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CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2018.09.20

家具メーカーの『イトウ』から、企画・提案する『デザインスタジオ イトウ』へ

1946年に日田市で創業した『株式会社 イトウ』は、デザインから製造まで請け負う家具メーカーとして、B to Bのビジネスを展開していました。ところが、2017年度の『CREATIVE PLATFORM OITA』を活用して、クリエイティブディレクターの服部滋樹さんとの協働で、新たな『イトウ』の顔となる商品のPR戦略を練っていた矢先、不慮の火災に遭い、70年の歴史を持つ工場を焼失。そこから大きくビジネスプランを転換し、製造をおこなわず、企画・提案に特化した新たなビジネスモデルで再起を目指すべく、服部さんに改めてブランディングディレクションを依頼しました。
その取組の経緯や新たなビジネスの兆しについて、代表取締役の伊東重信さんにお話を伺いました。

 

3月に大分市でおこなわれた『CREATIVE PLATFORM OITA』報告会で登壇する伊東さんと服部さん

 

『株式会社 イトウ』は、現社長のお父様である伊東清重さんが創業し、林業や木工の盛んな日田市に社屋を構えています。木製家具のメーカーとして、「堅牢なつくり」「合理的なものづくり」「普遍性のあるデザイン」をモットーに、リビングソファやダイニングセットなどの企画・開発・製造および販売をおこなってきました。
2017年6月に『クリエイティブ相談室』に申し込みがあった当初は、従業員数100名ほどの、地域を牽引する企業の1つでした。

 

日田市内を流れる花月川沿いに全長200メートルの工場や倉庫を所有していた

 

伊東さんは、既存商品のリデザインを中心に品揃えを見直し、ブランド力の向上を目指して、大阪に拠点を置くクリエイティブユニットgrafの代表でクリエイティブディレクターの服部滋樹さんとのマッチングに進みます。

 

服部さんは家具業界の現状を踏まえて、当時の『イトウ』の特徴を説明します。
「家具メーカーの中には売価1,000円程度の安価な椅子を海外で生産する企業もあれば、高級ラインを製造・販売する企業もあり、価格の幅は大きいんです。『イトウ』は、その中間部分にあたる価格帯の商品を生産していました。
家具業界は、バブル終焉後に一気に市場がしぼみ、厳しい時代に入っています。また、あらゆるものがインターネットで購入できる今、ECで高価格帯の家具を買うことはなかなかない。日田市は林業の盛んな町ではありますが、その地域ブランドだけでは勝負することができません。そんな中で、『イトウ』は中堅のメーカーとして頑張って存続していました」

 

イトウが自社でデザインし製造していたダイニングセット

 

『イトウ』と服部さんとの協業がスタートした矢先の8月17日、『イトウ』の工場で火災事故が発生します。幸い人的被害はありませんでしたが、全長200メートルの工場は全焼します。事故の一報を聞いた服部さんはすぐに日田へ駆けつけ、伊東社長や従業員を見舞いました。

 

伊東さんは当時のことを振り返ります。
「今まで投資をして機械整備をしてきた工場が一瞬にして燃えてしまいました。メーカーとして再興するには、雇用の問題と時間とお金がかかります。復興するのか、辞めるのか。決断を迫られ、悩みに悩んで眠れない日が続きましたが、72年続いたメーカーとしての幕を閉じようと決断しました」

こうして2017年10月、『イトウ』は再スタートを切ります。
「『イトウ』には家具メーカーとしての70年の歴史と、私自身のビジネスの経験が40年あります。それらを活かして、今後は自社で製造をせず、他社のみなさまに売れる商品を作ってもらい、他社やユーザーに喜んでもらうことに意義があるのではないか。そう思い、企画・デザインを提案する会社として再出発しようと思いました」と伊東さん。

 

翌年の1月、伊東さんは大阪へ行き、grafで服部さんと面会しました。企画・デザインを提案する『デザインスタジオ イトウ』として再出発したいという決意を述べると、その考えに服部さんも賛同します。
「伊東さんは、いままでメーカーや販売店の悩みを徹底的にリサーチしてきた蓄積があります。なので、デザインの提供はもちろん、販売店のウィークポイントの改善や、生産体制の見直しやブランディングなど、今まで蓄積してきたソフトの力を活かして、なんとか企業として存続できないかと考えました」
服部さんはその場で『デザインスタジオ イトウ』のロゴマークを手描きでデザインします。そして、伊東さんと服部さんの協働で、新たなビジネスの事業整理と、新たな営業用ツールの制作が進んでいきます。

 

服部さんディレクションのもと、大分市のデザイナー井下 悠さんがデザインを担当したロゴとリーフレット

 

3月に行われた『CREATIVE PLATFORM OITA』の事業報告会では、火災の起こる前に服部さんと開発を進めていた大型のソファの試作品を展示し、『デザインスタジオ イトウ』としての再スタートを発表しました。

 

『CREATIVE PLATFORM OITA』報告会での展示の様子

 

『イトウ』の再建と方向性の転換を、服部さんはどのように感じているのでしょうか。
「まだ始まったばかりなのでこれからなのですが、『イトウ』という一企業にとってだけでなく、日田の産業にとっても新しい契機になるのではないかと思っています。従来、家具の生産は分業制です。しかし、近年はコスト削減のために自社工場ですべてを担う企業が増え、産地としての強度が下がりつつあります。
分業する業者を束ねるプロデューサーのような存在が地域にいれば、日田という地域全体が家具の産地として認識され、マーケットに見いだされるのではないかと思っています。『デザインスタジオ イトウ』には、そうした地域をまとめる存在として復興してほしいと願っています」と服部さんは語りました。

 

その後、伊東さんは持ち前のバイタリティとこれまでに培ってきた人脈を活かし、精力的に営業を開始。現在、福岡や大阪のメーカーへのデザイン提供が進み、新たに中堅家具メーカー数社への営業先提案を含めたデザイン提供が決まったそうです。

 

最後に、伊東さんに今後の抱負をお聞きしました。
「服部さんが力強い理解者となってくれて、『デザインスタジオ イトウ』を立ち上げることができました。そこから、いろんな方の助けがあって新しいビジネスが始まっています。これまでの経験から、デザインと経営は表裏一体だと思っています。デザインだけでなく経営のアドバイスも含めて何かお役に立てれば、自分のこれまでの経験も意義があると思います」

 

ビジネスにおいてクリエイティビティを発揮するには、企業や個人の強い思いが不可欠です。
予期せぬ災害に見舞われたことから自らの強みを見つめ直した伊東さんは、周囲の協力や伴走を得て、今まさにクリエイティビティを発揮する土壌を築き始めました。これからも『デザインスタジオ イトウ』を見守っていきたいと思います。

 

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株式会社 イトウ
住所:大分県日田市大字友田1088番地1
電話:0973-23-5101 info@east-wood.co.jp

 

服部滋樹さん(graf) http://creativeoita.jp/interview/people/hattori/

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