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事例紹介

2019.02.14

大分の食材や食文化を価値化『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10

2018年11月10日・11日に、大分マリーンパレス水族館『うみたまご』に併設するレストラン『A-ZOO』にて『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10が開催されました。
大分市では2017年より、地元食材の消費拡大と誘客を目指す『豊後料理』プロジェクトを始動しました。『豊後料理』とは、大分市と周辺の7市町からなる大分都市広域圏の食材や食文化を活かした新たなおもてなし料理です。『豊後料理』プロジェクトは、「大分産の食材を使用すること」「大分に伝わる郷土料理をアレンジしたメニューであること」などの定義に基づき、料理人の自由な発想によって生み出されるメニューで、県内外からの来訪者をおもてなししようという趣旨の地域振興事業です。『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10は、このプロジェクトの一環として、大分市と豊後料理クリエイトイベント実行委員会が主催しました。

 

このイベントの核となるシェフの選定にあたったのは、イベント監修を務めた中村孝則さん。中村さんは『世界のベストレストラン50』の日本評議委員長を務め、美食評論家としてメディアでも活躍されています。

イベントを監修した美食研究家の中村孝則さん ©紅葉谷 昌代

 

中村さんが選んだシェフは、アジアのトップシェフである『ガガン』のガガン・アナンドさんと『ラ メゾンドゥラナチュール ゴウ』の福山 剛さん。『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10は、このお2人が2015年から展開しているフードイベント『ゴーガン』の大分版として開催されました。『ゴーガン』は、レストランでは味わえないライブ感と、その日のためだけに考案されたメニューの提供が話題となり、国内外のフーディーズが注目しているイベントです。ちょうど10回目を迎えるこの日は、大分の食材や食文化から着想を得てお2人が考案した、特別な『豊後料理』が登場しました。

 

まずは『豊後料理』プロジェクトの旗揚げで主催の一員でもある大分市 農林水産部 審議監の直野宏昭さんに、この事業の目的を伺いました。
「『豊後料理』プロジェクトは、2017年に開始した取組です。大分市と別府市、由布市、竹田市、豊後大野市、津久見市、臼杵市、日出町からなる大分都市広域圏の優れた食材と、食文化や歴史や郷土料理を一体化して発信する取組みとして開始しました。ラグビーW杯やオリンピック・パラリンピックなどを契機に、食を通じて大分の魅力を発信するとともに、大分を訪れる国内外からのお客様を食でおもてなしすることを目指しています」

 

大分の農林水産物の消費拡大も狙いの1つであり、食を通じてその魅力を発信するため『豊後料理』の定義を作り、地元の料理人らと協働してモデル料理の開発もおこなってきたそうです。その後、定義に則り独自に開発した『豊後料理』を提供する店舗を募り、2018年には28店舗が登録し、実際に店舗において提供をおこなっているそうです。

大分市ではこれまでに、メニュー開発の資料となる大分の食材や食文化を紹介したハンドブックや、『豊後料理』を提供する加盟店を紹介するガイドブックを発行してきた

 

今回のイベント開催は、このプロジェクトの柱の1つである『豊後料理クリエイトイベント実施事業』として企画されました。その効果について直野さんは次のように語ります。
「このイベントは、食を通じて大分の魅力を発信することによって、国内外での大分の食材の認知度を上げ、ブランド化を促進することを狙いとしています。シェフや中村さんのフォロワーであるハイエンド層には、SNSを通じて効果的な情報発信ができたのではないかと感じています。また、PR担当の『株式会社 LUSSO』が運営するWebサイト『プレミアムジャパン』への掲載をはじめ、食関係のメディアにも多く取材していただきました。来場者にも、ぜひイベントの様子をSNSにアップして、拡散していただきたいです」

 

また、大分県の料理人で組織する『食ラボ大分』も全面的に協力し、SNSのグループを活用して食材の情報収集に努めたそうです。このイベントには、地元の若手シェフたちが2人のトップシェフのアシスタントとして関わることによって刺激を受け、技術や質の向上などの成長に繋げたいという狙いもあったそうです。直野さんは今回の『食ラボ大分』の活躍について「大分の食文化が育つきっかけになったのでは」と語ります。

アシスタントとして関わった『食ラボ大分』を中心とする地元の料理人のみなさん ©永井 匠太郎

 

今回ガガンさんと福山さんが招聘された理由は、地元シェフに刺激をもたらす人材であり、その土地や食材に敬意を払い、楽しみながらクリエイティビティを発揮してくれる料理人であるということでした。
ガガンさんはアジアのトップシェフとして抜群の知名度を誇り、話題性があるということもさることながら、地方の食材の価値や魅力を独創的な手法で最大限に引き出すシェフでもあります。さらに、パートナーとなる福山さんは大分の隣県である福岡に拠点を置いているため、細かなサポートもできるということが、今回のキャスティングの決め手となったそうです。

ガガン・アナンドさん(写真左)と福山 剛さん(写真右)  ©紅葉谷 昌代

 

続いて、福山さんに『ゴーガン』の取組について伺いました。
「2015年に知り合いのバースデーパーティで知り合い、サプライズで一緒に料理をしたのがきっかけでした。最初は通訳を通していましたが、今では感覚的に共有できるものがあります。また、回を重ねるたびにより良くなって、イベントとしてのクオリティも上がっています」

 

『ゴーガン』では、生産地やマーケットを見たり、実際に味わったりしてからメニューを決定するそうです。「今回もメニューが決まったのはイベント前日だったんですよ。まずは地元の食材を食べてみてから、どんな料理にするか考えるんです。そのライブ感は、まるでアーティストのようです。僕は直感型なのですが、ガガンはすごく慎重で気を遣うタイプですから、彼とのコラボレーションはすごく刺激的で、僕自身のステップアップにも繋がるんです」と福山さん。

ガガンさんと福山さんは、2020年に福岡県内で新たなレストランをオープンすることが決まっているそうです。

日本のカルチャーでもある絵文字の配列のみで構成された『ガガン』名物のお品書き ©永井 匠太郎

 

大分市吉野地区に伝わるとりめしをアレンジしたメニューをはじめ、とり天やりゅうきゅうなどの郷土料理がイノベーティブな『豊後料理』として生まれ変わった ©紅葉谷 昌代

 

イベント終盤、中村さんはこう語りました。
「レストランが提供するものは、お皿の中の料理だけではありません。楽しさや分かち合うこと、意外性、驚きなどもレストランが生み出せるものだと思っています。
インバウンドも視野に入れた誘客対策には、価値化していくことが大切です。ブランディングにおいて重要なのは、対価に見合った価値があるということを理解し、しっかり伝えていくことです。このイベントを機に価値を再発見し、ブランドの構築や発信に繋げていただきたい」

 

『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10は、単なる美食家のためのイベントではなく、大分の価値を再発見させてくれるものでした。このイベントの参加料は1人あたり35,000円。大分に住んでいる私たちにとって、とり天やりゅうきゅうなどの慣れ親しんだ郷土料理に、このような対価を支払う機会はなかなかありません。しかしこのイベントでは、大分の食文化や『食ラボ大分』によるリサーチで掘り起こされた食材が、ガガンさんと福山さんによって大きな価値を持つ体験へと昇華され、価値化されているのを実感しました。

 

リサーチをもとに素材の価値を見極め、そこにクリエイティビティを加えることによって高価格帯の商品やサービスへと磨き上げていく。『饗 〜OITA〜』by GohGan vol.10は、付加価値を加えることで豊後料理の可能性を感じさせてくれる体験でした。