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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2018.03.01

田中淳一さん(株式会社 POPS 代表/クリエイティブディレクター/コピー・シナリオライター) 

『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』の講師で、クリエイティブディレクターの田中淳一さんをご紹介します。
大学卒業後は広告代理店に入社し、食品や自動車など幅広いジャンルで、話題のプロモーションを手がけてきました。2014年12月に株式会社POPSを設立し、地方のクライアントを中心に、20を超える都道府県でシティプロモーションや観光、広報 PR、ブランディング、商品企画などに関わってきたそうです。なぜ地方に舵を切ったのか、いま地方に必要なクリエイティブの力についてお話しいただきました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)


 

CPO:田中さんがクリエイターを志したきっかけを教えてください。

 

田中:宮崎県延岡市で高校生活を送り、東京の大学に進学しました。卒業後は、漠然と世の中を楽しくしたいと思い、生活の様々な場面に関わる消費というコミュニケーションを楽しくすればそこにつながるのではと広告代理店に入りました。最初は営業職でしたが、クリエイターの人たちと触れ合うなかで、文字や映像の企画でクライアントの課題を解決できるということ、そしてそれが仕事になるということを知って、30歳でクリエイティブ部門に移りました。

 

 

CPO:広告代理店では、全国規模で宣伝広告をする大企業のクライアントが多かったと思うのですが、今は地方の企業や団体とお仕事をされていますね。地域に目を向けるきっかけは何だったのでしょうか?

 

田中:2010 年に宮崎県で起きた口蹄疫です。連日深夜まで仕事をしていて、帰宅後ふとテレビをつけると白い防護服を着た人が牛舎に消毒液をかけている映像が流れていました。その光景を見て、自分のやっていることと、今故郷で起きていることの間に大きなギャップを感じたんです。僕は「広告は社会の窓だ」と言われて育った世代ですが、全然そうじゃないなと思いました。
翌年の3.11では、テレビCMが全部ACジャパンに代わり、僕らが作ったCMも一瞬にして消えてしまいました。自分が培ってきた職能は何の役に立つんだろうと悩み、いてもたってもいられず参加したのが『てをつなごう だいさくせん』でした。これは、三陸鉄道の車両を企業の垣根を越えた約50体のキャラクターが手を繋いだイラストでラッピングした、世界に1 台しかない電車を走らせるプロジェクトです。仮設テントの前をその電車が通るとき、お母さんと子どもがずっと手を振っていた光景は今でも忘れないですね。
クリエイティブが人の気持ちを前向きにする。地方こそ、アイデアで活性化するということを実感して、そこから一気に独立に向かいました。

 

 

CPO:お仕事のうえで、東京と地方との違いを感じることはありますか?

 

田中:東京と地方ってクリエイティブ格差が大きいんですよね。地域には東京に全然負けない、いいものがあります。それを伝える術がないというのは、すごくもったいないと思うんです。ものを流通させるだけでなく、コミュニケーションを流通させていく術を持ってほしいと思います。それに気づいている人はまだ少ないので、やっただけ変化が起きると感じています。

 

CPO:これまでに関わった「コミュニケーションを流通させる術」具体的に事例があれば教えていただけますか?

 

田中:最初に地方で手がけた事例なんですが、愛媛県今治市の『七福タオル』の動画を作りました。今治タオルは四国タオル工業組合というタオルメーカーが集まった組合のブランドなんですが、七福タオルはその一員です。
「思春期の娘と父親の間に会話がなかったとしても、朝は洗面所で同じタオルで手を拭いている。タオルとは、家の中で家族を繋ぐ存在でありたいと願っています」という社長の思いを聞き、それを伝える2分程のアニメーションを作りました。YouTubeに上げると、実際に動画を見た人がホームページから買ってくれたり、 iPadで動画を見せることで海外での営業もしやすくなったと聞きました。何より、社員さんに自社のアイデンティティが行き渡って、モチベーションも上がったんです。

 

 

CPO:ソーシャルメディアが盛況な時代のコンテンツに作りについては、どう考えていらっしゃいますか。

 

田中:今はスマートフォンが生活者のメインスクリーンですから、媒体費を以前のように大きく掛けなくてもいいコンテンツさえできれば、勝手にどんどんシェアされていく。地方や予算規模が大きくない企業にとって、大きなチャンスがあると思います。YouTubeが最も視聴されている時間は、寝る前だと言われています。寝る前に「うちのタオルは何パーセント吸水率がある」と言っても誰も見ない。日本人はものづくりは上手だけど、物語作りは下手だと言われていますが、スペックをしっかりとストーリーにすることが大事です。

 

CPO:いい物語のポイントは何でしょうか?

 

田中:人の感情を揺さぶり、共感を生むことを意識しています。七福タオルもそうですが、多くの商品は、だれかの何かを解決したい、困っている人の助けになりたいということから生まれているはずなんです。その源泉までたどり着いて、ちゃんと拾い上げてコンテンツにしていく、その繰り返しだと思います。

 

CPO:映像以外で注目しているツールはありますか?

 

田中:写真集に手応えを感じています。地域の会社にとっては、広くあまねく広告することよりも、思想や商品を好きになってくれる強いファンをどれだけ持てるかが大事だと思っています。写真集は、会社の思いなどを1冊にまとめて、記録し、深く伝えるのに適しているんです。デジタル全盛の時代に意外性があると話題にもなります。
養殖が盛んな愛媛県南予地方で、安い輸入品の影響を受けて停滞している状況を変えたいという相談を受け、漁業や町の良さを伝えるために養殖をテーマにした写真集を出したことがあります。そこで、写真家2人にこれまでの養殖のイメージを塗り替えるアート性の高い作品を撮ってもらいました。新聞にも取り上げられ、2000部がすぐに売り切れました。宇和島のファンを増やすだけでなく、地元の漁師さんたちが売れ行きを一番喜んでくれて、「南予で漁師をやっていて良かった」と誇りを持つことにもつながったんです。

 

南予地域をテーマに制作した写真集の表紙

 

CPO:今後、大分県でどのような取り組みが生まれることを期待されますか?

 

田中:一次産業を伝えていくと面白いんじゃないかなと思いますね。後継者不足などの課題があるとよく聞きますが、興味のある若者は絶対いると思うんですよ。知られていないからこそ、繋がっていないんだと思います。
『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』で大分のクリエイターの方々と接していますが、皆さんとても積極的ですね。僕は地方で仕事をする際は、制作チームに地元のクリエイターを入れるようにしています。僕自身すごく刺激を受けますし、企画が僕の手を離れても、ノウハウが地元クリエイターに引き継がれて、自走するスキームができていく。地域の内と外が協働すると、よりいいクリエイションができると思います。

 

 

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田中淳一
株式会社 POPS 代表/クリエイティブディレクター/コピー&シナリオライター

 

1970年 宮崎県延岡市生まれ。
早稲田大学第一文学部演劇専修卒業後、旭通信社(現 ADK)入社。
2014 年に独立。東北芸術工科大学非常勤講師
SHORTSHORT FILM FESTIVAL&ASIA“観光映像大賞”
消費者のためになった広告コンクール”金賞”など

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