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事例紹介

2021.02.18

独自技術を駆使し、業界と社会の課題を解決する新規事業を展開

全国でも有数の林業が盛んな日田市の『株式会社 髙瀬文夫商店 (以下、髙瀬文夫商店)』は、創業以来かまぼこ板を主力商品としていましたが、2018年に日田杉を使ったストローとコップを開発し、『itaTTe (イタッテ)』というブランドを立ちあげました。

今回は、代表取締役社長の髙瀬 加津男さんに、新規事業の立ちあげに至るまでの経緯をお聞きしました。

 

髙瀬文夫商店 代表取締役 髙瀬 加津男さん

 

日田市で60年にわたってかまぼこ板の製造を続けてきた髙瀬文夫商店は、かまぼこ板の需要の減少に伴い同業他社の廃業が相次ぐなか、独自の技術を磨くことによって現在まで事業規模を伸ばしてきたといいます。

 

始めに開発したのは、煮沸や乾燥の新たな方法で木材の匂いを抜く技術でした。この技術によって、かまぼこに匂い移りのしない安定したかまぼこ板を生産することができるようになりました。

次に開発したのは、かまぼこ板の木口のコーティング技術です。木材の導管を伝って空気が移動することにより、かまぼこに気泡が入ってしまうという課題を解決するため、食品安全基準をクリアした安全なコーティング剤を開発。日田の林業試験場やメーカーの協力を得て開発したこの独自の技術は特許も取得し、かまぼこ板の販路拡大に繋がりました。

 

 

しかし、そのようなチャレンジを続けてもかまぼこの需要低下という時代の流れからは逃れようがなく、髙瀬さんはかまぼこ板に頼らない新製品の開発を決意します。ヒントになったのは、プラスチックによる世界的な海洋汚染問題でした。

 

「2018年5月30日、ラジオで大手コーヒーチェーン店がプラスチックストローの使用をやめるというニュースを聞き、これだ! と思いました。素材は薄板 (天然木を薄くスライスし、シート状に加工した板材) にしようと思い立ち、日田市内で薄板を製造している友人に声をかけて試作用に分けてもらい、翌日には『木のストロー』の試作品が完成しました。日田は林業の町で昔から薄板屋さんがあり、木工の技術を持った職人さんがいらっしゃいます。私が『木のストロー』を思いついてすぐに商品ができたのも、日田に素材も人も揃っていたからです」と髙瀬さんは振り返ります。

 

ストローに使用される薄板。厚さは0.1~0.3mmほど

 

最初の試作品は薄板をただ巻いただけの簡単なものでした。問題なくアイスコーヒーを飲むことはできましたが、30分ほどするとコーヒーが浸みてストローが黒くなってしまいます。そこで、かまぼこ板のコーティング技術を応用し、水分の浸透を防ぐ加工を施したそうです。さらに、ストローに使用できない厚めの薄板をコップとして活用することで、ラインナップの充実化も図りました。

 

コップの素材は0.5mmの杉の薄板

 

これらの製品を実際に販売するには、量産を図り単価を下げる必要があります。

しかし、薄板は最大で4mほどの長さしかないため、機械への補充が煩雑で、完全自動化はできません。髙瀬さんは少しでも単価を下げようと、計3回にわたる機械の改良をおこない、徐々に人的負担を削減し、量産を可能にしました。

 

ストローの生産体制も整い、販路獲得に向け、髙瀬さんは2019年2月開催の『東京インターナショナルギフト・ショー』への出展を目指します。そこでブランディングの必要性を感じ、10年来の知人である大分市在住の造形作家・有馬晋平さんに協力を仰いだそうです。

有馬さんの声かけで、展示ブース構築などに強みを持つデザイン会社や、大分市に拠点を置く建築家・塩塚隆生さんがチームに加わり、商品名やパッケージ、出展ブースのデザインに取り組みます。

 

「ブランド名の『itaTTe』は有馬さんのアイデアです。かまぼこ『板』と、ポジティブな要素を持った『至って』という単語を組み合わせ、『いたって自然』で『いたってシンプル』な製品をつくろうと。そして『いたって楽しく』プロジェクトを進めようと。そんな想いが込められています」

 

『itaTTe tsutsu straw』 (左) と、『itaTTe tsutsu cup』 (右)

 

塩塚さん設計による、かまぼこ板を用いた什器に商品を陳列し、ギフトショーではインパクトのある展示ブースが完成。多くの業者との商談に繋がり、大手百貨店などに『itaTTe』の商品が置かれることになりました。

 

『itaTTe』の展示ブース

 

優れたデザイン性とサスティナブルなコンセプトが現代社会にマッチしたことで、大きな注目を浴びた『itaTTe』。

髙瀬さんはストローやカップに改良を施して使い勝手の向上を目指すとともに、コロナ禍ならではの製品として、杉の香りが楽しめるマスクケースなどの開発も進めています。さらには、DIYの材料や子どもの積み木遊びなどに幅広く活用してもらいたいと、かまぼこ板の製造工程で発生する端材を販売する活動もスタートしました。これらの取組の先に髙瀬さんが思い描いているのは、「国産材の復活」です。

 

ギャラリーのアートイベントとしておこなわれた『かまぼこ板って!?』展の様子

 

「かつては木で作られていた製品の多くがプラスチックに取って代わりました。しかし、ストローやコップだけでなく、まだまだプラスチックから木に戻せるものがたくさんあると思っています。『itaTTe』は少量の薄板でできていますから、国産材だけで十分賄えます。輸入にかかる燃料を考えても、環境に優しい製品です。サスティナブルやSDGsを推進する過程で、国産材に改めて目が向けられるようになったらうれしいですね」

 

 

さらに髙瀬さんは、新しいことにチャレンジし続けていくためには、常に課題意識を持っておくことが必要だと話します。

 

「かまぼこ板製造業としての課題を強く意識していたからこそ、『itaTTe』は生まれました。それがなければ、ラジオでニュースを聞いていたとしても何も感じなかったでしょう。何か新しいものを見聞きしたときに、常にアンテナを張っていれば課題解決のヒントに気づくことができます」

 

そして最後に「できないと思ったらそこで終わりです。『どうすればできるか』を考え抜くことが大切だと思います」と、髙瀬さんは長年貫いてきた思いを話してくれました。

 

髙瀬文夫商店のチャレンジは続きます。今後は日田の地で何を生み出していくのでしょうか。その動向に期待が寄せられています。

 


株式会社 髙瀬文夫商店

住所:大分県日田市大字東有田2735番8

電話番号:0973-24-6220

https://kamabokoita.com