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事例紹介

2019.10.24

企業や地域と協働する「産官学連携」で、新たな価値を作り出す立命館アジア太平洋大学(APU)

2000年に大分県別府市に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)は、留学生と日本人が半数ずつ在籍する国際大学。その多様性を活かして、県内外企業との協働によるインバウンド需要を視野に入れた商品開発や、国際的な視点でのマーケティングやコンサルティングなど、ビジネスに直結するさまざまな活動を展開しています。
今回はリサーチ・オフィスの篠﨑裕二さんと、事業課の大嶋名生さんに、APUらしさを活かした企業との協働事例や、今後の展望などを伺いました。

 

APUは『THE世界大学ランキング 日本版2019』の総合順位で、私立大学では西日本で第1位、全国でも第5位に選ばれました。開学からわずか20年で、このように高い評価を得た理由について、事業課の大嶋名生さんは「圧倒的な多様性だと思います。学長の出口はつねづね『APUは若者の国連であり、小さな地球』と言っています。海外の大学と比べても稀有な多文化環境で学び、成長できることが評価されているのではないでしょうか」と語ります。

 

近年APUでは、この多様性という最大の特徴を新たなビジネス創出に活用しています。なかでも注目を集めているのが『ハラールはちみつ醤油』です。この商品は、APUとメーカー、投資会社の3者による相互連携協定のもとに開発されました。

 

開発の経緯について、リサーチ・オフィスの篠﨑裕二さんにお伺いしました。
「APUは2015年に、大分銀行と投資会社の株式会社インスパイアから支援を受けて『ムスリム研究センター』を設立しました。ここではムスリム文化との共生のあり方や地域創生にも資するモデルの創出を模索する、実践的な研究もおこなっていました。
フンドーキン醬油株式会社は、インバウンド需要への対応や海外への販路拡大を視野に、ハラール醤油の開発をしていました。2016年に『ムスリム研究センター』のサポートでテイスティングを実施し、その結果を受けて、2017年にAPUとフンドーキン醬油とインスパイアの3社で連携協定を締結し、本格的な取り組みがスタートしました」

 

リサーチ・オフィスの篠﨑裕二さん

 

篠﨑さんの所属するリサーチ・オフィスは、この事業のなかでどのような役割を担ったのでしょうか?
「リサーチ・オフィスは、研究の支援をする部署です。研究というのは、今までなかったものを見つけたり作り出したりすることです。この『ハラールはちみつ醤油』の開発も、企業と一緒に新しい価値を作り出す共同研究という研究活動です。学生の力と、研究者としての教員や企業の専門性が融合することで、非常に力強い活動ができたと思っています」

 

一方、2018年に新設された事業課は、企業と在学生や卒業生との連携の支援・促進をミッションとしているそうです。企業との連携によって、学生にはより実践的な学びによる成長や、研究の機会が得られます。また、APUは国際大学ならではのネットワークを活かし、海外進出を視野に入れたマーケティング調査や、国際的な視点でのコンサルティングなどを企業に提供することが可能です。
『ハラールはちみつ醤油』の事例でも、このような相互のメリットが合致したことで、連携協定の締結に至りました。

 

「リサーチ・オフィスは研究者の研究力強化と研究の発信を軸としたオフィスです。その手法の1つとして、当然、大学と企業とが連携することもあるわけです。また事業課は企業連携を支援することが役割ですので、こうした連携事業の窓口となって、リサーチ・オフィスや教員の取りつぎをすることもあります。
連携の形態はさまざまですが、企業からの研究受託や、マーケティングなどの実証実験を受託する形式で進めることが多いです。企業としては費用が発生しますが、世界中から集まったAPU留学生や教員の知見によって、社内では出てこないアイデアなどを得ることができます」と大嶋さん。

 

事業課の大嶋名生さん

 

『ハラールはちみつ醤油』の開発では、まず研究に関わる教員を決め、学生は公募によって集めました。この事業はゼミの活動や授業の一環ではないので、学生にとっては課外活動となります。それでも熱意を持って参加を申し込んだ学生たちは「国際学生とせっかく一緒に食事をするのに、宗教・文化の違いで食べられないものがある。その問題を解決したい」「商品開発のプロセスに関わりたい」など、各自が明確な動機を持っていたそうです。

 

