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事例紹介

2020.09.17

「創造的な産地をつくる」 『おおいたデザインエイド2020』  第3回クリエイティブセミナー開催レポート

地方都市の企業経営における課題をデザインの力で解決した実績を多く持つクリエイターを講師に招く『おおいたデザインエイド2020』クリエイティブセミナーの第3回目が、2020年9月5日にオンラインにて開催されました。今回は「創造的な産地をつくる」というテーマで、『TSUGI LLC.』(以下、TSUGI) 代表でデザインディレクターの新山直広さんが、福井県鯖江市の地域産業の未来を醸成する活動について講演しました。

 

鯖江市はさまざまな伝統産業の産地であり、半径10キロ圏内に「眼鏡」「越前漆器」「越前和紙」「越前打刃物」「越前箪笥」「越前焼」「繊維」の7つの産業が密集した国内でも珍しい産地です。

 

新山さんは学生時代に、鯖江市で開催された『河和田アートキャンプ』に参加し、地域課題を発掘し解決を図るプロジェクトに関わりました。そこでコミュニティデザインや地域活性に興味を持ち、大学卒業後に鯖江市に移住したそうです。

 

新山さんは移住後、「越前漆器」の産業調査として職人へのヒアリングなどをおこない「ものづくりが元気にならないと地域の元気にならない」という思いを強くします。そこで、地域特有の問題に向き合い、地域産業の機運醸成と地域活性を図ろうと、地元の同世代の有志たちとともにTSUGIを設立。2015年に「創造的な産地をつくる」というビジョンを掲げ、デザイン事務所『TSUGI LLC.』をスタートさせます。

 

 

新山さんたちは街に特化したデザイン事務所という意味を込め、自らを「インタウンデザイナー」と称し、多くの企業と協働しています。鯖江に優れた産業が集積していることを全国へ発信するため「商品の良さを視覚化すること」「産地の技術を取り入れた自社ブランドを通して流通網を作ること」「行商スタイルや産地直営店、催事企画など県外での販売を通して鯖江のものづくりの良さを伝えていくこと」「産業観光や雇用を通じ産地の熱量づくりをしていくこと」の4つを循環させているのだそうです。

 

 

具体的な協働事例の1つとして、老舗和紙工房『五十嵐製紙』の新製品開発について紹介されました。

手漉き和紙の需要低下と、国内産原材料の生産量の危機的な減少で、和紙業界の未来は決して明るいとは言えません。五十嵐さんはOEMだけでなく、和紙の可能性を広げる唯一無二の紙を作りたいと考えていました。

 

新山さんはヒアリングを進めるうちに、五十嵐さんの次男が小学校の自由研究として、野菜を使った和紙作りを続けていたことを知ります。これはまさに従来の和紙の領域を超えた新しいジャンルの紙であり、廃棄野菜を活用した持続可能な生産体制など、多くの問題を解決する商品になる。そう直感した新山さんは、五十嵐さんとの協働を始め、2019年に植物由来の紙文具ブランド『Food Paper』を立ちあげました。

 

捨てられるはずの野菜を生まれ変わらせる『Food Paper』は、伝統的な和紙製造の手法を用いることで、技術の継承も担っています。現在は生産体制を整えながらノート、メッセージカード、野菜ストッカーなどの自社製品に加え、ラベルや包装紙などOEM商品生産の受注も進めているそうです。

 

 

 

次に新山さんは、2015年から続けてきた産業観光プロジェクト『RENEW』の事例を紹介しました。

『RENEW』は、毎年10月に鯖江市と越前市で開催されるオープンファクトリーイベントです。助成金に頼らず有志による実行委員会で継続開催し、第1回の来場者は約1,200人でしたが、2019年の第5回目にはのべ30,000人が来場するイベントに成長したといいます。体験によってファンを増やす「アウターブランディング」と、参加事業者の自発的な行動を促し意識を変える「インナーブランディング」の2つが良い循環を生み、勢いのある産地としての認知を向上させ、この事業を成功に導きました。その後、鯖江市の21軒の事業者が工房にショップを併設するなど、産地へ来てもらうことへの意識が高まったといいます。今後は現地とオンラインで同時に開催し、新しい可能性を広げていきたいと語りました。

 

最後に、新山さんは「街や自然に特化したデザイナーが増えることにより、大分のデザイン力、地域力が上がる」と、大分のデザイナーを激励しました。

「物事を整理し、構造を計画し、正しい方向に最適化することこそがデザインの本質である」という新山さんの信条に触れ、持続可能で創造的な産地を目指す取組とその成果を知り、多くの学びを得られる講演でした。

 

おおいたデザインエイド2020 (https://oita-designaid.jp/)

SUGI (https://tsugilab.com/)