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事例紹介

2020.06.04

デザインと印刷、それぞれの強みを活かしたツールで飲食店を応援

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、人の姿が消えた市街地の風景が世界各国のメディアで報じられるようになりました。「新しい生活様式」として、不要不急の外出を控え、3密を避けることが呼び掛けられるなど、私たちの日常は徐々に変化しつつあります。このような状況のなかで、飲食店の利用形態としてテイクアウトやデリバリーが新たな選択肢となりました。

 

今年の3月上旬、大分県でも新型コロナウイルスの感染者が出たことで、自粛ムードが一層強まると、飲食店は時間短縮営業や臨時休業を余儀なくさせられました。

大分県内を拠点に活動するデザイナー『パラボラ舎』のたなかみのるさんは、街なかから人が減ったという話を取引先の飲食関係者から聞きました。世界の各都市と同じことが大分県下でも起きていることを知り、たなかさんはこの状況が長期化するのではないかと感じていたそうです。そこで、デザインの力でなにか応援できることはないかと考え始めました。

 

大分市 府内5番街商店街(2020年5月13日撮影)

 

予想通り自粛生活が長引き、テイクアウトを始める飲食店が増えてきた頃、たなかさんは、もともとテイクアウトに対応していたにもかかわらず、それをアピールしていない飲食店が多いことに気づきました。たなかさんは、「ひと目でその飲食店が、持ち帰りができるとわかるサインがあればいいのに」と思いながらも、それを全面的に打ち出すことは店内飲食の減少に拍車をかけることになるのではないかという不安から、踏み出せないでいました。

そんなとき、大分市内の印刷会社『株式会社 高山活版社』代表取締役社長の高山 英一郎さんと話す機会があり、どうすることが飲食店を応援することに繋がるのか相談してみたそうです。高山さんは「持ち帰りOK」くらいの柔らかい表現ならば、店内飲食の妨げにはならないのではないかと考えを伝え、「端材を活用して印刷するので、飲食店に配布しましょう」と提案しました。

高山さんの言葉に背中を押され、たなかさんは1日足らずでサインをデザインします。データを受け取ると、高山さんも2日ほどで1,200部以上を印刷しました。

 

高山 英一郎さん(左)  たなかみのるさん (右)

 

たなかさんは3月20日には無料で使用できるサインのデータをSNSで公開。3月25日からはたなかさんと高山さんで、印刷したサインを配布して回りました。

配布先の大分市の府内5番街商店街では、大分市の商店街全体にサイン使用を呼び掛けてくれたそうです。また、大分商工会議所や大分県商工会連合会からは関係各所に配布するなどの協力がありました。そのほか、ファブラボ大分ではアクリルや木材の端材で卓上用サインを制作し無料で配布するなど、「持ち帰りOK」のサインは街なかに浸透し、次々と使われるようになりました。

たなかさんは「印刷して配布できたことで、お届けするとすぐに掲示していただけました。これは印刷物ならではの強みで、SNSでデータを発信するよりも浸透が早かったと思います」と言います。

 

「持ち帰りOK」のサイン (左)  サインの使い方 (右)

 

たなかさんがデザインしたサインは、テイクアウトを推進するキャンペーンや、大分県内のテイクアウトができる飲食店を紹介するWebサイトやSNSなどにも展開されていきました。

「はじめはサインにハッシュタグを書いて、SNSで検索できるようにしようかとも考えました。しかし、そういうキャンペーンは盛りあがりが早い一方、飽きられるのも早いです。ウイルス感染拡大予防の呼びかけは一過性の流行ではありませんから、長く利用できて役に立つものにしたかったんです」と、たなかさん。さらにデザインについては「公共の標識のようにひと目で情報が伝わり、誰もが自由に使えるということを意識し、汎用性が高く、用途に合わせて活用しやすいデザインにしました」と話してくれました。

 

サインは店頭や店内に貼られ、ひと目で持ち帰りができるとわかるようになっている

 

最後にたなかさんは「前例のない事態に困っている飲食店は多いと思います。このサインを通じて、応援者の存在を感じてもらえたらうれしいです。苦しい状況がもうしばらく続くかとは思いますが、経営をアップデートする機会と捉えて、ふんばっていただきたいです」と飲食店へのエールを送りました。

高山さんは「この取組をメディアで知った飲食店が、サインの使用を希望しているという話を聞きました。これから梅雨に備えて、耐水性の紙を使用した屋外掲示用サインを作り、配布を継続していきたいです」と話してくれました。

 

希望する飲食店に配布するため、新たに耐水性の紙にサインを印刷している

 

今回は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために打撃を受けた地域経済を救いたいと考えた、デザイナーと印刷会社との協働についてご紹介しました。お2人は仕事の枠を超え、それぞれの強みを活かしたサインの制作・配布を通じ、飲食店に応援の声を届けました。

緊急事態宣言が解除され、これから町に少しずつ人が戻り始めます。お2人が届けた応援のサインは、以前とは違う新しい生活様式のなかで、ますます浸透していくことでしょう。

 

 

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「持ち帰りOK」サインのダウンロードはこちら https://note.com/tnkminoru/n/n8d5bafe9b93f

パラボラ舎 https://para-base.net/

高山活版社 https://takayama-p.jimdo.com

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