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CREATIVE PLATFORM OITA

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事例紹介

2020.05.21

協働で培ったコンセプト「百寿品質」に基づき、社員を守るとともに新たな取組に挑戦

大分県臼杵市にある後藤製菓は、銘菓『臼杵煎餅』で知られる、大正8年創業の老舗製菓店です。創業100周年を迎えるあたり、次の100年を見据えた新商品の開発をしたいと後藤製菓 専務取締役 後藤亮馬さんは2018年に『クリエイティブ相談室』を訪れました。そこでクリエイティブディレクターの神鳥兼孝さんと協働し、「百寿品質」というコンセプトを掲げ、新ブランド『IKUSU ATIO (イクスアティオ) 』の立ちあげと新商品『百寿ひとひら』の開発に取り組みました。若年層をターゲットに、これまでの臼杵煎餅のイメージを覆すほどデザインを一変させた新商品は、これまで臼杵煎餅に馴染みのなかった人々にも訴求し、新たなファン層開拓のきっかけとなっていました。

 

[事例紹介]創業100周年を機に臼杵産有機原料にこだわった新ブランドを開発『後藤製菓』

 

創業100周年にあわせて開発したブランド『IKUSU ATIO』

 

新商品を機に、従来の商品にも興味を持ってもらえるようになるなど、良い相乗効果が生まれ、新しい取組が軌道に乗ってきた今年、新型コロナウイルス感染症拡大によって状況が一変します。政府からは全国的にイベントの中止・縮小や、不要不急の外出を自粛するよう要請が出され、飲食業や観光業をはじめ、さまざまな業種・業界に大きな影響が出始めました。県内の百貨店や観光地、交通拠点を主な販売拠点としている後藤製菓も例外ではありません。売上は昨年同月と比較して3月で20%減、4月は70%減と、思っていた以上に減少したそうです。緊急事態宣言により主な取引先が休業に入る5月は、さらに売上が落ち込むことが予想されました。

 

100年愛されてきた銘菓『臼杵煎餅』

 

このような大変苦しい状況のなか、全国の小中学校が休校になったことから、後藤製菓では39日から子どもがいる社員を対象に休みを取れるよう方針を出しました。この決断に至るには、子どものケアを優先してほしいという思いがあったそうです。それでも3月中は製造を続けていましたが、4月に入ると売上がさらに落ち込みました。「室内の換気や手洗い、殺菌・消毒もこれまで以上に徹底しましたが、多くの作業員が集まる工場内は、いわゆる『密』な空間であることには違いがありません。社員の不安を取り除くには集まらないことが最善だと考えるようになりました」と、後藤さんは気持ちの変化を語ってくれました。

 

社員全員に安心して休業してもらうため、国の補償制度の活用を検討していましたが、なかなか詳細が発表されず、迅速な対応を優先すべきと414から一部店舗と工場の休業を決めたそうです。

 

休業中の工場の様子

 

いち早く休業を決断をした背景には、神鳥さんとともに策定した「百寿品質」というコンセプトと2つの施策が根付いていました。

 

1つ目は「100年守り続けてきた品質を今後も守り、既存のお客様を大切にする」という老舗企業としての矜恃です。今回はその矜恃を保つために、これまで支えてきてくれた社員を大事にしなくてはならないと後藤さんは考えたそうです。そして、この状況が落ち着いたとき、再び今いる社員と一緒に頑張っていきたいとの思いがあり、休業中の給与を全額補償するため相談機関に出向くなど、社員を守るために奔走したといいます。

 

2つ目の施策は「新しいお客様に出会うための挑戦をすること」です。休業に入ってから、後藤製菓では新たな商品の試作を開始し、短期間で臼杵煎餅『手塗り体験キット』を商品化しました。

 

臼杵煎餅『手塗り体験キット』

 

臼杵煎餅『手塗り体験キット』は、通常は後藤製菓 本店「石仏会館」でしか体験できない臼杵煎餅の生姜糖手塗り体験とできたての味を自宅で楽しむことができる商品です。体験を通じて、ファミリー層や子どもたちにも商品の歴史や技術、おいしさを伝えることができるうえに、インターネットで販売することで、従来はお土産品として県内でしか販売していなかった商品を全国に届けることが可能になります。『手塗り体験キット』はまさに、新しいお客様に出会うための挑戦から生まれた商品でした。「実際には、刷毛を作る工程などに従来製品よりも手間とコストがかかります。それでも、今は売上ではなく、お客様に喜んでもらえるサービスを提供したいという思いから商品化に踏み切りました」と後藤さん。

 

この新しい挑戦はメディアにも取りあげられ、ショッピングサイトや後藤製菓 本店で販売するほか、ふるさと納税の返礼品としても採用されています。

 

できたての臼杵煎餅を自宅で楽しむことができる

 

後藤さんはお話の最後に「これまで100年愛してくださったお客様。これから100年愛してくださるお客様。そして、これまでも、これからも従業員あっての100年だと思っています」と語ってくれました。今回は、臼杵の郷土銘菓を牽引する老舗企業の対策と新たな挑戦についてお聞きすることができました。この状況だからこそ未来を見据え、社員を守ると決めた後藤専務のアクションには、これまでの100年への感謝と、これからの100年に向けての企業としての揺るぎない信念が込められていました。これを後押しする原動力となったのは、クリエイターと共創したコンセプトでした。

 

クリエイターの視点を加え、企業としての方針を言語化し共有していたからこそ、このように不安が広がり先の見えない状況においても、迅速かつ大胆な決断に踏み切ることができたのではないでしょうか。CREATIVE PLATFORM OITAでは、後藤製菓のこれから先の100年に、ますます注目していきたいと思います。

 

 

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後藤製菓 http://www.usukisenbei.com/

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