MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

事例紹介

2019.08.29

平日集客とシニア層に特化した独自のビジネスモデルで成長を続ける『ゆこゆこホールディングス』

旅行を計画するとき、多くの人が利用する宿泊予約サービス。Webや情報誌、実店舗など、多数のサービスが存在するなかで、今回は、平日集客とシニア層に特化したビジネスモデルで成長を続ける『ゆこゆこホールディングス 株式会社』をご紹介します。同社マーケティング部の手島康憲さん、伊藤祐介さん、高橋 充さんに会社を立ち上げた経緯や独自の取組について伺いました。

 

ゆこゆこホールディングスは、温泉旅館・ホテル予約サイト『ゆこゆこネット』と、情報誌『ゆこゆこ』を展開しています。全国約3,500件の旅館・ホテル、20,000プランを掲載し、年間230万人がサービスを利用しているそうです。

 

(左から) 高橋 充さん、手島康憲さん、伊藤祐介さん

 

「平日でも時間を自由に使える世代」をメーンターゲットとして事業を展開しており、同社の全体のサービスの利用客のうち、平日の宿泊は70%以上を占めます。また、平日の時間を比較的自由に使える「シニア世代」も同社のメーンターゲットです。登録会員は約700万人。うちアクティブユーザーである150万人には、2ヶ月に1度、情報誌『ゆこゆこ』を自宅へ無料配送し、温泉地を中心とした旅館・ホテルの宿泊情報を提供しています。通常のOTA (実店舗を持たずにインターネット上だけで旅行商品の取引が完結する旅行会社) とは異なり、情報誌からの電話予約も受け付けていることから、インターネットやパソコン操作に慣れていない年配の顧客などが多く、利用者は50代以上が9割を占めています。

 

こうした特徴的なサービスは、40代以下のファミリー層が中心となる他社の宿泊予約サービスとの差別化に繋がっており、平日の稼働率を上げることが課題の1つである観光地の旅館・ホテルなどを中心に、掲載宿泊施設数は年々増加しているそうです。

 

そもそも同社が、平日集客やシニア層、温泉に特化したのはどのような理由からなのでしょうか?

 

「弊社は2000年に会社を設立しました。新聞広告や折込みチラシなどを中心に宣伝し、会員登録した方には情報誌を無料で郵送しますと呼びかけ、地道に会員を増やしていきました。すると会員は、日常的に新聞を読んでいるシニア層が圧倒的に多くなりました。そうした通常のOTAではリーチできないユーザーを囲い込んでいるところが他者と大きく違う点です」と手島さんは説明します。

 

「平日集客・シニア層」は温泉好きが多いという調査結果も踏まえて事業を展開するなかで、次第に「平日集客・シニア層・温泉」という3つの売りが生まれ、事業の基盤となり、結果的に同社の独自性となっていったそうです。
通常、他社の情報誌は書店で販売され、旅行に行きたい人がお金を出して買いますが、同社の場合は自宅へ情報誌を無料郵送することによって、旅行を喚起する「プッシュメディア」という手法を採用しているそうです。これは同じ情報誌でも他社と異なる特徴です。

 

情報誌『ゆこゆこ』

 

また、宿泊施設への営業方法も他社と異なると伊藤さんは説明します。
「例えば他社の宿泊予約サービスは、宿泊施設の担当者がそのシステムを活用しながら、各々で掲載内容を決めていく仕組なので、どのような内容の商品を並べると平日集客に繋がるのかが分からないまま掲載してしまいがちです。弊社の場合は、平日集客しやすい料理の内容や料金などを具体的に細かく考え、提案しています」

 

 

同社の営業担当者は実際に担当の宿泊施設に何度も泊まり、入口からの導線や階段の数、エレベーターの位置などを調べます。ユーザーからコールセンターに問い合わせがあった際、表には出ていないそれらの情報まで丁寧に案内ができるようにしているそうです。
「他社では、コールセンターの運用コスト削減のため、電話番号を大きく表示していない会社が多いのですが、弊社では、Webサイトのさまざまな場所に表示し、気軽に電話をかけていただけるようにしています」と高橋さんは話します。

 

温泉旅館・ホテル予約サイト『ゆこゆこネット』トップページ

 

ゆこゆこホールディングスは、温泉地の魅力を伝える会社として、観光地だけでなく働く場所としての魅力についても探っていこうという取組も始めています。
2019年6月から、同社で初となるサテライトオフィスとして、別府市の鉄輪エリアにあるコワーキングスペース『a side -満寿屋-』の利用を開始しました。
働き方改革の一環としてもサテライトオフィスを活用し、場所と時間にとらわれない柔軟な働き方や生産性の向上を目的に、社員はサテライトオフィスを働く場所で選択できる制度を提供しています。

 

東京本社ではない場所に滞在し働くことで、温泉地の旅行者や地元の人々とコミュニケーションすることで、日常とは違う人脈や地域とのネットワーク、見識を広げる目的もあるそうです。
「社員には、温泉地でリラックスしながら仕事に取り組んでもらうことで、発想力や集中力を高め生産性を向上させる狙いもあります。事業戦略、事業計画などの提案書を作るという最適な場所の1つになると考えています」と手島さんは説明します。

 

では、全国に数多ある温泉地の中でもなぜ、別府だったのでしょうか?

 

「最初は、社員の労働時間や場所を柔軟に変えていく新しい働き方を推進しようという社長の考えから始まりました。試験的にどこかの温泉地にオフィスを作ろうと考えていたところ、ちょうどプロサッカークラブの大分トリニータとお仕事するご縁をいただき、さらに大分県は『日本一のおんせん県おおいた』というキャッチコピーで観光PRもしているので、まずはここに置いてみるべきだと考えました」と手島さんは言います。

 

「大分県のなかでも鉄輪を選んだのは、昔からの湯治場で貸間といわれる長期滞在宿が数多くある場所だったからです。ちょうどそのタイミングでシェアオフィスがオープンすると聞き、利用させていただくことにしたんです」

 

同社は将来的に、観光客だけでなく、仕事場として温泉地を選択する人を増やすことで、地域全体で平日の長期滞在者を増加させることも視野に入れています。宿泊施設だけでなく周辺の飲食店や生活雑貨を扱う店などの需要も高まるため、温泉地全体の活性化に繋げられるのではないかと考えているそうです。

 

最後に、自社の強みを生かして事業を展開するときに大切にすべきことを手島さんに伺いました。
「他社とは違う立ち位置を見出し、強化してきたから今があると思っています。特に中小企業だと、いきなり大企業と同じことをやっても、資金面や体力面が追いつかないので継続していくのは難しいでしょう。中小企業ならではの強みをどれだけ強化できるかということが、生き残るために大事な部分だと感じています」

 

 

ゆこゆこホールディングスは、ユーザーやクライアントのニーズに寄り添いながら事業を進めるなかで、徐々に生まれた自社の強みや価値を見出し、その価値を強化することで、結果的に他社と大きく差別化をすることに成功しました。
超高齢社会と言われる日本では今後、人生を自由に楽しみたいというシニア層はますます増え、旅行や宿泊に対する趣向も多様化していくことでしょう。そんななか、ゆこゆこホールディングスどのように事業が展開していくのか、引き続き注目したいと思います。