事例紹介
2021.02.18
いきいきと働ける会社の雰囲気を可視化し、地域のインフラを担う土木・建築・砕石業の魅力を伝える

今回は、『クリエイティブ相談室』を活用した事例として、大分県豊後高田市にある『西日本土木 株式会社』と大阪のデザインスタジオ『UMA/design farm』の協働事例をご紹介します。採用活動の強化を目指しておこなったブランディングはどのように進んだのか、プロジェクト担当者にお聞きしました。
1943年創業の『西日本土木 株式会社』は、土木、砕石、建築の3部門を持つ総合建設業です。
大分県、熊本県、宮崎県に事業所があり、グループでは建設関連はもとより、介護や農業といった暮らしの分野にも活動の幅を広げています。
土木部門では一般土木工事やアスファルト舗装、建築部門では公共施設から一般住宅の施工、砕石部門ではコンクリート、アスファルトの原材料となる石づくり(骨材)を九州9箇所の砕石所で行っています。
クリエイティブ相談室に相談した当時は、2016年の熊本地震の復興のため、すべての事業所や砕石所がフル稼働の状態。全社的に余裕がなく、事故やミスも起きやすくなっていたそうです。状況を打開しようと、人材採用を進めていましたが、社名にある土木という言葉へのイメージからか、なかなか応募がない状況が続いていました。

採石場のようす。photo by Koichiro Fujimoto
また、社内では長期経営計画の見直しが進められていました。事業の数字的な目標達成だけでなく、働き方改革や人事制度の見直し、生産性向上やブランディングなど、テーマごとにプロジェクトチームをつくって協議していました。
社内でのブランディングプロジェクトについて、西日本土木 株式会社 取締役本部長の井元克幸さんは、次のように話します。「会社のイメージをきちんと伝えたいという思いから始めました。書籍などを参考に、見よう見まねでワークショップをおこない、弊社のキャッチコピーやサブネームなどを決めようと議論したのですが、そんな表面的な変化だけでは、本質的な課題解決にならないのではと迷いが生じ、外部の専門的な人材に相談した方がいいと思ったんです」。そこで、『クリエイティブ相談室』を活用します。
相談室では、2019年1月からヒアリングを開始。社員の思いを尊重しながらブランディングを進めたいという企業の思いに寄り添い、長期的にパートナーとなれるクリエイターが良いと考え、大阪を拠点に活動する『UMA/design farm』を紹介します。
UMA/design farm 代表の原田祐馬さんのインタビューはこちらからご覧いただけます。
ヒアリングを通じて原田さんは、西日本土木を「日常の安全安心を守り、災害時には復旧作業を担うなど、街や景観の基盤を支える企業」と捉えます。そこで、理念の言語化や価値を可視化することが重要であるとし、企業スローガンの策定や、企業Webサイトのリニューアル、人材採用のためのWebサイトの制作などを提案。プランに賛同した西日本土木との協働が本格的にスタートしました。
まず喫緊の課題であった人材採用のためのWebサイトの制作から着手。原田さんとUMAの担当デザイナー高橋めぐみさんは、プロジェクトチームのメンバーとともに3ヶ月かけて、各部門や九州各地にあるすべての事業所へ足を運び、社員へのヒアリングや各部門、事業所の特徴や雰囲気をリサーチしました。

現場を見学するUMA/design farmの原田さん(左)
井元さんは「原田さんは、自分のデザインに刷新するのではなく、もともと会社にあった思いや姿を見えるように形にしてくれていると感じます。1人ひとりの考えに踏み込みながらも客観視もしてくれて、ブランディングの方針がブレないようにしてくれています」と話します。
社長や経営幹部はヒアリングや打ち合わせには同席せず、自由に発言しやすい雰囲気づくりを心がけたそうです。
ヒアリングを経て制作した採用Webサイトには、社会のインフラを支える事業内容やそれに携わる社員の思いを汲み、新たに作成したスローガン「いつも力になる、いつか力になる」を掲げています。社員でなければなかなか見ることのできない現場の写真や、それぞれが豊かな表情のポートレートを通じて、社内の雰囲気を伝え、各部門の仕事内容などはイラストを添えることで、親しみやすくわかりやすい内容にしました。
西日本土木の採用Webサイトはこちら。https://recruit.nnd-inc.jp/

採用Webサイトのトップページ
この採用Webサイトは、2020年秋にオープン。
同年12月、採用活動で最も苦戦していた砕石部門の営業担当の求人募集に活用したところ、2-3人の想定を大きく上回り、30人以上の応募があったそうです。
採用活動を担当する人事総務部次長の溝部正雄さんは、「面接したほぼ全員が、志望動機として”社員がいきいきして見えた”と言ってくれて、ちゃんと届いていることを実感しました。また、ブランディングに取り組んでいること自体が同業者のなかでは珍しく、好印象だったようです。2022年4月に向けた新卒採用も期待しています」と話します。
また、会社のイメージや雰囲気などの情報は社外だけでなく、社内にも行き届き、社員の意識も変わってきたと井元さんはいいます。「素敵な笑顔や会社思いの真面目な面など、普段一緒に働く同僚の素晴らしさに改めて気づくことができました。自分たちの仕事の重要性も再確認し、採用活動で選ばれる会社だと思うと自信にも繋がりますよね」
原田さんは当初、社外に何をいかに伝えるかということ以前に、社員の方々が自社のことをもっと知って好きになること、そして社員の方々が社外に良さを伝えていくことが、ブランディングにおいて大事だとプロジェクトメンバーに伝えていました。その言葉を振り返りながら「この取組によって好循環が生まれる兆しを感じています」と井元さんは続けました。
採用Webサイトと並行して、働き方改革や生産性向上などの改革もおこなっていましたが、会社の意図や考え方が浸透していたため、制度変更への理解などもスムーズだったそうです。

お話をお聞きしたプロジェクトメンバーの(左から)後藤なつ美さん、井元克幸さん、溝部正雄さん
西日本土木とUMAのブランディングプロジェクトは始まったばかり。これから2-3年かけて、社名やロゴを含むCIの見直し、本社Webサイトのリニューアル、社屋の改修なども計画しています。また、プロジェクトが終わってもUMAとは、何かあれば相談できるパートナーのような関係性を続けていきたいと考えているそうです。
リソースが限られる中小企業ほど、西日本土木のようなクリエイターとの関係構築は、経営にクリエイティブを取り入れる際の参考になるのではないでしょうか。
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