MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2018.03.27

「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、変化し続ける『中川政七商店』

『中川政七商店』は、1716年に奈良県で商いを始めた、創業300年を超える工芸メーカーです。近年は工芸をベースにしたSPA(製造小売)の業態を確立し、全国各地に直営店を展開しています。大分県では、JR 大分駅の商業施設『アミュプラザおおいた』内に直営店があり、「暮らしの道具」をコンセプトとした生活雑貨などを販売しています。「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、変化し続ける『中川政七商店』。その躍進のポイントを探るべく、今回は奈良県の本社を訪問し、経営企画室の原岡知宏さんにお話を伺いました。

 

 

1716年に奈良晒の問屋として商いを始めた『中川政七商店』。13代目にあたる現在の中川政七会長は、大学卒業後、大手企業を経て2002年に同社に入社し、さまざまな経営改革をおこないました。それまでB to Bの取引が売上の多くを占めていたのに対し、商品開発から製造、流通、小売まで、すべて自社でまかなう業態に大きく転換を図り、工芸の業界でSPAの業態を先駆的に確立しました。現在は『中川政七商店』『遊 中川』『日本市』という3つのショップブランドで、50店舗の直営店を全国各地に展開しています。

 

 

奈良県にある『遊 中川』本店。「日本の布ぬの」をコンセプトに日本に古くから伝わる素材・技術・意匠と今の感覚をあわせたテキスタイルを提案する。

 

 

また、靴下ブランド『2&9』やハンカチブランド『motta』、ニットブランド『kuru』など、オリジナルの商品ブランドも次々と展開しています。さらには、2008年に全国の工芸メーカーに対し、自社ブランドで培ったブランドマネジメント力を活かした経営コンサルティングを開始、2011年からは『大日本市』と称した展示会も定期的に開催し、自社のブランドや商品だけでなく、全国の優れた工芸メーカーを広く紹介し、工芸の作り手と流通や使い手を繋ぐ機会を増やすことにも力を入れています。近年では、地域の工芸の担い手を対象とした教育事業にも取り組んでいます。

 

『大日本市』のようす

 

長い歴史や伝統を持つ老舗企業が、自身の業態や考え方を大きく変化させるのは決して容易なことではありません。300年の歴史を持つ老舗の中小企業であった『中川政七商店』が、ここ15年ほどで急速に変化し、躍進したポイントとは一体何なのでしょうか。2003年に入社し、13代中川政七社長と共に経営改革にたずさわってきた原岡さんに聞きました。
「地方の中小企業にお話を伺うと、そもそも会社の予算書がなかったり、年度の目標がなかったりすることがよくあります。実は当社も、商売が成熟していた茶道具部門はしっかりとしたマネジメントがおこなわれていましたが、雑貨部門はそうではありませんでした。しかし、2002年ごろから中期経営計画を3年間のローリング方式で作り、毎年PDCAサイクルで見直していくという、言ってみればごく一般的な当たり前の経営をきちんと続けてきました。何も独創的で革新的な経営計画を立ててやってきたわけではありません。教科書どおりの経営をきちんとやり抜く。それを続けてきたことがポイントなのだと思います。当社の場合、ブランディングの部分に注目していただくことが多いですが、まず経営計画があって、戦略としてその大部分をブランディングが占めている、という位置づけです」

 

奈良県の本社のようす。現社屋は2010年に建てられた。

 

原岡さんが入社した当時は、本社の雑貨部門に在籍していた正社員は15名程度。それが今や、正社員や店舗のアルバイトスタッフを含め約400名を抱える企業にまで成長しました。組織が大きくなる中で、社員とのビジョンや考え方の共有に課題も見えてきたと原岡さんは話します。
「代表の中川が『日本の工芸を元気にする!』というビジョンを明言したのが2007年です。その年から年に1度『政七まつり』と称して、正社員が大集合する社員総会を開催し、ビジョンの共有や研修をおこなっています。また、ビジョンの下に『こころば』という社員の心構えがあって、それは新入社員も含め全員に配られています。会社の方向性や業務の進め方など、共通言語を持つことが非常に大切です」

 

今年は『中川政七商店心得』という社内向け小冊子を作成。会社の成立やブランドコンセプト、経営や組織の体制など、社内のさまざまな情報を掲載し、社員全員に配布した。

 

経営企画室の原岡知宏さん

 

「今でこそ、決まったことに対して、みんなで全力でやるんだという認識が会社全体に浸透していますが、10年くらい前まではなかなかそうはいきませんでした。やると決めたらやり切る。そういう基本的なことを社長が発信し続けることで、企業風土が形作られ、ビジョンに沿って社員が自発的に行動を起こすようになりました」原岡さんはそう話してくださいました。

 

トップの強いイニシアチブとぶれないビジョンのもと、その時どきの課題に対しスピーディーに手を打つ。それを社員としっかりと共有する。その繰り返しを着実にやり抜いてきたことが、『中川政七商店』の変化と躍進を支えているのだと、原岡さんのお話を聞いて実感しました。

 

次回は、『中川政七商店』が2016年に新たに掲げた『さんち構想』の取組についてご紹介します。

 

 


株式会社 中川政七商店
住所:[本社] 奈良県奈良市東九条町1112-1
公式HP:http://www.yu-nakagawa.co.jp