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事例紹介

2018.12.20

リブランディングによって売上が3倍に! 『カネ十農園』(後編)

静岡県にある創業1888年の老舗茶農園で、栽培から加工までこだわった茶づくりを続けている『カネジュウ農園 株式会社』。4年前から『株式会社 method』の山田 遊さんとの協働によるリブランディングに取り組み、小売額が3倍にも増加したそうです。
前回の記事では、長期にわたるヒアリングを経て、ブランドコンセプトを立ち上げたところまでをご紹介しました。今回は後編として、具体的にどのような手法で販路を拡大し、売上増加に繋げていったのかをご紹介します。

 

 

『カネジュウ農園 株式会社』5代目・渡辺知泰さんは、『株式会社 method』の山田 遊さんとの協働でリブランディングに取り組みました。1年間かけて生み出されたブランドコンセプト「牧之原の茶農園で、芳醇な一時を。」を軸に、具体的にどのような手法で事業を展開していったのでしょうか。

 

「まずは商品の見直しですね。独自に開発していた頃、商品が30種類くらいまで増えてしまっていたんです。うちの強みの1つは製茶法の探求です。国内外の製茶法を研究するために、現地まで足を運ぶこともあります。それが伝わるように、少数でもはっきりと味の違いがわかる商品に絞り込みました」

 

さらに、誰でもおいしいお茶が淹れられるよう、1つひとつの商品にあった温度や抽出時間、茶葉の量を研究するなど、商品価値を高めるための追求のプロセスには、実に1年間を費やしました。
この行程には、当時methodにお勤めで、現在は沖縄で「飲む」という行為に焦点をあてたショップ『LIQUID』を経営している村上純司さんが深く関わったそうです。

 

また、トーン&マナーを設定する行程では、どこのショップで販売したいのか、どのブランドの商品の隣に並べてほしいのかなど、具体的な目標やイメージを抽出し、共有していきました。
そのなかで出てきた「コンランショップのマリアージュフレールの隣に並べたい」というイメージが、オリエンタルなグラフィックを起用したいというアイデアに繋がり、株式会社 DRAWERの池田充宏さんにデザインを依頼することになったそうです。

 

「池田さんの提案は1点だけなんです。複数案を並べて、そのなかから選ぶということではなくて、決め打ち。はじめは驚きましたが、山田さんもその提案に満足されていましたし、お互いの信頼のうえに進んでいった感じですね」

 

 

渡辺さんが大切にしている茶畑や手摘みの風景などのイラストも掲載され、商品の特性が一目で理解できるパッケージが完成した

 

また、デザイン性を高めることと同時に、ブランドを広めるために全国の主要な場所での試飲会も実施しました。
「お茶の価値って、やっぱり飲んでもないとわからないと思うんです。デザインや文言だけでは伝えきれない。でも、試飲しておいしいと感じてもらえたら、購買確率が一気に上がります。
せっかく素敵なデザインにリニューアルしても、ただ流通させるだけでは、半年から1年の間に棚から外されてしまいます。生き残る商品は、売り場に並べて終わりではなく、きちんとその後のフォローも継続している。それもブランドのうちだと思うんです。だから僕も試飲会などで定期的に取扱店舗を回って、売場の棚を維持していくための努力を続けています」

 

山田さんとの協働によるブランディングは2年間で区切りを迎えました。
新たなブランドとしてのカネ十農園を自走させるようになってから、渡辺さんは現代のライフスタイルや販売形態の変化を見据えた、新たな販路の開拓に取り掛かりました。

 

「日本茶を専門店で購入することって減ってきていると思うんです。生き残っていくためには、ライフスタイルにいかに入り込むかだと思ったんです。そこで、アパレル店や美容室、書店などで取り扱っていただける可能性を探りました。なかでも、そこに置くことでブランド価値が上がるような、影響力のあるお店に置いていただくことが重要だと考えています」

 

実際に、セレクトショップ『コンランショップ』をはじめとする影響力のある店舗での取扱実績が影響し、新規取引や新たな販路の獲得に繋がっていったそうです。

 

また、もう1つのカネ十農園の新たなアクションとして、表参道にオープンした体験型ティーサロン『カネ十農園 表参道』があります。この店舗をオープンした経緯についてもお聞かせいただきました。

 

2018年6月に東京の表参道にオープンした体験型ティーサロン『カネ十農園 表参道』

 

「催事や試飲会でお茶のおいしさを伝えることはできますが、僕らがずっとそこに居続けることはできません。そこで、拠点となる場所がほしかったんです」と渡辺さん。折良く、生モッツァレラチーズの工房を表参道で開くという知り合いから、隣接するスペースでお茶を販売しないかとお声掛けがあり、新たな一歩を踏み出すことを決意しました。店のコンセプトから自分たちで考え、デザイナーさんとやり取りしたそうです。

 

「自分たちでもがきながら考えて実践しているので、勉強になります。以前、デザイナーさんが僕に伝えて下さった言葉を忘れません。いいデザインや商品ができたとしても、それを活かすのはクライアントさんだから、もっとセンスを磨いてほしいってね。センスは知識です。いろんなことを体験して、それを活かしたり実践したりできるよう、日々試行錯誤しています。でも、困ったときは山田さんたちが相談に乗ってくださるので」

 

 

渡辺さんは山田さんのことを「分析力がすばらしかった」と語ります。
「あらゆる業種や業界と協働してきた実績があるので、どんな案件でもまとめていく力がある。なにかを大きく変えようとするときに、テコになってくれるのが『株式会社 method』なんだと思います。そうして、欠けているパズルのピースをはめるように、そのプロジェクトに最も必要な人材や方法を模索してくださるんです」

 

さらに、協働後の変化について尋ねると「ブランドコンセプトがすべての軸になりました。なにかを選択するとき、ブランドとしてどうあるべきかを基準に判断するようになったんです」とお答えいただきました。たとえば設備投資をするときも「これを導入することがブランドコンセプトの実現に繋がるのか」と考えるのだそうです。

 

今回は、ビジョンを整理して、目指すべき姿を言葉にして共有することが、売上や事業展開に影響するという実例を具体的にお聞かせいただきました。クリエイター・山田 遊さんとの協働で生まれたブランドコンセプトを軸に、カネ十農園は今後もますますの展開を目指して探求と挑戦を続けていきます。