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事例紹介

2020.09.10

「デザインで企業に寄り添う」 『おおいたデザインエイド2020』 第2回クリエイティブセミナー開催レポート

地方都市の企業経営における課題をデザインの力で解決した実績を多く持つクリエイターを講師に招く『おおいたデザインエイド2020』クリエイティブセミナーの第2回目が、2020年8月29日に開催されました。本来はJ:COMホルトホール大分にて開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症への対策としてオンラインでの開催となった第2回目は、「デザインで企業に寄り添う」をテーマに、株式会社フレーム 代表取締役でグラフィックデザイナーの石川竜太さんが講演しました。

 

石川さんは新潟市内のデザインプロダクションで8年務め、30歳のときに株式会社フレーム (以下、フレーム) を立ちあげました。現在15年目になるフレームは、石川さん含め社員10名が所属する、新潟県内でも大規模なデザインプロダクションです。フレームには、営業職のようにクライアントとの折衝を担当するポジションがありません。デザイナーとクライアントが直接やり取りすることで、お互いの考えをしっかり共有しながら進め、ときにはデザイナーが客観的な視点で商品にアドバイスできるような関係性を大事にしているのだそうです。

 

キリンビバレッジ『生茶』やLOTTE『紗々』のパッケージデザイン、テレビ番組のタイトルや企業のロゴなど、多岐に渡るデザインを手がける石川さんは、「デザイン=計画」であると言います。たとえば、誰かに贈りものをするとき、相手の年齢や性別、趣味嗜好などの情報がなければ選ぶことができません。それはデザインにおける計画と同じだと石川さんは言います。つまり、どんな売り場に並ぶのか、誰にどんなシーンで使ってもらいたいのかの計画がなければ、デザインのプロセスに移行することはできません。石川さんは「計画があってデザインが生きる。計画がデザインの半分以上を占めていると思う」と言います。

 

 

このような考えのもとに、ドライフルーツや発酵食品などを製造販売する『土の香工房cotocoto』のブランディングでは、まず商品の背景を明文化することから始めたそうです。発酵食が古くから伝わる自然豊かな土地で、上質な素材を用いて伝統的な食品を加工製造していることを伝えるストーリーを作り、それを体現するロゴマークを制作しました。それを起点にパッケージデザインを展開し、共通のフォーマットで1つのブランドとして商談会に出品したところ、百貨店などでの取引に繋がったそうです。

石川さんは「バイヤーさんに興味を持ってもらえたのは、デザインが良かったからではない。ただロゴやパッケージを綺麗にするのではなく、ブランドが持つ背景やストーリーを表現することが大事。ロゴやパッケージを通してメッセージがしっかり伝わったことが、販路拡大に繋がったのでは?」と言います。

 

 

続いて、地域のお祭りをモチーフにした『麒麟山酒造』のお酒のリパッケージについて紹介しました。毎年5月に開催される『つがわ狐の嫁入り行列』は、人口5,000人の町に1日で25,000人もの観光客が訪れる人気のお祭りです。それをモチーフにした日本酒『つがわ狐の嫁入り行列』は、年に1度、このお祭りの日にたくさんの観光客が買い求める人気商品でした。そのパッケージのリニューアルを依頼された石川さんは、和紙で作った白無垢の衣装を瓶に着せ、花嫁に見立てたパッケージデザインとともに、商品名を『嫁入り酒』へと変えることも提案したそうです。その理由について、「祭りの日にしか売れないものではなく、一般の酒屋でも売れるものにしたかった」と石川さんは語ります。地域や祭りの名称を指す言葉を排除することで、ウエディングのギフトや式場の引き出物などの新たな市場を狙える商品としてリニューアルしたのです。婚礼での発注は数量もまとまることが多く流通量は大きく伸びたと聞いています。

 

石川さんは「ブランディング」とは共通のイメージを作ることだと言います。企業はユーザーに「こう思ってほしい」「こう感じてほしい」という理想を持っています。その理想と、企業や商品に対するユーザーのイメージがより近くなったときに、ブランディングが成功したと言えます。ブランディングとは、ロゴやパッケージを一新することではなく、企業がこうありたいと願うイメージをユーザーに感じてもらうための手法を指すのです。

 

 

そのユニークな手法として紹介されたのが、『4w1h』というキッチンツールのブランドです。

これは新潟県のある金属加工メーカーが立ちあげたブランドですが、会社名を表に出さず『燕三条キッチン研究所』の名称でリリースされています。その目的は、ブランドコンセプトをしっかり立て、さまざまな価値観やライフスタイルの中で本当に使いやすい商品を企画・製造するという活動が、ブランドのイメージをユーザーと共有することにあります。フレームはこのブランドのなかで、コンセプトの構築、ネーミング、コピーライティング、商品開発、パッケージデザイン、Webデザイン、販売店へのアプローチ、展示会ブースのデザイン、SNSの管理と実に多岐にわたる業務にプロジェクトメンバーの一員として携わったそうです。これはつまり、ブランディング=共通の認識を作るためにはこれだけの作業が必要となるということです。このブランドの一環として生み出されたホットサンドメーカーは、在庫がわずか3分で完売するほど話題を呼んだそうです。

 

もう1つの事例として、アウトドア用品や包丁、鍋を取り扱う卸売業とネットショップを運営する『村の鍛冶屋』と協業した『TSBBQ』についても紹介されました。

グランピングブームが高まっていたことから、スタイリッシュなアウトドアシーンを見据えて『村の鍛冶屋』は『TSBBQ』というブランドを立ちあげ、新潟県燕三条の工場や職人と連携し、燕三条製のクオリティの高いアウトドア製品を企画・提供しています。さらに『TSBBQ』では、ネットショップのユーザーから寄せられるニーズを踏まえた新商品を開発する『TSBBQ LAB』をスタートし、よりユーザー視点に立った商品開発をするとともに、地域の発信や職人の技術研鑽にも繋げています。

 

石川さんは、通常はデザイナーの仕事だと認識されていないようなところから深く関わることで、クライアントとの間に深い信頼関係を築いています。石川さんは「計画からデザインは始まっている。デザイナーにデザインだけを任せるのではなく、計画の部分にも深く関わることで、デザイナーとともに歩み、もっとうまく活用してほしい。かっこいいものや美しいものが作れるということ以上の価値を提供できるデザインを続けていきたい」と結びました。

 

講座の最後には多くの質問や感想が寄せられ、オンラインとはいえ受講生の熱が伝わりました。

石川さんは「年齢に関わらず、もっと積極的にいろんなものを見たり、いろんなことにトライしたり、いろんな人の話を聞いたりしてほしい。自分の経験や知識やセンスを蓄積させていくことで、デザインが芯の通ったものになる」と、受講生を激励しました。

 

 

2020年9月23日に、石川さんの著書「毎日ロゴ 無名デザイナーが365日、毎日ロゴをつくり続け 有名デザイン賞を受賞したロゴデザイン上達法」が刊行されます。石川さんは独立したばかりの頃、ロゴデザイン上達のために1日30分でロゴをつくり、ブログにアップすることを毎日続けていたそうです。その結果、国内外の有名デザイン賞を続々受賞。その実戦の記録と上達法を解説したのが本書です。デザイナーを志す方はもちろん、石川さんの思考法をもっと知りたい方はぜひご購読ください。

 

おおいたデザインエイド2020 (https://oita-designaid.jp/)

株式会社フレーム (http://frame-d.jp/)