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事例紹介

2018.06.21

有機野菜の販路をB to Cから B to Bへと変えるためのイメージ戦略『小松台農園』

今回は、大分県由布市で竹林諭一さん・千尋さんご夫婦が営む『小松台農園』の事例をご紹介します。

有機野菜の生産、販売をおこなう『小松台農園』は、農地が有機JAS認定を受けたことをきっかけに作付面積や販路を拡大し、農園名を『竹林畑』から『小松台農園』へと変更。この農園名とそこに込めたコンセプトを発信するため、アートディレクターの福田まやさんと協働してロゴや商品シールなどをリニューアルしました。

 

『小松台農園』は、庄内駅から車で10分ほどの場所にあります。竹林さんご夫婦は、ここに3箇所の耕作放棄地を借り受け、3年かけて農地へと再生させてきました。合計1.2ヘクタールの畑では、季節に合わせて年間20品目ほどの野菜を生産しています。

 

標高400mの準高冷地に位置するため、平野部の産地と旬をずらした収穫ができる

 

竹林さんは津久見市の出身で、東京の大学を卒業後、都内のスーパーマーケットで勤務し、加工された食品をお客様に提供していました。そのうち「自分で生産から携わったものをお客様に届けたい」という気持ちが強くなり、結婚を機に農場経営を志し大分に帰郷。農業研修で有機農法と出会い、2014年に『竹林畑』の屋号で有機農家を始めました。以来、過度に手をかけることなく美味しい野菜を栽培する『野菜にも、人にも、無理のない農業』を目指し、試行錯誤しながら農法を確立していきました。

 

『無理のない農業』を目指し、土作りには緑肥や、米ぬか・落ち葉など地域の未利用資源を活用している

 

創業して4年目、少しずつ広がり始めていた『竹林畑』という農園名を『小松台農園』へと変えたのには幾つかの理由がありました。

「ひとつは、おいしいと言ってくださる料理人の方や消費者の方が増え始め、農家としての自信がついてきたことです。その一方で、個人宅配メインの販売方法では、毎回違う野菜を発送するために、たくさんの品目を作らなければならないけれど、発送業務や個別対応にも追われ農作業に集中できないというジレンマもありました。

もう一度、私たちの原点に立ち返り、美味しい野菜をより多くの方に届けるために、農園の方針を見直すことにしました。再出発の一歩目として、作付け面積を拡大し、有機JAS認証を取得しました。そのタイミングで屋号を『小松台農園』に変えました」

竹林さんが次に取り組んだことが、新たな販路の開拓に向けた営業ツール作りです。名刺やパッケージの制作を依頼できるクリエイターとのマッチングを希望し、『クリエイティブ相談室』に申し込みました。その後、ヒアリングを経てアートディレクターの福田まやさんと出会います。

福田さんは、関西や東京での広告代理店勤務などを経て2012年に大分県中津市耶馬渓へ移住し、デザイン事務所『星庭』を設立されました。福田さんのインタビューはこちらをご覧ください。

 

『小松台農園』を訪問する福田さんと案内する竹林さん

 

福田さんは農園を訪問し、打ち合わせを重ねながらデザインコンセプトを固めていきました。

「竹林さんご夫婦と話していると、有機野菜の流通量が少なく価格も高価なため、一部の人しか手に入れることができないという現状を変え、一般の消費者が気軽に有機野菜を購入できる世の中を作りたいという思いが大きいことが分かりました。

私自身も耶馬渓に移住して自然豊かな環境で子どもを育てている中で、食べ物や、特に農産物がどういう風に生産されているのかを意識するようになりました。でも、オーガニックという言葉が一人歩きして、手に入りにくい特別なものというイメージになっていることに疑問を抱くことも。

そんなときにこのお話を聞いて、当たり前にいろんなスーパーや売店で、手軽にオーガニックが手に入る社会が実現してほしい、と共感しました。そしてそこから『FARM TO TABLE/ファームトゥーテーブル』という言葉があることを思い出しました」

『FARM TO TABLE/ファームトゥーテーブル』とは10年ほど前にアメリカで始まった地産地消のムーブメントで、『畑から食卓へ』オーガニックで新鮮な食材を届けることを意味します。アメリカではレストラン等に掲示され、掲示がある店では、地域の農家が生産した食材で料理を提供していることを表しています。

「この 『FARM TO TABLE』と『小松台農園』が地域の食卓の土台になっていくという意味を重ねて、基本コンセプトとしました。そうして出来上がったのが、テーブルと小松台の大地をモチーフにしたマークと、すこし土臭さを感じさせるタイポグラフィを組み合わせたロゴです」と福田さんは語ります。

 

 

 

 

福田さんは、ロゴと同時に、販売する野菜の袋などに貼るシールもデザインしました。
「店頭で『今日はこの野菜を食べてみよう』と手に取ってもらえるように、野菜ごとにシールのデザインを変えようと考えました。イラストレーターに『小松台農園』で生産している野菜の絵を描いてもらい、ハンコを作り、出荷時に捺印するような仕組みにしています。シールに印刷するのはベースになるロゴ部分の1パターンのみなので、大量に印刷することができ、コストを抑えられます。今後、生産する野菜の種類や出荷量が変わっても、ハンコを増やすだけで簡単に対応できます」

 

 

 

 

こうして完成したツールを活用し、営業を本格的に始めたところ、有機野菜専門の流通業者や直売所など順調に販路が広がっているそうです。

「漠然としていた思いや目指すビジョンを福田さんが整理してくれました。なぜ有機野菜にこだわっているのかを客観的に考え直し、福田さんの力で可視化されていくのは楽しかったです」と竹林さん。

最後に、千尋さんが『小松台農園』という名前に込めた思いを話してくれました。

「農園名を『小松台農園』に変え、ロゴをデザインしてもらったのは、小松台というこの土地の名前を発信し、ゆくゆくはここにいろんな人が交流できる場所をつくれたらという思いもあるからです。ここで暮らしていると高齢化が進んでいるのを感じますが、移住者を増やすことだけが地方創生ではなく、交流人口が増えることも地域の活性化に繋がると思います。私たちの農園があることで、小松台の交流人口を増やせたらいいなと思っています」

 

 

 

今回ご紹介した事例では、クリエイティブの力がクライアントのビジョンを明確にし、販路開拓などの新たな挑戦をサポートしています。

竹林さんは「今回の協働を機に、今後ますます生産体制を強化し、新鮮な有機野菜が身近なスーパーでも気軽に購入できる流通の仕組みを確立したい」と語りました。

 

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小松台農園 https://www.facebook.com/komatsudaifarm/

福田まやさん http://creativeoita.jp/database/fukuda/

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