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事例紹介

2017.11.30

コンセプトを可視化した時計で理念を共有『潮騒の宿 晴海』

別府市の温泉旅館『潮騒の宿 晴海(せいかい)』は、全室オーシャンビューに露天風呂を備え、地元の素材をふんだんに使用した料理や細やかなサービスで客室稼働率90%という高い支持を得ています。この評価をクリエイターとの協働によって実現したという『晴海』代表取締役である久保力夫さんに、その経緯や思いなどを伺いました。

 

『潮騒の宿 晴海』代表取締役の久保力夫さん

 

『潮騒の宿 晴海』は、もとは大分県遺族会連合会の保養所『青海』でした。久保さんは1988年に、この建物が取り壊し寸前になっているという話を聞き、借り受けてホテル業へと参入しました。その立地を活かし、当時の別府では珍しい海を見渡す露天風呂を造るなど工夫を凝らし、宿泊者の人気を集め、1994年には同宿を買収し増築リニューアルします。それに伴い旅館名『青海』の変更を検討していたところ、遺族会の人々から名前を残してほしいという要望もあり、「青」から「晴」に変え、現在の『潮騒の宿 晴海』に改名しました。

 

この頃、女将から宴会での酔客のマナーの悪さを相談された久保さんは、「この事業を息子や嫁に継がせるべきか」と悩んだ末に、宴会場を失くすという大きな決断をしました。そして買収のために借り入れした費用を完済したことを契機に、久保さんは『晴海』のターゲットを従来の団体客から個人客へと転換していきます。「これが大きな転機でした。営業マンのいない『晴海』にとっては、宿泊したお客様の声がその後に繋がっていくから一番大事なんです。どうしたらお客様がこの宿を選んでくれるのか、喜んで帰っていただけるのかを女将と考え、まず自分たちが泊まりたい宿にしようと考えました」。

 

客室や料理、設備などを見直していたときに、久保さんと女将は陶芸家でプロデューサーでもある中野伸哉さんと出会います。2人はすぐに意気投合し、雑談のように会話を重ねるうちに中野さんは久保さんが客室の掛時計を探していることを知ります。「お客様が時間を忘れてゆっくりと寛げる部屋にしたいけれど、時計がないのも困る。わかりにくい時計のようなものがないだろうか」。この難題を受け、中野さんは『ホワイト・タイム』というコンセプトを提案し、部屋の白い壁に合わせて白の陶器に白い時計針、音のしない秒針を用いて掛時計を製作します。

 

コンセプトを体現した客室の掛時計

 

「客室棟の名称を変更するときも、従業員からの提案はかっこいい名前ばかりでピンとこなかったので、中野さんに相談してみたら『晴れの棟』『海の棟』というシンプルな答えが返ってきたんです。お客様にわかりやすければいいんだって腑に落ちました。やりたいことはたくさんあるけど自分ではそれを言葉にできないから中野さんに相談しているんです。雑談の延長から、宿の現状や課題を鮮明にし、より良い答えを見つける。問題も答えも初めから真面目に考えていたら視野が狭くなります。だから冗談話ができる相手が理想ですね」と久保さんは言います。

 

また、久保さんは従業員の教育にも力を入れており、年に1度、従業員総会を催しています。この総会には中野さんも参加し、従業員が部門ごとに反省や目標を発表し、情報の共有や意識の統一を図っています。この総会では若手従業員に活躍の場を設けたり、ベテラン社員と新人とのチームワークを醸成したりとさまざまな工夫がされています。

久保さんに最近嬉しかったことをお尋ねすると「大分・熊本地震のときに宿泊されていたお客様が、1年後の同じ日にまた泊まりに来てくれたこと」といいます。別府でも大きな揺れがあり、宿泊客の不安や危険を回避しようとした従業員の必死の対応に感激し、再訪してくださったのだそうです。

 

記念日に訪れる方も多い

こうした社員教育によって培われた細やかな配慮も『晴海』がお客様の支持を得ている理由の1つです。浴衣や空間作り、アメニティやオプショナルサービスなど、『晴海』では『ホワイト・タイム』の理念に基づいて、さまざまなニーズに対応しお客様自らが選べるサービスを生み出し続けています。


潮騒の宿 晴海

住所: 大分県別府市上人6-24

電話番号: 0977-66-3680

公式HP: http://www.seikai.co.jp/index.html