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事例紹介

2018.08.09

建物が積み重ねてきた時間を価値に! 『大分銀行赤レンガ館』

大分市府内町の『大分銀行赤レンガ館』が2018年3月にリニューアルオープンしました。竣工から105年の歴史を持つこの建物のリノベーションを手がけたのは、大分市を拠点に活躍する一級建築士・光浦高史さんです。2者の協働のプロセスや手応えなどを『大分銀行』総合企画部の大嶋さんにお伺いしました。

 

『大分銀行赤レンガ館』は、明治43年に旧二十三銀行本店として着工し、大正2年に竣工しました。東京駅なども手がけた辰野金吾氏による設計で、大分市に残る唯一の明治時代の洋風建築であり、国の登録有形文化財にも指定されています。

戦時中には空襲を受けたものの焼け残り、戦後に大掛かりな改築が施され、『大分合同銀行本店』として利用されました。その後、『府内会館』の名のもと貸事務所として活用され、平成5年に『赤レンガ館』という名称で生まれ変わり、『大分銀行』の支店が入っていました。平成27年に支店部分を閉鎖、事実上の空き店舗として3年の時を経て、今年3月、大規模な改修がおこなわれ、地域商社『Oita Made』や『タウトナコーヒー』、ATMコーナー、イベントコーナーなどを備えた新たなスペースとしてオープンしました。

 

大分のいいモノ・コト・ヒトを集めて紹介する地域商社『Oita Made』本店では、大分県産の選りすぐりの商品約140商品を販売している

 

大分を代表するスペシャルティコーヒーショップのひとつ『タウトナコーヒー』では、軽食やアルコールも提供している

 

『大分銀行』は、「地域密着型金融」というコンセプトを掲げています。今回のリニューアルにあたっても、そのコンセプトを重視したと大嶋さんは話します。「『赤レンガ館』は弊行が誇る建物の1つです。この建物が積み重ねてきた時間は、欲しいと思っても手に入るものではありません。そのような価値を持つこの建物が地域の賑わいを創出し、創造的な思考や人材の出会いの場としての“クリエイティブ・ハブ”の役割を果たすことをリニューアルの目的とし、それに共感していただける県内の建築士を探しました」

 

大分銀行 総合企画部の大嶋晃司さん

 

そこで『大分銀行』が白羽の矢を立てたのが、大分市を拠点に建築士として活躍するDABURA.m株式会社 の光浦高史さんでした。

「大分の街やこの建物が積み重ねてきた歴史と出会える空間にしたい、というのが光浦さんから提案されたコンセプトでした。我々の狙いやイメージをしっかり汲み取ってくださったことに感銘を受け、協働させていただくことになりました」

 

光浦さんが提案した空間デザインのポイントの1つが、「入った瞬間に歴史に触れ感動を生み出す空間づくり」です。そこで、本来の構造体そのものが見えるよう、これまでボードやモルタルで覆われていた天井の梁や柱、レンガの壁面などを露出させました。極力新しいものは付加せずありのままを見せる「引き算の発想」で、この空間の本来の質と大きさ、そして何より歴史の積み重ねを実感することができます。

 

 

 

 

 

 

空襲で焼けた木レンガが残る壁面や古い柱の傷が、この建物が刻んできた歴史をありのままに物語る。

 

 

「ここだけの話ですが、古いレンガや梁は結構汚れていましたし、このままお客さまにお見せして本当に大丈夫なのかなって、施工中は心配していたんですよ」と笑って話してくださった大嶋さん。「でも、そんな心配は無用でした。足場や脚立が取り払われて、全体像が見えたときには感激しましたね。お客さまからも好評で、『この建物の歴史的価値がよくわかる』とお褒めいただいています」

 

 

平成の改修で造られた大理石の時計の文字盤は、銀行の営業時間を示す意匠となっている

 

 

光浦さんはリノベーションだけでなく、店舗のデザインも手がけました。大分県産の杉と竹にこだわり、素材の質感を活かした空間づくりが徹底されています。また、卓袱台を連想させる円形の展示台が複数設置され、店内でのお客さまの回遊性を高めているのも特徴的です。

 

 

円形の展示台は日田杉で作られている

 

レジカウンターには別府竹細工のスクリーンを使用

 

 

今回のリニューアルの手応えを大嶋さんはどのように感じていらっしゃるのでしょうか。

「府内五番街を始め、地域の方々が非常に喜んでくださっているのがとても嬉しいです。このエリアの“玄関口”とも言える『赤レンガ館』が事実上の空き店舗となっていたことで、地域の方は寂しい思いをなさっていたのではと思います。街の“玄関口”が開いたことで、街に賑わいが少しでも戻るよう貢献したいですね」

 

リニューアルオープンの日には、用意していた記念品が数時間でなくなってしまうほど、想定以上の賑わいを見せました。その後も日々さまざまな人がここを訪れていると言います。

「若い人も多く来てくれています。『インスタ映えする!』と女子高生も来てくれるんですよ。また、高齢の方が思い出を語りに来てくださることもありますね。『空襲のときもこの建物は残ったんだ』とそのときの様子を話してくださったり、銀行OBが『昔ここで働いていたんだ』と訪ねてくれたり。特徴的な建物なので、観光客や建築関係の方も多く来てくださっています。」

 

 

 

 

当初の狙いどおり、幅広い年代の人々で賑わう場として再生した『赤レンガ館』。最後に、この建物に込めた思いを大嶋さんに伺いました。

「単に利益だけを追求するのであれば、この建物を東京や外資の大手飲食店に丸ごと貸すというアイデアもありますよね。でも、私たちは地域のための銀行です。地域の方々に必要とされて生まれ、地域の方々に支えていただき、今があります。地域のための銀行としての使命を全うする。この建物は、その歴史や思いを体現してくれていると思います」

 

明治、大正、昭和、平成、そしてその先へ。街の歴史を刻んできた『赤レンガ館』は、地域に密着した場所として、これからも新たな時間を積み重ねていきます。

 

 

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大分銀行赤レンガ館

住所:大分市府内町2丁目-2-1

電話番号:097-538-7617

https://www.oitabank.co.jp/atm/akarengakan/

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