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CREATIVE PLATFORM OITA

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事例紹介

2020.02.27

企業とクリエイターとの出会いの場を創出する『東京ビジネスデザインアワード』

2012年度から開始した『東京ビジネスデザインアワード』は、企業とクリエイターのマッチングによって創出されるビジネスを顕彰するデザインコンペティションです。東京都内のものづくり企業の優れた技術や特殊な素材から新しい可能性を見出し、そこにクリエイターならではの視点やアイデアをかけあわせることで生まれる新たなビジネスを支援することで、産業活性化を目指し東京都が主催しています。
このアワードでは、公募によって集まった企業がそれぞれの持つ特殊な技術や素材を「テーマ」として公示し、クリエイターを対象に活用のアイデアを募ります。審査委員と事務局による選考を通過した提案のなかから、企業が選んだクリエイターと協働してプロトタイプを制作し、審査会に臨みます。企業は社内では浮かばなかった新規性のあるアイデアを得ることができますし、実践を通じて商品開発や製品化のプロセスを学ぶことができます。さらに審査会終了後も、1年間継続して審査委員と事務局から事業化・商品化・販路拡大などに対するアドバイスや支援を受けることができるということも、参加の大きなメリットです。

 

『東京ビジネスデザインアワード』審査委員長の廣田尚子さん

 

『東京ビジネスデザインアワード』の審査委員長を務めているデザイナーの廣田尚子さんは、この事業について「今までにないアワードを試行錯誤しながら作ってきました」とコメントしました。参加企業は書類審査と面接で選考されます。より事業化の可能性の高い企業に参加してもらえるよう、経営状況や組織の内情も踏まえるなど、選考の基準は回を重ねるごとにブラッシュアップされていったのだそうです。
また、より実現性の高いアイデアを提供できるよう、クリエイター向けに工場見学・会社訪問を実施しています。ものづくりの現場を視察し、技術だけでなく企業の実態を把握することで、経営戦略まで踏み込んだ提案が可能になります。そのため、クリエイターは単独ではなく、さまざまな分野の専門家が参加する多角的な視点を持ったチームで応募するケースも多いそうです。

 

2019年度『東京ビジネスデザインアワード』の流れ

 

事務局を務める公益財団法人 日本デザイン振興会の桜井綾佳さんは「マッチングが成立したクリエイターと協働してプロトタイプを制作し、提案最終審査会に参加するというのがアワードの流れです。でも、本当に大変なのはそこから先なんです」と語ります。審査会の終了後、企業とクリエイターが本契約を結ぶと、商品の企画・製造だけでなく、申請手続やプロモーション、販路獲得など多くの業務が待っています。デザイナーや弁理士、マーケッターなどの専門家からなる審査委員と事務局は、契約や知的財産権の管理なども含めて、製品が流通するまでのプロセスが円滑に進むよう支援をしているそうです。

 

また、協働にあたってのビジョンを明確にするためのワークショップもおこないます。このワークショップでは、内閣府の経営デザインシートをベースに、廣田さんが中小企業向けにカスタマイズしたものを使用しているのだそうです。
「このシートを活用して、お互いの目指すものや業界としての課題などを共有し、協働のビジョンを自ら導き出してもらっています。このプロセスを経ることで相互の信頼感が高まります。企業にとってクリエイターが、単なるものづくりのパートナーではなく、経営や組織のことも相談できる仲間になっていくなど、いい成果が出ています」と廣田さん。

 

ワークショップで使用するシート

 

ワークショップでは、現状を分析して言語化することで、新たな可能性や課題に気づくこともあるそうです。それをうまく引き出すためには、ファシリテーション能力が重要だと廣田さんは言います。「企業は他者とコミュニケーションを取りながらものを作るという経験があまりありません。コンサルティングや提案のような、形のないものに対価を支払うということへの理解もまだ十分ではないと感じています。企業が持つ技術や素材に価値があるのと同様に、その可能性を引き出す力や、新たなビジネスを創出するためのアイデアにも価値があるという認識をもっと広めていきたいですね」

 

桜井さんは、近年の傾向として、単にものを作って終わりではなく、ビジネスをデザインするアワードという趣旨がやっと認識され始めて、新規事業開発や新たなビジネスモデルを模索している企業の応募が増えてきていると分析します。「優れた技術を持っているけれど、それをどう活用したらいいかわからないという企業は多いです。『東京ビジネスデザインアワード』はものづくりコンペではないので、必ずしも製品の出来栄えや売れ行きが評価されるわけではありません。たとえば、技術の高さや活用例を示したり、製品化に取り組むフットワークの軽さや組織力を知ってもらうために商品を開発するという考え方もあります。もっと柔軟に、技術や素材をビジネスモデルに活用するためのアイデアの実現に挑戦していただきたいです」

 

最後に、今後のビジネスデザインに期待することを廣田さんに伺うと、次のようにお答えいただきました。
「私はグッドデザイン賞の審査委員でもあるのですが、全国的に見てもまだまだビジネスモデルをクリエイターとともに作りあげた事例は少数です。クリエイターは魔法使いではないとよく言われるように、デザインしてもらったものをそのまま作ればうまくいくなんてことはありません。『東京ビジネスデザインアワード』はクリエイターと企業が一緒にビジネスを作っていくということを体験していただくための仕組みです。デザイン経営とは、自分自身が走り続けるための外部エンジンとしてデザインを経営に取り入れること。より豊かで自走可能なビジネスモデルを構築するために、ぜひ積極的にクリエイターの視点を活用していただきたいですね」

 

 

企業とクリエイターとの出会いの場を創出し、そこで起きる化学反応をより大きなものにするための環境を整えている『東京ビジネスデザインアワード』。この事業を通じて輩出された商品は、過去8年間で15件にものぼります。2019年度のアワードは、2月5日の審査会を経て最終段階に突入します。ここで生み出された商品が市場に出ていくことで、その開発背景も周知の機会を得ます。こうして協業の意義を知ってもらうことで、いずれはこのアワードのような仕組みがなくてもビジネスモデルの構築にクリエイターが参入することが当たり前の時代が訪れるかもしれません。そんな可能性に勇気付けられるとともに、大分県でもより良い事例を発信していけるよう、CREATIVE PLATFORM OITAも企業とクリエイターとの協業をしっかりサポートしていきたいと思いを新たにしました。