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事例紹介

2020.03.05

メッセージを読む時間を演出するアロマキャンドル付きカード『tetote』

東京都江東区の『東洋工業 株式会社』は、昭和22年に鉄工所として創業し、戦後に海外への輸出商品としてキャンドル製造を始めました。現在は長年培ってきた技術を活かし、さまざまな形状や香りや色のキャンドルを製造・販売しています。

 

「20年ほど前からアロマキャンドルがブームになり、主軸商品となっていきました。それに伴い、アパレル店や雑貨店などからご注文をいただき、OEMでの生産を請け負うことも増えました。そこで香りに力を入れた事業展開を目指し『グラーストウキョウ 株式会社』を立ちあげたんです」
そうお話しいただいたのは、東洋工業とグラーストウキョウの代表取締役社長を務める藤井省吾さん。藤井さんは従来のキャンドル事業から、2013年にアロマ・フレグランス事業を切り分け、2つの会社の代表となりました。
藤井さんはこの2社の技術を活用するため、2018年に『東京ビジネスデザインアワード』に参加し、両社ともに優秀賞を獲得してクリエイターと協働した商品を同時に2つ開発します。グラーストウキョウではエッセンシャルオイルを配合した香りの絵の具『香の具』を開発しました。

『香の具』についてはこちらをご覧ください。

 

東洋工業では、「キャンドルのある生活」を広めていきたいと、さまざまな商品を通してライフスタイルを提案してきました。「キャンドルの火を見ていると、心が安らぐじゃないですか。でも日本では日常生活のなかでキャンドルを使用する習慣がありません。インテリアとして部屋に飾られてしまいがちで、実際に火を灯してご利用になるお客様は意外と少ないんですよ。だから、キャンドル本来の楽しみ方である、火を灯すという行為を促せるような商品を作りたいと思っていました」

 

東洋工業 株式会社 代表取締役社長の藤井省吾さん

 

『東京ビジネスデザインアワード』への参加を機に、協働パートナーとなったクリエイターはルーラデザインスタジオ グラフィックデザイナーの中村知美さんでした。藤井さんと中村さんは、キャンドルは贈り物としての需要が高いということに着目し、気軽に贈りあうことができるキャンドルの開発に乗り出します。

 

『東京ビジネスデザインアワード』では、パートナーを決定してからプロトタイプの制作に取り掛かり、試作品を持って審査会に参加するまでの期間が2ヶ月弱しかありません。その期間で、お2人は定形郵便で送ることができるカードとキャンドルのセットを試作します。開発にあたり苦労した点や工夫した点を藤井さんに伺いました。

 

「ロウが触れたときに油分が浸みて汚れないように、封筒の内側にはオリジナルの加工をしています。また、美観だけでなく、安全性を高めることにもいろんな工夫があります。なかでもキャンドルの形状の調整には苦労しました。
キャンドルは芯の付け根のところが突起しているのですが、これによってロウが垂れにくくなり、着火しても安全にご利用いただけるんです。この突起部分のバランスの調整には試行錯誤がありました。より安全性を高めるため、約30分経ったら自動消火する加工もしています。カードそのものにも防炎紙を使用しているので、万が一使用中にキャンドルが倒れても燃えません」

 

調整に苦労したというキャンドルの突起部分

 

そのほかにも、ポストに投函してもキャンドルが破損しないようパッケージの形状に検討を重ねたり、夏場にポストのなかでキャンドルが溶けてしまわないよう実証実験を重ねたりと、商品が完成するまでのプロセスには、さまざまな創意工夫があったそうです。

 

こうして完成したキャンドル『tetote』の用途について、藤井さんにご説明いただきました。
「まず箱からキャンドルを取り外し、箱の裏面にメッセージを書きます。再び箱にキャンドルを納めて付属の封筒に入れ、94円切手を貼って投函します。
受け取った人は箱からキャンドルを取り外し、メッセージが書かれた面にあるスリットにキャンドルを差し込んで、火を灯します。すると、この箱がスタンドになり、キャンドルの光でメッセージを読むことができるんです」

 

パッケージがカードになり、さらにキャンドルスタンドにもなる

 

キャンドルは全3色、3つの香りで展開されています。「ピンクが桜、イエローが柚子、グリーンが緑茶です。海外に住むお友達に送るシーンもイメージし、和の香りのアロマキャンドルにしました」と藤井さん。海外発送を見据え、船便などにも対応できるよう、耐久性の実験を重ねているそうです。

 

受け取る人のことを思いながら香りを選び、送ってくれた人のことを思いながらキャンドルの灯りと香りを楽しむメッセージカード『tetote』。メールやSNSでのコミュニケーションが主流になっている現代においても、大切な人に特別な思いを伝えたいときには、手書きの文字を送りたいもの。それを受け取った人がメッセージを読む時間まで演出できるのが、アロマキャンドル付きメッセージカード『tetote』です。東洋工業のキャンドルの開発技術と、グループ会社のグラーストウキョウの調香技術に、デザイナーのアイデアが加わり、送ってうれしい、もらってうれしい、新しいコミュニケーションツールが生まれました。

 

 

藤井さんは「紙でできたカードとの組み合わせなんて、キャンドルメーカーにはない発想でした」とクリエイターとの協働を振り返ります。
『東京ビジネスデザインアワード』に参加したことで、業界内にはないクリエイターからの新たな視点やアイデアを得た東洋工業は、それを実現するためにたくさんの課題を乗り越えて、新たな商品を完成させました。藤井さんのお話には、クリエイターとの協働にあたり、企業は業界の常識を疑い、どうすれば実現できるのか考え抜くという姿勢の大切さを感じさせていただきました。