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CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2018.07.26

創業100周年を機に臼杵産有機原料にこだわった新ブランドを開発『後藤製菓』

大分県の伝統銘菓・臼杵煎餅の最も古い製造元として、昔ながらの伝統製法にこだわる大分県臼杵市の『後藤製菓』は、2019年の創業100周年を目前に、周年事業の一環としてクリエイティブディレクターの神鳥兼孝さんと協働し、新ブランドの立ち上げと新商品の開発をおこないました。今回は、同社の専務取締役 後藤亮馬さんにブランディングの経緯とその成果について伺いました。

 

3月に大分市でおこなわれた『CREATIVE PLATFORM OITA』報告会での神鳥さん(左)と後藤さん(右)

 

臼杵煎餅は臼杵藩主の参勤交代の際の保存食が起源と言われています。小麦粉、卵、砂糖というシンプルな原料で作られ、薄焼きでパリッとした食感の曲 (まがり) と厚焼きで歯ごたえのある平 (ひら) があります。表面には、かつて臼杵の特産品であった生姜を砂糖と合わせて作った蜜が塗られています。『後藤製菓』では、この蜜を昔ながらのシュロの木の刷毛で塗っています。この工程が手作業であるため、1人が1日に製造できるのは約1,000枚なのだといいます。

 

 

生姜の蜜は手作りの刷毛を用い、職人が1枚1枚手作業で塗っている

 

現代表・後藤重明さんの長男でもある後藤さんは、大学卒業後『後藤製菓』に入社し、取引先への営業を重ねるうちに2つの課題を感じるようになったそうです。

「1つは他社との差別化です。現在、県内で7社が臼杵煎餅を製造していますが、素材や配合、製法、こだわりは各社で異なります。他社との違いを打ち出し、『後藤製菓』の臼杵煎餅の認知を広げることが必要だと感じました。もう1つの課題は、顧客の高年齢化です。主な顧客は50代以上で、なかでも70代のお客様が中心です。30~40代は臼杵煎餅を食べる機会がなく、10~20代は臼杵煎餅自体を知らない方が増えているというのが現状です。若い世代に臼杵煎餅をしっかり伝えていくために、創業100周年を機に次の100年を見据えた新商品が必要だと思いました」

そのような思いから、後藤さんは『クリエイティブ相談室』を利用し、クリエイティブディレクターでデザイナーの神鳥兼孝さんと出会います。

 

神鳥さんは東京でプランナー・ディレクターとして大手企業の広告制作に携わり、2006年に大分へ帰郷、2009年に『株式会社 green circle』を設立しました。現在はあらゆるメディアを使いながら、商品や企業のブランディングや広告制作など幅広く手掛けています。神鳥さんのインタビューはこちらをご覧ください。

 

「後藤専務から『100周年を機に後藤製菓をリブランディングしたい』と伺ったとき、翌年には意味がなくなってしまうような記念商品を作るのではなく、まずは企業として自らの姿勢を問い直したうえで商品開発に取り組むベきだと考えました。そこで後藤さんを中心に、『後藤製菓』の100周年企画マネージャーの徳永 央さん、『green circle』のスタッフでチームを組み、『後藤製菓100年project』と銘打ったプロジェクトをスタートさせました。まず『後藤製菓』スタッフの気持ちを1つにするため『百寿品質』というスローガンと、施策となる2本の柱を作りました。1つ目は100年守り続けてきた品質を今後も守り、既存のお客様を大切にすること。2つ目は新しいお客様に出会うための挑戦をすることです」

 

 後藤さんは神鳥さんの提案を聞いて「大事な言葉をいただいた」と思ったそうです。

「自発的に日々の作業や接客を見直す『百寿品質 三カ条』という行動規範を定め、『100周年は一生に一度しかないので一緒にがんばりましょう』と社内に呼びかけました」と後藤さんは語ります。

