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事例紹介

2018.12.27

独自の技術を活かし、新たな用途開発によって生まれたアイデア商品『WEMO』

『株式会社 コスモテック』は、『東京ビジネスデザインアワード』でマッチングしたデザインコンサルティング会社『株式会社 kenma』と協働し、身に付けるメモ『WEMO』を開発しました。2018年度グッドデザイン賞を受賞し、メディアでも話題になっています。『WEMO』は看護師など現場で働く人たちを想定して開発された、手首に装着するメモです。油性ボールペンで書いた文字を消しゴムで消すことができるので、繰り返し使用できます。

今回は、『株式会社 コスモテック』代表取締役社長の高見澤 友伸さんに、『WEMO』の開発をおこなった経緯と成果、クリエイターと協働する際に必要な条件などについてお伺いしました。

 

東京都立川市に本社を置く『株式会社 コスモテック』は、1989年、高見澤さんのお父様が 50 歳のときに創業しました。10年前に高見澤さんが事業を引き継ぎ、今年で創立30周年を迎えます。高見澤さんに同社の主な事業内容について伺いました。

「我々は、工業用テープのメーカーです。主に、粘着テープを含む機能性フィルムの開発・製造をしています。ビジネスは完全にBtoBで、電子機器メーカーが主な取引先です。工業用テープはニーズが多岐に渡り、自社製品は数百を超えます。現在日本の従業員は40人程度ですが、これは自社内で開発・製造し、自社ブランドで販売をしているメーカーとしては世界最小クラスです。小さなメーカーなりに技術力を活かし、ニッチな商品を作っています。電子機器の内部部品としてのテープや、電子機器メーカーが工場内で使用するなど、一般の人が目にすることのない製品がほとんどです」と高見澤さんは言います。創業者の精神を受け継ぎ、他社には真似できない技術を磨いてきたという『コスモテック』ですが、『WEMO』開発に至るまでには苦難の道のりがありました。

 

 

『コスモテック 株式会社』代表取締役社長の高見澤 友伸さん

 

『コスモテック』の創業から数年後、国内でディスプレイ産業が急成長を遂げます。大手企業が次々と参入し、工業用テープに関 するさまざまな依頼を受けるようになった『コスモテック』は、創業以来の最高益を計上します。

ところが、高見澤さんが社長へ就任した直後、リーマンショックが起こります。日系企業は深刻な打撃を受け、その煽りを受けて『コスモテック』の売り上げは一時は6分の1まで激減。「生き残る方法は2つ。売り先を海外にシフトすることと、新しいビジネスを作ることです。この10年間さまざまな挑戦をしてきましたが、95%は失敗に終わりました。たまたま成功したうちの1つが『WEMO』だったんです。私にとってこれは商品開発ではなく、ビジネスを大きくするためのトライです」と、高見澤さんは言います。

『WEMO』開発のきっかけは、2016年に東京都が主催する『東京ビジネスデザインアワード(TBDA)』に応募したことでした。このアワードは、都内の中小企業の持つ独自の技術や素材を募集し、それらの新たな用途開発によるビジネス提案をデザイナーから募るもの。「15年ほど前に開発した、肌に貼れる特殊転写シールを素材として応募したところ、審査に通ったんです。3社のデザイナーから提案を受けましたが、なかでも『Kenma』の提案は、誰もが思いつくものではなかった」と高見澤さん。

それから半年間、『コスモテック』と『株式会社  Kenma』は、看護現場での活用をイメージし、肌に貼って直接書けるメモシール の開発を進めました。最終プレゼンで優秀賞を受賞し、2社は正式に契約。ビジネス化に向けた協働がスタートします。そのなかで、「現場の最前線で働く人へ向けた『ウェアラブルメモ(身に付けられるメモ)』」をコンセプトに、商品化を行いました。『Kenma』の提案で出展した『国際文具・紙製品展(ISOT)』では、『WEMO』はその新規性とユニークさで、まだ発売前であったにも関わらず多くのメディア取材を受けました。2017年11月に発売を開始すると、約1年で累計10万本を売り上げました。いまは、アメリカとヨーロッパでの販売に向けて、知財管理やパートナー探しなどを進めているところだそうです。

 

発売後は顧客から新たなニーズや用途のアイデアが寄せられるようになった。 また、会社説明会に参加する求職者も増えたという

 

高見澤さんは当初、『WEMO』のことを「面白い商品だけど、売れないかもしれない」と思っていたそうです。それでも開発を進めたのはなぜでしょうか。「損益分岐点としては1万本売れればトントン。仮に失敗したとしても、この規模の投資なら会社は倒れない。重要なのは、リスクを負える範囲を認識していることです。新たなことへ踏み出すとき、失敗はつきものです。なので、失敗を許容する文化を社内で熟成させるか、失敗しても怒られない立場の人がやることですね。ちなみに、うちは後者です」と高見澤さん。

お話を伺っていると、中小企業とクリエイターとのコラボレーションの難しさも見えてきました。「デザイナーと協働するとき、中小企業がまず思いつくのはプロダクトデザインの依頼です。でも、『Kenma』がいつも言っているのですが、大事なのはビジネスデザインなんです。我々は、市場での予想ニーズ、このプロダクトがどういったソリューションになり得るのか、そしてストーリーを作ったプロモーションまで全部教えてもらいました。はじめはそれが理解し難く、そういう目に見えないものに費用を支払うことにためらいがありました。メーカーとクリエイターでは、言語や世界観が違うんですよね。そこをどう尊重し、適切に役割分担ができるか。『WEMO』の場合、売り上げに応じて『Kenma』にフィーを支払う契約なので、彼らとしても実際に売れることが重要です。ですから、ときにはぶつかりながら、全員で徹底的に議論しています」と高見澤さんは言います。

 

「クリエイターと円滑なコミュニケーションを取るために、クリエイティブやビジネスに関するイベントには積極的に参加しています」と語る高見澤さん

 

最後に、クリエイターとの協働に取り組もうとしている企業へ向けたアドバイスをお聞きしました。

「これからは、外部連携がキーワードになると思います。新商品開発に限らず、既存商品であっても外部と連携することで、新しいビジネスと売り上げが生まれる。大事なのは、『面白い』と思える人と出会えるかどうかです。我々もいろんな出会いを重ねる中で、じわじわと豊かな繋がりが広がってきています」そう答える、高見澤さんの笑顔が印象的でした。

外部環境は急激に変化し、中小企業の多くが、常に新しい可能性を探り、トライするかどうかの決断を迫られる時代が来ています。この荒波のなかを進んでいくには、新たな視点で自社の課題や価値を見直し、ビジネスを共に創造できるクリエイティブなパートナーが心強い羅針盤になることを、今回の事例は改めて教えてくれました。

 

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WEMO https://www.wemo.tokyo/
コスモテック 株式会社 https://www.cosmotec.ne.jp/j/j_index.html
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