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事例紹介

2017.06.29

“地熱エネルギー × IT”が農業のイメージを変える『愛彩ファーム九重』

湯布院の市街地からも程近い大分県玖珠郡九重町の、地上700メートルの高地に広がる広大なハウス農園。株式会社 タカヒコアグロビジネスが運営する愛彩(あいさい)ファーム九重では、地熱エネルギーを活用し、365日栽培を行っています。温泉熱エネルギーと、最先端の環境制御システムを導入した、季節にも天候にも左右されない最先端のハウス農園を取材しました。

 

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パプリカ用(3.0ha)、トマト用(0.2ha)の広大なハウス農園

 

愛彩ファーム九重の親会社である株式会社 タカフジは、大型工場・大型発電所等のプラント建設を主とする会社です。その技術を新規事業の創出に繋げようと、約10年前に農業分野に着手しました。農業研究を突き詰めていく中でオランダの大規模施設園芸に出会い、まずは由布市で重油ボイラー(化石燃料)を使った大規模農業に着手しましたが、栽培に必要な暖房コストが年間3,000万円もかかってしまい、想定外のコスト高となってしまいました。そこで愛彩ファーム九重では、大分県ならではの地域資源でもある地熱をエネルギー源に使うことにこだわりました。その結果、この規模の施設園芸でボイラーを用いた場合、通常7〜8,000万円程度かかるはずの燃料費がなんと0円に。余剰熱を有効活用した地熱発電も行っています。このしくみで特許を取得し、国内外からの視察も増えています。

また、高地のため上下水道ともに整っていないエリアですが、この農園では雨水を回収・ろ過するシステムを取り入れ、循環型、最先端のエコファームとしても注目されています。

 

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自噴する温泉熱と熱交換システム

 

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赤、黄、橙、紫など色とりどりのパプリカとフルーツパプリカのほか、ミディトマトやバジル、ルッコラ、パクチーなども栽培している

 

園内を案内してくれたのは専務取締役の松尾崇史さん。陽光の差し込む明るい作業場では、従業員の方々が笑顔で挨拶をしてくれました。この農園では、種を発芽させる一次育苗から自社で管理しており、栽培に土は使用せずヤシガラ(ヤシの皮)等を利用しているため、ハウス特有の土が蒸れたムッとするような匂いはありません。

ハウス内外にはさまざまなセンサーが数多く設置されており、温度・湿度・風速・風向・CO2濃度・日射量などの環境値を自動計測しています。それらのデータをもとに、天窓の開閉角度や温度の制御、ミスト装置で湿度を調整するなど、ハウス内には植物にとって快適な環境にするための環境制御が施されています。

「緑に囲まれた環境で心身ともに癒され、風邪も滅多にひきません」と松尾専務が言うとおり、従業員の皆さんがいきいきと働いている姿が印象的でした。

 

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国内の農業の分野では、担い手の不足や高齢化が大きな課題になっていますが、愛彩ファーム九重では若い従業員も多く、幅広い年齢層の人が働いています。その理由はなんといっても、快適な職場環境です。ハウスの外観や玄関までのアプローチにもこだわって作られており、従業員が子どもを連れて来たり、天気のいい日は休憩時間にガーデンランチをしたり、のびのび過ごせる工夫が随所に見られます。そこには農業のイメージを変えたいという、愛彩ファーム九重の強い思いがあります。

「農業はきつい仕事ではなく、かっこよくて夢のある仕事だという意識を従業員と共有していきたいんです。やりがいや誇りを感じられる場所を地域社会に作りたい、そのために始めた事業なんです」

現在、従業員数は約40名。職場環境の良さが口コミで広がり、地元の若い人たちからの就業希望も多いそうです。

 

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大分県産の杉をふんだんに使ったミーティングルーム

 

 

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松尾専務は、この大規模農園での栽培にパプリカを選んだ理由について「地域の個人農家さんが作っていないものだからです。マーケットを奪い合わないようにと考えました。それと、これからの市場を考えてターゲットを女性や高齢者に設定したんです。国産のパプリカは海外産のものに比べて価格は高くなりますが、栄養価が高く、色どりが良くて見た目も綺麗でしょう」と語ります。このターゲティングが功を奏し、売れ行きは好調。今は生産が追いつかないほどだと言います。

売り先は沖縄から北海道まで広がり、県外のテーマパークや全国チェーンの飲食店、県内では百貨店や大型のリゾート宿泊施設など。「自分たちが育てた野菜があのお店で使われているっていう誇りが、社員のやりがいにも繋がります」と、取引先にもこだわっていました。取引先とのコミュニケーションのなかで、メニュー開発に携わったり、栽培品種についてのリクエストを受けたりすることもあるそうです。

また、同系列のタカフジグループが運営するレストラン『Art Table いろのわ』(大分市美術館内)では、愛彩ファーム九重産の肉厚なパプリカや滋味深い野菜をオリジナルメニューで味わうことができ、商品開発にも力を入れています。

 

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パプリカの枝は高さ6メートルを超える。高所作業をするための作業車が走るレール配管の中には地熱によって熱交換された温水が流れ、ハウス内を温めている

 

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今後は、生産しているパプリカやトマトなどの商品の良さだけでなく、農場のコンセプトや環境、ストーリーを伝えたいという松尾専務。

「農業体験に来た子どもたちや、産地確認に来られたバイヤーが、植物に囲まれてリラックスしていくのがわかるんです。体を動かし植物に触れたりしながら、心身共に元気になっていくんですね」と松尾専務。今後は、農業体験を観光やセラピーに活用する事業展開も視野に入れているそうです。

「私たちは資源確保という国内の大きな課題にチャレンジしていると自負しています。それが社員の士気を高めていくし、実現したいビジョンがまだまだたくさんあるんです。」

大分ならではの地熱エネルギーを活用し、農業のイメージを大きく変える最先端のIT農園は、地域の雇用に変化をもたらし、強い発信力を持った魅力的なコンテンツとしてますます進化していくようです。

 

 


愛彩ファーム九重

住所:大分県玖珠郡九重町大字野上3905番地1

電話番号:0973-77-7000

公式HP:https://takahiko-agro-business.jimdo.com