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事例紹介

2018.03.29

『中川政七商店』の描く工芸産地再生とは?「産業革命」と「産業観光」

前回に引き続き、『中川政七商店』経営企画室・原岡知宏さんにお話を伺いました。今回は、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる同社が、この先100年を見据えて描いている工芸産地再生構想=『さんち構想』についてご紹介します。『さんち構想』は、「産業革命」と「産業観光」という2つの柱から成ると原岡さんは話します。一体どういうことでしょうか?

 

『中川政七商店』本社

 

「産業革命」と言うと少し大げさなようにも聞こえるかもしれませんが、18世紀イギリスで始まった産業革命で産業の構造そのものが変わったように、工芸の産地の構造を抜本的に変革することを『中川政七商店』は本気で働きかけていきたいのだと言います。これまで工芸の産地では、地域内で分業体制をとり、ものづくりを推進してきました。しかし、需要減による経営難でいくつかの担い手が廃業し、櫛の歯が欠けたようになってしまうことで、分業工程を守ることができず、産地全体が危機に瀕するということが起きています。そのような分業体制から脱却し、地域の関連企業どうしが統合または提携し、資本集約することによって製造を統合させ、業界全体で産業の新しい構造を作っていく必要があると言うのです。

 

「そのためには、まずは覚悟と行動力を持って、その産地を引っ張っていく存在が必要です。僕たちはそういった企業を『産地の一番星』と呼んでいます。各地の『一番星』が輝くことで、その土地の工芸が元気になり、ひいては日本全体の工芸が元気になることを目指しています」

 

『産地の一番星』とはどんな企業を指すのでしょうか?「各地で作られる工芸品には、それぞれに歴史や背景があります。そして、それらを日常の暮らしの道具として使う人々は工芸品の持つストーリーを求めています。それを経営的な視点を持ってきちんと伝えられているかどうかが、産地の成否を分けていると言っても過言ではありません。単によいものをつくるというだけでなく、産地やメーカーの歴史、背景を含めた価値の源泉を理解し、それをきちんと使い手に伝える。さらに、産地を背負って立つ心意気で、構造変革に身を削ってでも取り組む。そのような『一番星』が生まれてくることが、産地の未来をつくっていくことに繋がると考えています」

 

『さんち構想』のもう1つの柱が、「産業観光」です。「地方創生や地域活性化というキーワードのもと交流人口の増加を目指すとき、既存の資源をコンテンツにしていくことが大切だと考えています。とすると、工芸やその産地というのは重要なコンテンツになり得ると考えます。選ばれるコンテンツになるためには、ばらばらに存在するものづくりの現場を繋げることが必要です。工芸産地の『産業革命』で得た一貫生産のようすは、魅力的な観光コンテンツになり得る可能性を持っています」

 

しかし、それだけではコンテンツとして不十分だと原岡さんは語ります。「たとえば別府の竹細工の現場を見にいくためだけに、わざわざ飛行機に乗っていくかというと、それはなかなか難しいですよね。そこに美味しい食べ物があり、いい宿があり、それらとセットで工芸の現場を見にいくこと・体験することが組み合わされば、十分強いコンテンツになり得ると考えています。竹細工を見に大分県まで足を伸ばすことって、たぶん一生のうちにそんなに何度もないですよね。だとしたら、1回の来訪にどれだけの体験を提供できるかがとても重要です。その体験を、ファンづくりや購買行動に繋げていく。それが、工芸の産地における『産業観光』の在り方です」

 

そのような考えのもと、同社は工芸と旅の情報発信をおこなうサイトとアプリ『さんち~工芸と探訪~』を2016年にリリース。全国各地の工芸の産地に関する情報を毎日更新しています。アプリには、気に入った記事や産地をお気に入りできる「栞」機能やレコメンド機能など、自分ならではの“旅のお供”として楽しめる機能が付いています。「今はまだ情報を集積していっている段階ですが、食や宿泊、そのほかの体験とも連携して、さまざまなコンテンツに展開していきたいですね」と原岡さんは話します。

 

 

『さんち~工芸と探訪~』Webサイトより

 

『さんち構想』を実現していくためにも、同じ志を持つ企業や経営者の連携が必要です。十三代中川政七社長の呼び掛けで、2017年2月に『日本工芸産地協会』が設立されました。協会ではカンファレンスや勉強会などを実施し、情報やアイデアの共有をおこなっています。「九州では今のところ、長崎県波佐見の陶磁器メーカー1社が入会しています。九州にはまだまだいい産地や企業がありますので、ぜひネットワークを広げていきたいと思っています」

 

『日本工芸産地協会』Webサイトより

 

 

『産地の一番星』を中心に、工芸の現場の産業構造をダイナミックに変化させていくこと。そして、ものづくりの現場を観光資源として人を呼び込み、その波及効果を地域全体に広げること。『中川政七商店』の挑戦が切り拓く、日本の工芸の未来に期待が高まります。

 

 

 

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株式会社 中川政七商店
住所:[本社] 奈良県奈良市東九条町1112-1
公式HP:http://www.yu-nakagawa.co.jp

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一般社団法人日本工芸産地協会
住所:東京都渋谷区神宮前5-43-7-2階
公式HP:https://kougei-sunchi.or.jp