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CREATIVE PLATFORM OITA

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事例紹介

2020.08.27

アートで地域の課題解決を目指す『鬼塚電気工事 株式会社』 『2019年度メセナ活動実態調査』報告会レポート

2020年8月5日、『公益社団法人 企業メセナ協議会 (以下、企業メセナ協議会)』主催による『2019年度メセナ活動実態調査』報告会が、東京都渋谷区のヒカリエホールにて開催されました。この報告会では、全国のメセナ活動に取り組む企業3社による発表がおこなわれ、2018年にクリエイティブ相談室を活用した大分県大分市の『鬼塚電気工事 株式会社』も登壇しました。

企業による芸術文化支援を意味する「メセナ活動」。その考え方は、企業の社会的責任の一環であるCSR(Corporate Social Responsibility)から、企業の強みを活かして社会的課題を解決し、経済的価値と社会的価値を同時に実現するCSV(Creating Shared Value)へと移行し、社会全体をより豊かにするための考え方へと大きく変化しています。さらに近年は、その意識が世界規模の課題解決へと広がり、持続可能な社会を実現するための国際目標SDGsへと発展しています。クリエイターとの協働で電気工事の領域から地域の課題解決を目指す、『鬼塚電気工事 株式会社』の『プロジェクト ONICO』の取組は、これらの観点から全国のメセナ活動のなかでも大きく注目を集めています。

 

報告会は、近年のメセナ活動の実態に関する調査結果報告から始まり、「新型コロナとメセナのこれから」と題した『(株)ニッセイ基礎研究所』の吉本光宏さんの講演では、調査報告とあわせメセナ活動が今後担うべき役割が述べられました。メセナの原点は文化・芸術の本質的価値に投資することですが、今後は企業と文化・芸術がパートナーシップを組んで社会課題にアプローチする、より社会的インパクトの大きなメセナ活動=「社会的インパクトメセナ」が求められると吉本さんは考察します。「社会的インパクトメセナ」の活動は、より多くの領域に影響を及ぼすことから、社会全体を豊かにし、企業にとっても投資以上の大きなリターンが期待できると結びました。

 

 

続いて、芸術・文化を通じて地域活性や社会課題に取り組む「社会的インパクトメセナ」の活動事例として、『株式会社 ベネッセホールディングス』『鬼塚電気工事 株式会社』『株式会社 東急文化村』の3社が発表しました。

 

『鬼塚電気工事 株式会社』尾野文俊社長による事例発表

 

『鬼塚電気工事 株式会社』は冒頭で、尾野文俊社長が大分県における文化芸術やクリエイティブの機運が醸成されている背景について紹介しました。その舞台裏には、『鬼塚電気工事 株式会社』も参画する大分経済同友会の提言があり、それを基盤に企業とクリエイターとの協働をはじめ、文化芸術を活用した社会の課題解決を図る取組の推進が加速していったという経緯の説明がありました。

続いて、その取組の一環でもある『プロジェクト ONICO』について、営業部長の中上俊明さんがプレゼンテーションしました。

 

『鬼塚電気工事 株式会社』中上俊明営業部長によるプレゼンテーションの様子。 スクリーン右下に映るのは、リモートで参加したクリエイティブディレクター 清川進也さんと、大分県立芸術文化短期大学 美術科 准教授の於保政昭さん

 

このプロジェクトでは、クリエイティブディレクターの清川進也さんとの協働で、災害時の電気供給機能も備えたスマートフォンや携帯電話の無料充電ステーション2基を制作しました。大分市の中心市街地に設置したところ、2019年には140日間で7万人の利用があったそうです。現在も大分県立芸術文化短期大学と協働を重ねており、学生にとっての学びの場を創出するだけでなく、社員にとっても学生の新鮮なアイデアに触れる機会となり、相互に影響し合うクリエイティブな人材育成にも繋げています。また、今後はウィズ/アフターコロナ時代の課題解決を目的に検温ステーションの制作を企画しているそうです。

 

