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CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2020.05.15

技術と素材を活かし、感染症予防に役立つ製品をクリエイターと共創

2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大の影響で、私たちの日常生活は大きく変わりました。世界中で移動や外出の制限が出され、経済は大きな打撃を受けています。このように先の見えない不安が社会を覆うなか、新しいチャレンジを始めた大分県内の企業の取組をご紹介します。

 

大分県由布市にある『有限会社 ジェイ・パック (以下ジェイ・パック) 』は、紙箱の製造や加工販売をおこなっている企業です。紙に細かい繊維を吹き付けて植毛する『フロッキー加工』という技術を活かし、ギフトボックスや菓子箱などの開発・生産・販売を手掛けてきました。

これまでは主にオーダーメイドのパッケージの製造・販売を企業向けに展開していました。しかし、時代の流れとともにお中元やお歳暮、お土産などの需要が減り、ギフトボックスの受注が少なくなっていたそうです。そこで、これまでのビジネスモデルに加え、新たな柱となる事業を立ちあげなければと、社内で商品開発のアイデアを練り試行錯誤を始めます。そんなときに副社長の小野尚子さんは『CREATIVE PLATFORM OITA』の存在を知り、相談室を訪れました。

 

『フロッキー加工』をする様子 (写真左) 『フロッキー加工』を施した菓子箱 (写真右)

 

相談室ではヒアリングを重ね、課題を客観的に整理し、デザイナー・アートディレクターの城谷耕生さんをご紹介しました。プロダクトデザインや建築、空間デザインを得意とする城谷さんは、ジェイ・パックの持つ高い技術力をリサーチするとともに、世界中に存在する紙製品に関する膨大なレポートをまとめました。それらの情報を集約した結果、やはり紙で作る必然性のある製品とはギフトボックスではないかという結論にいたったのです。そこで、ジェイ・パックの技術と経験に、城谷さんの豊富なアイデアを融合させ、どこにも真似できない、世界に発信できるギフトボックスの開発に着手することになりました。城谷さんからのさまざまなデザイン提案に対して、ジェイ・パックは技術力や生産体制の面から実現の可能性を検討するなど、それぞれの観点で商品化に向けて試作を続けていきました。しかし、今年フランスで開催される展示会への出展を目標に、準備を進めていた矢先に、新型コロナウイルス感染症の猛威が世界中に広がり、状況は一変してしまいます。

 

ジェイ・パックの工場を視察する城谷さんと案内をする小野さん

 

ジェイ・パックの主要な取引先は菓子製造業者で、製品のおよそ90%がお土産菓子の箱に利用されています。新型コロナウイルス感染症の蔓延で、渡航や不要不急の外出を自粛する動きが強まるなかで、土産品や進物の需要が激減し、紙箱の注文もみるみる間に少なくなっていきました。ジェイ・パックでは、4月20日から工場の生産を止め、従業員の安全を考慮して休業することにしました。

「コロナの影響で、従業員の健康や安全を強く意識するようになりました。個人のセルフケアに頼るのではなく、作業環境を会社が積極的に守り、ともにモチベーションを保つことの重要さを再認識しました」と小野さんは語ります。

 

また、「いまだ収束の兆しも見えず、海外展開の準備も中断しています。大きな不安を感じずにはいられませんが、いまこそ企業としてのあり方を大きく考え直すときだと思ったんです」と振り返ります。

 

ジェイ・パックの工場

 

そこで小野さんは、長崎県にある城谷さんの事務所を訪ねました。新しいことに先行投資する余裕はないが、この先を見据えて動かなければならないという思いを伝えたうえで、これまで培ってきた技術と素材を活用し、社会に役立つものを作りたいと、城谷さんに相談しました。ジェイ・パックと城谷さんは、相談室をきっかけに協働がスタートしてから1年半の間、ほぼ月に度は面会を重ね、並走してきました。その時間の積み重ねがあったからこそ、城谷さんは社会の現状とジェイ・パックの置かれている状況を即座に理解し、「自分ができることであれば何でもやる」と快く引き受けてくれたそうです。そして、2日間という短期間で『簡易紙製パーティション』製造の提案を図面とともに送ってくれました。

 

組み立てる前のパーティション

 

このパーティションは、不特定多数の人が訪れる場所において飛沫感染の予防など、ウイルス対策のために設置するものです。撥水加工の施された紙を使用しているため、スプレー除菌や除菌シートでの拭きあげも可能です。

 

「試作の段階で除菌スプレーを吹き付けて拭いてみたのですが、シミや破れなども発生しませんでした。数百回拭いても問題ないほど非常に丈夫な素材でありながらな、紙なので軽く、折りたたんで持ち運ぶことも可能です。まさにジェイ・パックの技術と素材を活かして、社会に役立てる製品だと思いました」と小野さん。

 

受付などに簡易に設置できる (写真左)  何度スプレーを吹きかけても繰り返し使える (写真右)

 

そのほかにも、既存製品のブラッシュアップや、ギフトボックスだけではなく第2、第3の柱となるような事業の展開を城谷さんとともに考えているとのことです。「城谷さんとはこれまでも強い信頼関係を築いてきましたが、今回の相談を通じ、より深く関わっていただけるようになったと感じています。。ジェイ・パックとともに進んでくれる、心強いパートナーですね」と、小野さんは話してくれました。

 

今回、世界的に広がる非常事態を受け、自社の技術や強みを活かしたものづくりで社会に貢献すべきと考えた小野さんは、過去1年半にわたって協働してきたクリエイターの城谷さんに相談しました。このような有事においては、いかにスピード感を持って動けるかが重要となります。たとえプロトタイプであっても発表し、その反応を踏まえて改善を重ねることで、より良い製品へとブラッシュアップすることができます。この事例では、ジェイ・パックのことをよく理解している城谷さんだからこそ、迅速な提案と試作が可能となり、いち早く製品を完成させ、提供することができました。

 

現在このパーティションは、学習塾に寄付し、子どもたちが安心して学べる場づくりに活用されています。ジェイ・パックでは 初回製造分については、在庫がある限り無償で提供したいと考えているそうです。また、その後も要望があれば追加製造し、できる限り安価で提供を続けていきたいとのことでした。

この製品の使用をご希望の方や、新たな活用のアイデアをお持ちの方は、ぜひジェイ・パックまたは『CREATIVE PLATFORM OITA』までご連絡ください。

 

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有限会社ジェイ・パック http://www.jpack.jp/

城谷耕生さん http://www.koseishirotani.com

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