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事例紹介

2017.01.05

福祉×科学でヘルスツーリズムに挑む大分ロボケアセンター

JR亀川駅より徒歩5分の場所にある大分ロボケアセンターでは、最近メディアでもよく目にするロボットスーツ『HAL®(ハル)』の非医療用モデルを用いた科学的フィットネストレーニング『HAL FIT®(ハル フィット)』が受けられます。

 

『HAL®』は、世界初のサイボーグ型ロボットです。身体機能を改善・補助・拡張・再生するロボットとして、事故や病気などで下肢に障がいを持つ方や、高齢により脚力が弱くなった方の治療や動作、歩行トレーニング支援を目的として開発されました。

『HAL®』は、装着者の意思に従って動作します。人が身体を動かすときに、脳から神経を通じて筋肉に送られる信号を検出することにより、装着者の意思を反映した動作をアシストすることができるのだそうです。

 

大分ロボケアセンター 代表取締役の安永好宏さんは、『HAL®』が紹介されたドキュメンタリー番組を見たのがきっかけで、大分ロボケアセンターの親会社である茨城県つくば市のCYBERDYNEに入社。総務人事や経営企画を経て、営業を担当し『HAL®』の普及・販売強化に努めました。

実際に使用し、効果を実感した医師たちの応援も影響し、現在『HAL®』は全国で約180の医療機関や福祉施設に導入されているそうです。

 

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大分ロボケアセンター 代表取締役 安永好宏さん

かつて医療機器の業界に関わった経験から「日本は新しい医療機器に対して寛容ではなく、発展を遂げにくい環境だった」と、安永さんは指摘します。

その言葉の通り、現在国内で使用されている医療機器のほとんどが輸入品であり、日本の法律においては保険適用外になることも多く、流通が困難なのだそうです。

 

そのような状況の中、『HAL®』は当初から医療用途を目指して研究開発されてきました。

まずは福祉用モデルを、障がい者や高齢者の動作を支援する機器として福祉施設や医療機関にレンタルし、臨床データを収集したそうです。そうして2015年11月には、医療用モデルが厚生労働省より医療機器として承認され、緩徐進行性の神経・筋疾患の進行抑制治療を目的とする世界初のロボット治療機器『HAL®医療用下肢タイプ』として製造販売されるようになりました。

さらに2016年4月には、ロボット治療として世界で初めて、一般の公的医療保険の償還価格が決定。同年9月より、保険治療が開始されました。

 

また、脳卒中患者の歩行能力回復を目的とする『医療用HAL®単脚モデル』の医療機器承認を目指す医師主導治験や、介護者や作業者の腰への負荷を低減する腰補助タイプの『HAL®』のレンタルが開始されるなど、さまざまな状況での活用を目指し、研究開発が進められています。

 

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非医療用モデルの『HAL® 福祉用下肢タイプ』

 

『HAL®』が革新的なのは、身につけた人の脳や神経系に「学習させる」ということです。

『HAL®』のアシストにより運動を続けるうちに、脳や神経がその運動のための適切な信号の出し方や反応を学習します。これを繰り返すことにより、やがて『HAL®』を使わなくても同様の運動ができるようになることを目指すのです。

実際に、これまで自立歩行できなかった方が、このトレーニングによって自立できたというケースもあるのだそうです。

 

自分の力で身体を動かすことができるという感動体験が得られるので、『HAL FIT®』のトレーニングは楽しみながら続けられます。また、スポーツカーや映画に出てくるロボットを思わせるかっこいいビジュアルも、前向きな気持ちでトレーニングに取り組むための重要な要素になっています。

このように、身体だけでなく、心まで変えていくのが『HAL®』の大きな魅力なのでしょう。

 

お話を伺い『HAL®』への理解が深まったところで、実際に動作原理を実感するため、福祉用下肢タイプを用いた簡易的な操作デモ体験をさせていただきました。

体験では、腕にセンサーを取り付け、肘の曲げ伸ばしによって『HAL®』を操作します。曲げる際と伸ばす際の電位レベルに差があり、初めはうまく動かすことができませんでしたが、PCモニターで動作状況を確認しながら、どう動かせば『HAL®』がどのように作動するか意識することによって、コツをつかむことができました。

 

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『HAL®』福祉用下肢タイプを用いた簡易的な操作デモ体験。PCモニターに電位レベルが表示されています

 

CYBERDYNEの拠点としてトレーニングを受けられるロボケアセンターは全国に3箇所のみ。九州では、大分ロボケアセンターが唯一の施設となります。見学の受け入れや装着体験も実施しており、事前申し込みをすれば、その技術を体感することができます。

 

そもそも、全国に3箇所しかないロボケアセンターの1つが別府に開所した理由を尋ねると「太陽の家の理念に深く共感したから」ということでした。

1965年に創立した太陽の家は、障がい者の自立支援と働く場づくりに取り組んでいます。敷地内にはスーパーマーケットや銀行、食堂など、障がいのある方にも生活しやすい環境が整っています。大分ロボケアセンターは、2014年にその敷地内に開所し、自立や健康増進を支えてきました。

 

現在、『HAL FIT®』の利用者のおよそ半数が県外から訪れているそうです。これまでに、アラブ首長国連邦やシンガポール、韓国、台湾など、海外からの利用者も訪れ、2〜3週間の滞在型トレーニングを体験していきました。

そこで大分ロボケアセンターでは「せっかく遠方から来るのならば、もっと別府を楽しんでほしい」と、ヘルスツーリズムの実現を目指し、連携や発信を図っているそうです。

しかし、別府の温泉やホテル・旅館には、まだまだ重度の障がい者が満足に滞在できるバリアフリーの施設が少なく、トレーニングに訪れる利用者が十分に観光を楽しめる環境は整っていないと安永さんは語ります。

 

障がい者に社会参加や職場復帰の希望をもたらす太陽の家と、身体機能が改善するという希望をもたらす大分ロボケアセンターとが隣接する別府市。ここにさらに観光の楽しみが加われば、障がいのある方にとって、1度は訪れてみたい魅力的な街になるのではないでしょうか。

 

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障がい者の自立支援と働く場づくりに取り組む『太陽の家』の敷地内にある大分ロボケアセンター(外観)

 

今後、観光と『HAL FIT®』を融合させていくには、観光業に関わる方々に、もっと『HAL®』について知っていただくとともに、この取組に共感する施設を増やし、連携していくことが不可欠です。さらに、別府市在住の留学生の協力が得られれば、海外からの利用者にとっても、より快適な観光とトレーニングが実現するでしょう。

 

今回はお話を伺い、実際に体験させていただいたことで、『HAL®』が多くの人に希望や笑顔をもたらす可能性を持つことを知りました。そして、そこに別府の持つ力を掛け合わせることで、それをもっと拡張できるのではないかと感じました。

国内有数の温泉観光地である別府の地の利を活かし、『HAL FIT®』が今後ますます魅力あるサービスに発展していくことを願っています。

 

 

*『HAL FIT®』の様子や、ツーリズムとの融合のイメージがより詳しくわかる動画がYou Tubeにて視聴できます。

動画はこちら⇒ HAL® FIT ツーリズム in おおいたチャンネル