プレゼンテーションにはクリエイティブディレクター 清川進也さんと、大分県立芸術文化短期大学 美術科 准教授の於保政昭さんもリモートで参加され、この協働におけるそれぞれの思いをお話しされました。清川さんは「地域に根付く企業や愛情や情熱を持った市民のエネルギーに、クリエイターの力が掛けあわせることで、地域ならではのクリエイティビティが生まれる」と述べました。

 

無料充電ステーション設置風景

 

このプロジェクトが大きく評価されているのは、企業が芸術文化を支援する従来型のメセナ活動ではなく、社会のなかで必要とされる企業に成長するための取組をクリエイターとの協働によって実践しただけでなく、活動を通じて社員の自発性を引き出し、現在もなお地域や大学などを巻き込みながら継続・発展しているという点です。会場ではプレゼン終了後に感想や激励の声を直接伝える方も多く、その活動への関心の高さを実感しました。

 

最後は、萩原なつ子さん(立教大学社会学部・大学院21世紀社会デザイン研究科教授)をモデレーターに、質疑応答とディスカッションがおこなわれました。

 

ディスカッションの様子

 

『株式会社 ベネッセホールディングス』の坂本香織さんは、メセナ活動には「企業が地域とともに歩むパートナーとしての意識を持ち、丁寧に時間を重ねながら課題を解決していくことが重要」と述べられました。また、『(株)東急文化村』代表取締役社長の中野哲夫さんは「地球温暖化や災害に加え、新型コロナウイルスの影響で企業にも変化が起きている。自社の利益を追求するだけでなく、地域と足並みを揃える意識がますます高くなっていくだろう」と述べられました。

『鬼塚電気工事 株式会社』の尾野さんは『プロジェクト ONICO』が立ちあがった背景に、大分県の推進力や『CREATIVE PLATFORM OITA』の中間支援があったと述べ「今後、企業がいかに社会的価値を高めていくかは全国の中小企業に共通する課題である。大分県のように、企業とクリエイターの協働による新たな価値創出への挑戦を促進する取組は、全国的に求められていると感じる」と発言しました。これに対して『(株)ニッセイ基礎研究所』の吉本さんは「『CREATIVE PLATFORM OITA』は全国的にも稀有な事例。1つひとつの取組は決して大きくはないが、それらが集積して大きな潮流が生まれている。この大分県独自の取組をもっと全国に向けて発信してほしい」と激励されました。

 

 

『鬼塚電気工事 株式会社』の尾野さんは報告会終了後に、大分経済同友会や自社の取組を総括して「中小企業が力を合わせることで、地域を変えることができる。地方の都市で小さい都市であればあるほど、その実現性は高くなる」と振り返りました。

 

報告会に参加した『CREATIVE PLATFORM OITA』編集長の山出淳也は、新型コロナウイルスの影響でさまざまな困難や課題が露呈している、このような時代だからこそ、より良い未来を想像するイマジネーションの力が重要だと言います。物事を動かすためには、企画や提言の力も重要ですが、触媒や繋ぎ手になる人材の存在が不可欠です。メセナ活動によって、新しいものを生み出していくための旗振り役として地域に貢献していくことが、これからの企業の役割となりつつあることを感じました。

 

最後に、芸術・文化による災害復興支援を必要とする地域に迅速に対応できる仕組として企業メセナ協議会が立ちあげた『GBFund (ジービーファンド)』について紹介します。この基金は、2011年の東日本大震災発災をきっかけに設立された、芸術・文化による復興支援ファンドです。寄付者とともに、被災者・被災地を応援する目的でおこなわれる芸術・文化活動や、被災地の有形無形の文化資源を再生する活動を支援しています。より社会的なインパクトのある活動を支援対象としており、2016年4月には熊本・大分の震災を、2020年は新型コロナウイルスを対象災害として対応しています。企業からの寄付も受け付けていますので、「社会的インパクトメセナ」の第一歩として支援をご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

公益社団法人 企業メセナ協議会 (https://mecenat-mark.org/)

GBFund (https://culfun.mecenat.or.jp/grant/gbfund/)