「フンドーキン醬油は技術力もあるし開発力も高い企業です。でも、インバウンドや海外進出を見据えたときに、どのような醤油であれば外国人にも受け入れられるのかがわからないとおっしゃっていました。そこでAPUのサポートでテイスティングを実施したのです」と篠﨑さん。
このテイスティングには、なんと800人もの学生が参加したそうです。大嶋さんは「全学生の半数が90カ国・地域を超える留学生、そして教員の半数も外国籍というAPUだからこそ、これほど大規模なテイスティングが実現できるのです。以前も企業のマーケティング調査に協力をしたことはありましたが、大々的に実施したのは、開学以来、初めての試みでした」と語ります。

 

このテイスティングの結果、甘い醤油が人気ということはわかりましたが、甘みを出すのにもさまざまな方法があります。そこでイスラム教の教典「コーラン」で体に良いものとして紹介されているはちみつならば、世界的にも健康的な食材として知られているし、ムスリムを含む各国の人々に受け入れられるのではないかというアイデアから、『ハラールはちみつ醤油』のストーリーが設計されました。
商品完成後は、販売戦略や販路の拡大にも学生が関わっているそうです。

 

 

「なかなか他の大学には真似できない、知識や人的資源を活用した事例です。学生や研究者の成長にも繋がりましたし、地域貢献・社会貢献にも資する事例なので、積極的に広報をしています」そう大嶋さんが語る通り、この連携事業は多くのメディアにも取りあげられ、安倍総理が座長で内閣府主催の「まち・ひと・しごと創生会議」でも、産官学連携による地域活性化の事例として報告されたそうです。

 

もう1つのAPUの代表的な商品開発の事例に『世界の出口カレー』があります。この商品は、APUのカフェテリアの人気メニューをもとに開発されたものです。
「開学初期、タイの学生がホームシックにかかったときに、ふるさとの味を提供してあげたいと考えた当時のカフェテリアの店長が、タイの学生と一緒にこのカレーを開発しました。それを大分県のベンチャーである株式会社 成美と、APU生協、そしてAPUとが協働してチューンアップしたのが、現在販売している『世界の出口カレー』です。今年の春にハラール認証を取得しました。APUらしさを活かした大分発コラボ商品の好事例だと思います」と大嶋さんはこの商品が誕生した背景を振り返ります。

 

 

APUの企業連携のあり方は、商品開発のみにとどまりません。企業などで働く社会人向けに、APUキャンパスで行う研修プログラム「GCEP(Global Competency Enhancement Program)」は、国際色豊かで多様な価値観が共存するAPUの環境で、異文化理解力を深め、グローバル展開に必要な力を養うプログラムです。いわば学生が企業などで就業体験を行う「インターン」のように、社会人がAPUで学生になって学ぶ「逆インターン」。派遣社員は経済やマーケティングなどの科目を英語で受講し、社員1名に多国籍の留学生5名がバディとなります。キャンパス内の国際寮で、2ヶ月にわたって24時間英語付けのキャンパスライフを送るユニークなプログラムで、社員にとっても多国籍のネットワークづくりが可能となるそうです。

 

世界的にも類を見ないほど多国籍で多文化な環境で学ぶことができるAPUは、その特色を活かし、これまでに多くの企業と連携し、新たなビジネスを創出してきました。これらがモデルとなり、グローバルな事業展開を目指す企業の人事・研修担当者から、研修プログラムの問い合わせも増えてきているそうです。

 

「商品開発のご相談をいただいても、課題の本質に応じて、2ヶ月間の研修プログラムの社員派遣として結実する場合もあります。まずは事業課でお話を伺い、ご相談の内容や課題に対して最適な連携のあり方を考え、他のオフィスに繋げるということもしています。事業課は、いわばAPUが社会と繋がるための窓口。企業に限らず、行政や地域の方々も含めた、社会の困りごとに対して、学生や教職員が一緒になって解決策を模索するいわば『社会との連携・コラボ』の窓口です」と大嶋さん。

 

大学にとっては、企業との連携は、学生の成長や研究力の強化が見込める実践的な教育・研究機会であり、企業にとっては国際的な視点で現状を分析し、昨今増大する外国人インバウンドの増加やグローバル化を見据えた海外戦略を立てることができる取組み。APUでは大学一丸となって推進しているからこそ、多様で斬新な視点を取り入れながら商品開発やさまざまなサービス改善にとどまらず、ハラール醤油のように、世に送り出して流通させるまでしっかり伴走する長期的なパートナーシップも実現しています。

 

大嶋さんは今後について、「学生には絶好の教育機会となり、企業のみなさまの課題解決にお役立ちできるのであれば、ぜひ取り組みたいですね。まずはどのようなことでも結構ですので、お気軽に事業課までご相談いただきたいです」と意欲的に語っていました。