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CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2018.05.24

「国東時間」を軸にした、企業と商品のリブランディング 『国東時間株式会社』

今回は、平成29年度の『クリエイティブ相談室』の活用事例から、企業そのものと商品のリブランディングに取組んだ協働の例をご紹介します。

国東市安岐町の廃校になった校舎を拠点に、段ボール製のマネキンやクラフト商品を製造・販売する『株式会社 アキ工作社』は、創業20周年となる本年、社名を『国東時間株式会社』へと変更しました。

同時に創業以来親しまれてきた商品ブランド『d-torso』は、『FLATS 4D ART PUZZLE』という名前に変わり、ロゴ、パッケージ、Webサイトなどを一新しています。

代表取締役の松岡勇樹さんと並走し、リブランディングを進めているのは、アートディレクターの梶原道生さんです。

松岡さんの提唱する国東半島ならではのライフスタイル「国東時間」を軸に、クリエイターとともに企業の一新を図った経緯と、新たな動きについて伺いました。

 

2018年3月2日に行われた『CREATIVE PLATFORM OITA 報告会』での事例発表の様子

 

主力事業である『FLATS 4D ART PUZZLE』は、立体をCTスキャンのように輪切りにして部品を作り、それを再構成するように設計されています。開発のきっかけは、ニット作家の展示会用に、もともと建築の設計をしていた松岡さんが段ボールのマネキンを設計したことでした。マネキンから始まった商品は、さまざまな市場からリクエストを受けながら展開し、クラフト商品から、ディズニーやサンリオなどのライセンス商品にまで広がり、国内外で販売されています。

 

しかし、企業や商品の知名度が上がっていく一方で、さまざまな課題を感じてきたと松岡さんは言います。

「ここ数年、一番悩まされているのが類似商品の問題です。日本はもとより海外でも類似商品が出回っていて、ジワジワとビジネスを圧迫してきています。それに対抗するために、自社の商品をどうやって差別化していくかが課題でした」

 

また、20年間、国東の地でおこなってきたさまざまな活動を通し、松岡さんは東京や他の場所とは違う、国東固有の時間の流れを感じるようになったと言います。そこで、それを積極的に生活や仕事に取り込む「国東時間」という考え方を提唱し、5年前から週休3日制の働き方を社内で導入しました。この制度の導入により、製造の優先順位や、商品や流通のあり方を見直すきっかけとなり、その結果、前年度よりも売り上げがアップし、労働生産性が上がったそうです。松岡さんはこの考え方・価値観を根幹に、もの作りやビジネスを組み立てたいという思いを抱くようになったそうです。

詳細は、『株式会社 アキ工作社』として取材させていただいた事例紹介記事をご覧ください。

 

このような状況のなかで、『クリエイティブ相談室』は松岡さんよりご相談を受け、ヒアリングを経て、アートディレクターの梶原道生さんとのマッチングに至りました。

 

以前から面識のあった松岡さんと梶原さんですが、協働するのは初めてでした。梶原さんは「松岡さんと話をしていると哲学的で深いんです。なので、松岡さんの思う『国東時間』という考え方と『d-torso』との関係性をいかに結びつけるかということがポイントだと考えました」と語ります。

製造現場を見学したり、合宿形式で長時間議論をしたりしながら、課題の洗い出し、ブランドコンセプトの整理、消費者とのコミュニケーション・トーンの設定など、段階を踏んでブランディングを進めていきました。なかでも重要だったのは、徹底したコンセプトの整理だと梶原さんは言います。

「ブランドコンセプトを底まで見極めないまま、ロゴやパッケージなどのデザインをしても表面的なものになってしまう。そうならないように、コンセプトの底を見つける作業に時間をかけました」

