、大量に廃棄されているという実情を知ります。そこで、規格外品のさつまいもを使ったビールの開発を始めました。翌年には本場ドイツから職人を招聘し、日本人の職人を育てながら、世界でも珍しい『さつまいもラガー』を中心としたビールメーカー『小江戸ブルワリー』が誕生しました。

同じ頃、全国的に地ビールブームが到来します。しかし、観光地の特産品として地ビールを作る小規模メーカーが多く、技術のないまま作られた粗悪な製品が出回ったことによって、地ビールはクセが強くて美味しくないというイメージが広がっていきました。

 

 

「当時は、高品質で美味しいものを提供したいという強い意識を持ったメーカーが多かったとは言えない状況でした。観光地プライスという言葉があるように、一見さんに高値で商品を売るという産業モデルがまかり通っていたんです」

このような背景から、地ビールブームが一気に収束すると、『小江戸ブルワリー』は赤字事業となります。継続のための抜本的な改革を迫られ、朝霧さんは「どこで作っているか」が売りとなる地ビールというカテゴリーから脱却し、「どう作っているか」を大事にしたクラフトビールへの転換を決意します。そのためには、コンセプトとプロダクトを見直し、それらを伝える自社メディアとなるWebサイトの開発が必要です。そこにデザインは欠かせない要素であり、必然的にブランディングデザイナーとの協働を選択したそうです。コラボレーションの決め手となったのは「デザインを経営資源として活かす」という西澤さんの理念でした。とはいえ全てを同時に進めることは難しく、毎年少しずつ取り組むことにしたそうです。

西澤さんとの協議は「ヒアリングというレベルではない」と朝霧さんは言います。

「まずは課題やミッション、企業としてのビジョンを共有し、その上でデザイナーとしてのスキルを発揮してもらっています。ここで重要なのは、ブランディングにかかるコストを費用だと思ってはダメだということです。ブランディングは設備投資と同じで、無形の資産として残るものです。会計上、日本ではデザイン費は費用となってしまいますが、これは日本の法律の課題でもあると思います」

西澤さんと朝霧さんとのパートナーシップは、『Beer beautiful』というシンプルで力強いコンセプトへと結実します。

「このコンセプトは、企業として常に目指すべきゴールであり、行動規範にもなっています。経営者として迷うときにも、それはビールの素晴らしさを伝えることができる本質的な価値を生み出すだろうかとコンセプトに戻って考えることができます」

こうして2006年に、『小江戸ブルワリー』は『COEDO』へと生まれ変わります。

 

『COEDO』には日本の伝統色をイメージした5種類がある

 

『COEDO』は、スーパーで毎日安く買える商品ではありませんが、ラグジュアリー商品でもありません。開発当時、国産のクラフトビールというジャンルは国内の市場に存在しませんでした。実需が皆無とも言える状況から、職人の手作りという新たな価値とビールの楽しさを伝えながら、需要を掘り起こしていきました。

また、ヨーロッパ最大の食品品評会『モンドセレクション』での最高金賞受賞や、『iTQiコンテスト』で『COEDO 紅赤-Beniaka-』が2007年から3年連続で最高位三つ星を受賞したことを皮切りに、国内外での受賞が続いたことも追い風となり、『COEDO』はプレミアムビールとしてすこしずつ認知されるようになっていきました。

 

「この10年で、安全なもの、手作りの美味しいものへのこだわりを持つ一般消費者が増えてきました。また、各地でクラフトビールを作る人が増え始めています。これはかつての地ビールブームのような観光業としての流れではなく、一度は絶えてしまった小規模のビール製造という地場産業が、地域性のあるコミュニティビジネスとして再生しつつあるのだと感じています。我々が20年かけてやってきたことを、他の人たちもやってみたいと思うようになったということは、国産クラフトビールという市場が定着したということなんだと思います。最近は我々も、埼玉のブルワリーであるということをもっと伝えていこうと思っています。地ビールというトラウマから一度は封印していた地域性を、取り戻したいと考えています」

現在、ガラスメーカーとともに『COEDO』の味わいに合わせたグラスの開発に取り組むなど、手作りにこだわる人たちと地域やジャンルを越えたコラボレーションも進められています。ビールを楽しむ文化の発信はますます広がりを見せています。

 

年に1度開催するコエドビール祭では、ビール、食、音楽などが融合し、Beer Beautiful が体感できる

 

『COEDO』は、川越市という土地だからこそ出会えた規格外のさつまいもを素材に生まれました。この偶然こそが地域性だと朝霧さんは言います。

その土地ならではの素材とクラフトマンシップ、そしてクリエイターの発想の3つが見事に融合して生まれた『COEDO』。世界的にも高い評価を受け、国内のマーケットに新たなポジションを切り拓いたもの作りの根底には、土地や先人への感謝がありました。

 


株式会社 協同商事 コエドブルワリー

住所:埼玉県川越市中台南 2-20-1

電話番号:0570-018-777

公式HP:http://www.coedobrewery.com/jp