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事例紹介

2020.02.06

地域性を活かした生活やケアのあり方を実践する『社会福祉法人 福祉楽団』

『恋する豚研究所』は、餌や育て方にこだわって育てた『恋する豚』を使用した料理を提供するレストランに、加工品を販売する売店を併設した施設です。千葉県香取市の自然豊かな環境に建つこの施設は、週末には数百人もの来客があるそうです。一見するとおしゃれなレストランですが、ここは『社会福祉法人 福祉楽団』が運営する就労継続支援A型の作業所です。
今回は、この『恋する豚研究所』を訪問し、『社会福祉法人 福祉楽団』理事長の飯田大輔さんにお話を伺いました。

 

2001年に設立した『社会福祉法人 福祉楽団』は、2003年から特別養護老人ホームなどの運営を始め、現在8つの拠点を運営しています。飯田さんは学生の頃に亡くなったお母さんが設立準備をしていた社会福祉法人を引き継ぐ形で『福祉楽団』を立ちあげました。

 

「福祉の分野に関わっていくために、立ちあげの際はいろいろな調査をしました。実際に福祉施設を見学させていただくと、ドアやエレベーターに鍵がかかっていたり、身体拘束があったりして、利用者が管理されているという印象を受けたんです。そういうところを変えていきたいと思いました」

 

そうして飛び込んだ福祉の現場で、飯田さんは「もっとケアの方法や記録の共有の方法を円滑化する方法があるはず」と感じたそうです。オランダの先進事例などを参考に、組織運営にICTを導入するため、ソフトウェア開発などで働き方の改善に寄与する『株式会社 ソニックガーデン』にシステム開発を依頼。ケア記録の共有のためのシステム『ケアコラボ』が誕生します。

 

 

 

 

このシステムでは、SNSのように職員が写真や動画付きでケア記録を入力し、職員や家族にタイムライン上で共有することができます。飯田さんは『ケアコラボ』の開発・導入の成果について、次のように語ります。「ICTの導入は確かに効率化に繋がりましたが、それは単純に作業時間が短縮できるということだけではありません。情報の共有が円滑になったり、サービスの質の向上が図れるといった意味での効率の良さもあります」
のちにソニックガーデンから独立し、このシステムを運営・販売する『ケアコラボ 株式会社』が設立されました。飯田さんが業界を見つめ直した結果として生まれたシステムは、現在多くの現場に導入されているそうです。

 

『福祉楽団』の特徴の1つに、デザイン性の高さが挙げられます。ロゴマークやパンフレット、建築など至るところに、デザインへのこだわりが強く感じられます。これについて飯田さんにお尋ねすると「僕はそもそも、それほどデザインに関心が高かったわけではありません。でも、我々がやっていることを表現するための手段ですからね。デザイナーやクリエイターに関わってもらって、我々が表現したいことがしっかり伝わるように変換してもらう必要があると考えています」とお話いただきました。

 

その意識は、『福祉楽団』が2012年に開業したレストラン兼売店の『恋する豚研究所』にも顕れています。建築設計事務所『アトリエ・ワン』が設計した建物は、1階は加工場、2階はレストランと事務所になっています。大きな窓から屋外の緑を眺められる、木の温もりと自然光に満たされた空間はとても魅力的で、ここをめがけて遠方から訪れるお客さんも多いそうです。

建築設計事務所『アトリエ・ワン』が設計した『恋する豚研究所』

 

施設そのものの魅力もさることながら『恋する豚研究所』は、いいものを作って提供することで話題を呼び、多い月で約1500万の収益を上げています。「価値があるものを提供しなければならないという思いがベースにあります。レストランで提供するお料理も加工品も、基本となるのは素材の味です。素材が良くなければ美味しいものは作れません。ですから、まずはちゃんといい素材を作るというところを大切にしています」と飯田さん。

 

『恋する豚研究所』は、2020年には東京・下北沢のオープンを予定しています。『福祉楽団』の事業は、老人ホームや介護支援、『恋する豚研究所』のような一般の人が福祉という分野を意識せずに利用する施設の運営まで、その業態は多岐に渡ります。
しかし、飯田さんは決して多角的な経営を目指しているわけではなく、「生活」や「ケア」を軸に、一貫して「さまざまな就労困難性を抱えた人々の働く場作り」という理念をお持ちでした。「誰もが理不尽な理由で辛い思いをしないで済む環境を作りたい」という飯田さんは、施設の利用者だけでなく、職員にとってもより良い環境作りを心がけています。
「職員がちゃんと健康で楽しんで働ける環境を作るために、研修制度やリフレッシュ休暇を導入しています。できれば休暇を利用して、旅行に行ったりしてほしいですね」
その思いは職員にも伝わっているようで、『福祉楽団』では有給休暇の取得率が約70%、リフレッシュ休暇の取得率が100%に近いそうです。

 

『社会福祉法人 福祉楽団』理事長の飯田大輔さん

 

たとえば農業が、このエリアだからこそできる地域性を活かした生活やケアのあり方の実践であるように、『福祉楽団』はあくまでも福祉の文脈のなかで、土地に根ざした活動を展開していました。しかしその一方で、福祉という枠にとらわれず、ICT化などの時代の流れを取り入れることで、課題の解決を図るという柔軟性も持ち合わせています。『福祉楽団』の活動は、全ての人にとってより良い生き方や働き方とは何かを提示しているのだと感じました。