この行動規範に基づき、初めに取り組んだのは既存商品の見直しです。後藤さんは自社商品の原材料を見直し、小麦粉を九州産100%に、生姜は臼杵市産の有機栽培のものへと変更しました。また、お客様の声を反映させ、個包装のデザインや内容量も変更したそうです。

このような刷新により製造コストは上がりましたが、後藤さんは「単価が上がる分、価値を上げることが大切だと考えています。そうしないと、いずれ臼杵煎餅を作り続けること自体が難しくなると思います」と語ります。

 

リニューアルした『後藤製菓』の臼杵煎餅

 

そして、2本目の柱である、新しいお客様と出会うための挑戦として、新ブランドの立ち上げもスタートします。

神鳥さんは現状を分析したうえで、メインターゲットを20~30代のSNS世代に設定しました。

「いままでは情報も流通も、世界から東京、東京から大分、大分から臼杵というのが主流だったが、これからは臼杵から世界へ向けて発信していきたい」という後藤専務の強い思いをそのままブランドコンセプトに据え、ネーミングは後藤専務が提案した『IKUSU ATIO(イクスアティオ)』を採用しました。

「『IKUSU ATIO』とは、大分・臼杵をローマ字表記にして反転させたものです。ロゴマークは鏡文字のアルファベットを組み合わせて作りました」と神鳥さん。

 

 

『IKUSU ATIO』のロゴ

 

こうして立ち上がった新ブランド『IKUSU ATIO』から、臼杵産の有機原料を使った3つの新商品を出すことに決まりました。

市をあげて有機肥料を使った農産物の生産に力を入れている臼杵市の取組とともに発信するため、新商品は地元の有機生姜100%であることにこだわりました。ジンジャーパウダーは、臼杵煎餅に使用した生姜の繊維部分を乾燥させて作っています。オーガニックシロップに使用するカボス・砂糖・はちみつも有機100%。後藤さんはミーティングの度に数種類の試作品を持参し、チーム全員で意見を出しながら味を決めていったそうです。

こうしてできあがった商品は、既存の臼杵煎餅のイメージを一新するものとなりました。

「洗練されたデザインで、満足度は120%です」と後藤さん。

 

 

『IKUSU ATIO』シリーズ

 

2018年2月15日の発売開始以降、自社直営店舗のほか、県内の百貨店、空港、駅の土産物店から県外のサービスエリアまで、順調に販路を広げています。その結果、売上は2月~5月の期間で前年度比140%となり、新規雇用が名増えたそうです。

また、野菜ソムリエにレシピ開発を依頼したり、大分市内のカフェとタイアップし『IKUSU ATIO』を使用したメニューを提供するなど、消費者とのコミュニケーションのチャンネルを増やしています。

 「『百寿ひとひら』を購入したお客様から、『臼杵煎餅って久しぶりに食べたけど、こんなに美味しかったんだ』というご感想をいただいてとても嬉しくなりました。若い方だけでなく、臼杵煎餅から遠ざかっていた人にも届いたことは大きな成果です」と後藤さんは語ります。

 

『CREATIVE PLATHOME OITA』報告会での出店ブースの様子

 

最後に、今回の取組について後藤さんにお伺いしました。

「神鳥さんをはじめ多くの方たちとのご縁に恵まれて、いい商品ができました。これは同時に『百寿品質』という志のもと、経営・製造・販売まで社内の意識を統一した結果でもあります。改めて社内のスタッフの大切さを感じています。これからも努力を重ね、みなさまに広く愛される商品として育てていきたいと思います」

 

1つのブランドが誕生するまでには、さまざまな人の知恵と力が必要です。今回の取組みは、未来を担う若き専務の家業へ掛ける情熱と、その情熱に動かされたクリエイターが定めた指針からスタートしました。社内スタッフが一丸となり生み出された商品が、やがて臼杵から世界へと発信されていくのを見守っていきたいと思います。

 

 

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後藤製菓 http://www.usukisenbei.com/

IKUSU ATIO http://ikusuatio.com/

神鳥兼孝さん http://creativeoita.jp/database/kandori/

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