MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2020.03.12

世界唯一の特殊技術を活用したビジネスモデル『METALFACE』

印刷製版工場が多く集まる東京都板橋区にある『株式会社 技光堂』は、1964年の創業時は製版業を専門としていました。かつては製版業者と印刷業者が分かれていることが多く、このような業態は珍しくはありませんでした。しかし、業界のデジタル化が進むにつれ、技光堂はシルク印刷やオンデマンド印刷などの特殊印刷技術を導入し、そもそも持っていた製版・加工技術と組み合わせることによって、独自の高度な技術を開発していきました。
その1つが世界唯一の技術である『立体視金属調印刷』です。金属製のプレートに施すエンボスやヘアラインなどの加工を技光堂の高い印刷技術で精巧に再現し、透明樹脂素材に印刷することで、低価格で軽くて薄く、腐食しにくい素材が完成します。この素材は主に銘板や、産業機械、工業機器、医療機器などに使用され、2017年度 板橋製品技術大賞で優秀賞を受賞しました。

 

『立体視金属調印刷』で金属そっくりに仕上がった樹脂素材

 

2018年に技光堂は、この技術を応用した商品の開発に乗り出します。その経緯について、営業部 本部長の佐藤英則さんに伺いました。
「この技術をもっと活用するために、『東京ビジネスデザインアワード』に参加してみないかと板橋区産業振興公社から声をかけていただいたのがきっかけでした。当社としてはこれまでにない新たな試みでしたが、当時ちょうど新入社員を迎えたばかりでしたので、営業部で新規プロジェクトを立ち上げて挑戦することになったんです」
『東京ビジネスデザインアワード』に参加してこの技術の活用案を公募すると、複数のクリエターからの提案がありました。なかでも技光堂がパートナーとして選んだのはビジネスデザインを専門とするkenmaでした。
「透明樹脂素材にあって金属にない特性として、光を透過させることができないかというkenmaさんからの質問を受けて、試作してみたんです。すると、インクを改良することで、それほど苦労せずLEDライトを透過することが可能になりました。そこから家電のインターフェイスやデジタルデバイスへの活用など、さまざまなアイデアが広がっていったんです」と佐藤さん。

 

『東京ビジネスデザインアワード』審査会に出品した試作品の時計

 

『東京ビジネスデザインアワード』の審査会には、kenma と技光堂の協働プロジェクトとして、ITプロダクト向けのインターフェイス事業『METALFACE』というビジネスモデルでエントリーし、営業資料と展開例の試作品としての時計を出品、最優秀賞を受賞します。そこから本契約を結び、2019年5月には大阪で開催された国際展示会「高機能プラスチック展」に出展して、この技術を発表。これまでにない新技術として大きな注目を集めました。

「kenmaさんはデザイン力や表現力が非常に高いんですよ。kenmaさんが作った営業資料は、メーカーが活用のあり方を想像しやすいんですよね。営業の私たちとしても、とても説明しやすく、展示会では多くのメーカーに興味を持っていただけました。営業にとっては、強い武器を持たせてもらったという感触ですね」
また、展示会前に積極的にメディアに露出していたのも功を奏したそうです。「テレビや新聞などであらかじめ情報が流通していたことも、展示会で足を止めてもらえた要因ですね。メーカーや開発設計の方々は、常に新しいものを探しているんです。展示ブースに設置していた2000部のカタログは、ほとんどなくなってしまいました」と佐藤さん。

 

『METALFACE』カタログ(部分)

 

これまでは医療、産業、工業などの機器メーカーが中心でしたが、この展示会をきっかけに自動車業界や家電業界、住宅設備など、商談相手の業種も大きく広がったそうです。
BtoBの場合、商談が成立してから商品化までに早くても1年、ものによっては5年もかかると言います。現在50社もの企業との商談が進んでいるそうですが、今後どのように『METALFACE』が私たちの生活に取り入れられていくのか、非常に楽しみです。

『METALFACE』は現在、東京都デザイン振興会のサポートを受け、意匠、特許、商標などさまざまな権利登録を出願中です。「これまでに実用新案の登録の経験はあったのですが、『東京ビジネスデザインアワード』に参加したおかげで知財の専門家にもアドバイスをいただけて、申請もスムーズでした」と佐藤さん。現在は、大きな販路を持った韓国のメーカーと連携し、デザイン性の高いリストウォッチを試作している最中とのことで、今後の展開について伺うと「BtoBだけでなく、kenmaさんのブランディングのもとに、BtoCも展開していきたいと思っています」とお答えいただきました。

 

試作中のリストウォッチ

 

印刷技術を活用した商品開発では、往々にして低価格商品が生まれがちですが、クリエイターのアイデアによって、技光堂の卓越した特殊印刷技術に高い価値を持たせて販売することができるビジネスモデルが確立しました。また、BtoBでは商談開始から商品がリリースされるまでに時間がかかってしまうという課題を、BtoC向けの自社製品を協働開発し、素早く市場にローンチできる体制を作ることで解決しました。『METALFACE』は、クリエイターがビジネスモデルの構築に関わったことで、多方向に視野が広がった理想的な協働モデルでした。