こういったリブランディングの過程のなかで、自然と社名変更が検討されました。

「どんな企業として確立したいかということを尋ねたときに、松岡さんから『国東時間』の話を聞き、ようやく企業としての思いやイメージが降りてきたように感じました」と梶原さんは振り返ります。そして、「『国東時間』は人々の琴線に触れる、特殊な響きがある言葉だと感じる」という松岡さんの思いを受け、社名を『国東時間株式会社』に変更することに決定しました。

 

リブランディングの打ち合わせ風景

 

 

完成した『国東時間 株式会社』のロゴ

 

社名変更と並行して、主幹商品のブランド名『d-torso』の見直しもおこないます。

「『d-torso』の“d”は段ボール、“torso”はボディ。段ボールのマネキンから始まり、その名前のままクラフト商品やキャラクター商品を作ってきたところ、商品と名前の関係性がどんどん離れていくように感じてきた」という松岡さんの抱えていた課題を受け、新しいブランド名にはどのような思いで商品を届けようとしているのかを込めることになりました。

flat=平面を複数形にして『FLATS』。設計する際には立体を平面にし、購入した人は二次元から三次元に組み立てていきます。新ブランド名『FLATS 4D ART PUZZLE』には、その過程に『国東時間』という時間軸を入れ、より豊かな時間を創造するというイメージを込めました。

 

 

『FLATS 4D ART PUZZLE』のロゴ

 

『国東時間株式会社』のリブランディングは半年以上の時間をかけて、きめ細かに進行していきました。そして最終段階として、これまで具体的な戦略が立てられていなかった販路開拓について話し合われました。

「いままでのWebサイトや商品パッケージでは、商品の用途やベネフィットについて消費者が具体的にイメージするための情報が十分でなかったように感じました。そこで、どのようなコミュニケーショントーンを設定し、どのような売り場で売られるべきか意見を出し合いました。そのうえで、FLATSのあるライフスタイルをみせることが重要だと考え、イメージ写真の撮影に力を入れました。企業側の目線として広告系のカメラマンと、ライフスタイルを見せるのが得意なカメラマンの2名に撮影してもらい、違いを見比べた結果、後者の写真を採用しました。消費者目線のマーケットインを見える化したんです」

 

 

新たに撮影されたイメージ写真

 

クリエイターとの協働について、松岡さんは語ります。

「今回梶原さんというディレクターに加わってもらったことは非常に大きかった。デザインとは表面的なものではありません。デザインにおいて、分析は非常に大きな比重を占めるものです。1つひとつの課題や現状を紐解いていくことがデザインという行為であるということを、梶原さんと協働しながら経験できました」

優れたクリエイターに共通しているのは、リサーチに徹底的に時間をかけているということです。表面的なデザインは、あくまでも結果です。『国東時間株式会社』のリブランディングでは、クリエイターはクライアントとの対話を通じ、目指すべきゴールとそこにたどり着くために大切にすべきことを見つけ、可視化する役割なのだと改めて感じました。

 

さっそく新たな動きも。別府市、日出町、杵築市、国東市、姫島、豊後高田市の郵便局63局の窓口で、『FLATS』mickeyとminnieが販売中。 7/4までの期間限定

 

最後に、松岡さんにこれからの抱負を伺いました。

「『国東時間株式会社』となった今後の目標は、継続です。100年、200年と事業を続けていくために、国東に流れる時間・資源をテーマにした商品開発など、『FLATS』を中心にしながら、より大きなブランドを作りたいと考えています。たとえ事業の内容が変わっていっても、『国東時間』のコンセプトはずっと続いていくように、会社を地域に根付かせていくことが目標です」

 

一人ひとりに流れる固有の時間の豊かさ、そのコンセプトを消費者へ伝え、社員の皆さんや地域の方々との関係性にも「国東時間」という新たな軸を加えることで、より深く国東の地に根ざした会社を目指す。そんなリブランデイングの事例でした。

 

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国東時間 株式会社 Webサイト http://kunisakitime.com/

梶原道生さん http://creativeoita.jp/database/kaziwara/

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