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CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2020.10.15

干潟で育った養殖ひじきの特徴をキャッチーなネーミングとロゴマークで表現

今回は、CREATIVE PLATFORM OITAの『クリエイティブ相談室』を活用した事例として、大分県漁業協同組合青年部宇佐支部と、大分市のデザイナー櫻井暢子さんの協働事例をご紹介します。

 

大分県漁協青年部宇佐支部は、宇佐市の長洲漁港を拠点に、底曳き網漁業を中心に、ハモやエビなどを漁獲する若手漁師が所属しています。新鮮な魚介類や水産加工品などを販売する『浜の市』や朝市に参加するなど、地域を盛りあげる活動をおこなっています。

 

宇佐支部では4年前から、養殖ひじきの生産に取り組んできました。山田和幸支部長は「天然で育つほどの適した環境ではありませんが、種植えしてきちんと手をかければ、良いものが育つということがわかったんです」と振り返ります。10月頃に種苗ロープを設置し、時化で出漁できない冬場に手入れし、休漁期の春に刈り取る養殖ひじきは、青年部の新たな事業となりました。

 

大分県漁業協同組合青年部宇佐支部のメンバー

 

一般的なひじきの養殖は、波の静かな入江などに種苗のついたロープを垂らして栽培しますが、宇佐支部では、長洲干潟に支柱を立て、潮の満ち引きを利用した珍しい養殖をおこなっています。冬の季節風や潮の満ち引きにより抵抗を受ける厳しい環境で育つため、肉厚で弾力のあるひじきになるそうです。潮が引くと支柱が何本も立ち現れる風景は、とても印象的です。

 

2019年春には乾燥重量に換算して500キロを収穫。同年5月から『干潟ひじき』の名称で、年2回の『浜の市』や月1回開催される朝市などで販売を開始します。当時のパッケージなどは手作りだったそうです。

 

干潟に支柱を立てて、ひじきを栽培するようす

 

実際に販売がスタートすると、事業としてしっかり育てていこうという機運が高まり「新たな『宇佐ブランド』に育てたい」「ほかの商品と差別化を図りたい」といった課題が生まれました。宇佐支部は、そうした問題に対して知恵を貸してくれる人材を求め、『クリエイティブ相談室』へ問い合わせます。

 

 

相談室では、限られた予算で、より効果的に商品の情報を伝えるための方法をともに考えてくれるクリエイティブ人材として、大分市を拠点に活動するアートディレクターの櫻井暢子さんをご紹介し、マッチングに至りました。

 

櫻井さんは、大分市にデザイン会社『unid 株式会社』を立ちあげ、さまざまな企業や商品のロゴやWebサイト、販促物などの制作に携わってきました。これまでにも相談室を通じて、『合同会社 RSB』や『きものかふぇ ゑり章』『有限会社 九州食肉学問所』との協働の実績をお持ちです。櫻井さんのインタビューはこちらでお読みいただけます。

 

 

櫻井さんは、まず、内部でひじきについての情報を整理する必要性を感じ、宇佐支部のメンバーにヒアリングをおこないながら、オリジナルの「カルテ」を作成します。宇佐支部のビジョン、ひじきや生産環境の特徴、ターゲットの設定、商品を通じてどのような感情や体験を提供したいかなどをテキスト化し、宇佐支部に共有しました。SNSのグループ機能も活用し、密にコミュニケーションを重ねながら、販売先やメディア向けに商品を紹介するための資料作成に向けて動き出していた矢先、世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大。当初予定していた企業や飲食店との取引が難しくなり、ターゲットや販路を再設定して取り組むことになりました。

4月以降は打ち合わせもオンラインに切り替え、スケジュールを変更しながら、櫻井さんと宇佐支部とのやりとりは続きました。

 

視察の様子

 

複数回にわたるヒアリングを経て、プレスリリースとなる資料が完成。資料にはコンセプトやこれまでの経緯を掲載し、『筋肉(マッスル)ひじき』というキャッチーなネーミングと、腕を90度に曲げて筋肉を自慢しているようなロゴマークで商品の特徴を端的に表現しました。ネーミングは、長洲干潟の厳しい環境を受けて生まれる肉厚で弾力があるひじきを、ジムで体を鍛えている様子と重ね合わせて考案したのだそうです。また、ロゴマークには実物のひじきを腕のように並べたものを取り入れました。

 

山田さんは、「最初は、ネーミングやロゴで商品の印象や情報が劇的に変わるなんて思っていませんでした。これまでは、支部のメンバーや関係者だけでアイデアを出していたのですが、櫻井さんが第三者の視点で整理してデザインすると、商品の特徴が一目で伝わるようになって驚きました」と振り返ります。

 

 

 

 

プレスリリースを配信すると、地元の新聞にも取りあげられ、反響があったそうです。

また、2020年7月からは『筋肉ひじき』の名称で、商品としての販売もスタート。「名前がすごく目を引くので、普段ひじきを食べない人や、年齢層も年配の人から若い人まで面白がってくれて、実際手にする人もいると聞いている。新規のお客様を開拓するきっかけになっています」

 

さらに、食育の一環として地産地消を推進している宇佐市内の学校給食にも登場し、献立表メニューではしっかり『筋肉ひじき』という名称で紹介されています。今後は料理教室などの企画も思案しているそうです。

 

 

当初、具体的な売上目標はなく、現状の組織体制ではマンパワーが足りず、営業や販売開拓などに取組むのは難しいという認識でした。ところが、きちんと情報が伝わり、さまざまな反響があったことでメンバーの心境は変化。「ひじきの魅力を伝えやすくなったことで、もっと多くの人に知ってもらい、手に取ってもらいたいと思うようになりました」。現在は、宇佐支部で積極的に営業活動をおこなっており、今後、地元や近隣エリアにある道の駅での取り扱いも始まる予定だそうです。

 

 

櫻井さんはヒアリング中、「消費者の目に見えるものはすべてコミュニケーションなんです」と伝えていました。今回、実際に消費者との対話が始まったことを実感している宇佐支部の皆さんが、今後も地元の魅力的な産品を発信していくことを期待しています。