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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2019.10.03

網中いづるさん(イラストレーター)

今回は、イラストレーターの網中いづるさんにお話を伺いました。網中さんは、書籍の装画や挿絵を中心に、ファッションブランドへのイラスト提供など幅広く活動されています。「かわいい」だけではなく、販売に結びつけることを強く意識されているという網中さんに、これまでの企業との協働事例や、クリエイティビティを発揮しやすい条件などをお聞きしました。

 

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA(CPO)
取材日:2019年6月13日

 


 

CPO:まずイラストレーターになられた経緯を教えていただけますか?

 

網中:学生時代は大分県立芸術文化短期大学の美術科で油絵を学びました。卒業後はセレクトショップで働きはじめ、20代後半に都内の本店に勤務しました。売り場で接客やディスプレイを担当したのですが、日本で初めて取り扱うブランドやデザイナーを紹介することが多く、作り手だけではなく、メディアやスタイリストなどお客さま以外のさまざまな分野の方とも関わる刺激的な現場でした。当時はまだイラストレーションの仕事はしていなくて、オフィス内のやり取りでメモ紙に落書きしたり、商品の絵型を描く程度でしたが、それを見たプレス担当者がポストカードを制作する際に、「網中さんのイラストが良いのでは」と推薦してくれました。それ以降、社内で描く仕事が増えていきましたね。

 

CPO:独立されたのは何かきっかけがあったのでしょうか?

 

網中:航空会社の機内誌で自社広告の挿絵を担当したのですが、文章に絵を添えるということがとても面白く、出版の仕事に興味を持ちました。
そして、独学でイラストレーターをしている自分が不安になったので、休日などの時間を利用して美術学校の『セツ・モードセミナー』に通いデッサンを学び直し、イラストレーションコンペにも応募しました。幸いにも1999年に『ペーター賞』を受賞して専門誌に紹介されるようになり、外部からの仕事の依頼も徐々に増えて、2001年の初個展を機に退社しました。
よく「売れる商品をつくることを真剣に考えているね」と言われるのですが、アパレルの経験から目的をもってお客さんに情報発信するという意識が強いのだと思います。イラストレーションは情報や価値を伝えるためのものなので、常に自分の絵がどう役立つのかを考えています。洋服屋からイラストレーターになったことはごくごく自然で繋がっていると思っています。

 

CPO:これまで企業と協働された事例を教えてください。

 

網中:下着メーカーの『ワコール』からの依頼で、『ワコール創立70周年記念カレンダー』に関わらせていただきました。コピーライターの言葉と私が描いたイラストレーションが掲載されている週替わりカレンダーです。祝日や記念日、季節感を具体的に描くことを意識しました。「卒業シーズンだな」とか「新元号が発表される週なんだな」など自分自身の思い出や、感じ入るところが多くあり、言葉から想像してアイデアを出していくことが楽しい作業でした。絵画を飾るということに馴染みのない方でもポスターなら壁に貼るし、カレンダーをかける習慣があるという方は多いですよね。フックの部分がハンガーのおもしろい形で、50点余りの絵や言葉が詰まった一冊の画集のようなデザインなのでプレゼントとしても喜ばれ、より飾りたくなるカレンダーに仕上がったと思います。

 

『ワコール創立70周年記念カレンダー』

 

CPO: 大分県内の企業と協働された事例を教えてください。

 

網中:『大分いっち』のロゴとイラストレーションは、デザインとディレクションを担当していた西口顕一さんから依頼がありました。お菓子を食べ終わった後も小物などを入れて使って欲しいという思いから、箱は色味の美しさや紙の質感にまでこだわりました。もともとクライアントはパッケージにイラストを使うということを想定していませんでした。でも、西口さんが「食べたことのないものをお客さんに手にとってもらうためには、パッケージで印象付けるしかない」と熱心に説得してくれたんです。最終的には生産者もデザイン意図をよく理解してくださって、他のお土産とは差別化された印象的な新商品が生まれました。パッケージを綺麗にすること自体が目的ではなく、その商品の性質や企業の理念を意識したデザインであることが大切だと思っています。

 

『大分いっち』無着色・無香料の苺グラッセのクリームを挟んだクッキー

 

CPO:細かな設定や指示があった方がクリエイティビティを発揮しやすいのでしょうか?

 

網中:打ち合わせするなかでアイデアが生まれることが多いので、企画段階からアイデアを育てていくことに魅力を感じます。小説のカバーの場合は最初にイメージをつくります。具体的な指示がないことが多く、「ゲラ」という本になる前の原稿を全て読ませていただいて。つまり、書籍の「パッケージ」をデザインとともに任されています。もちろん私の過去の作品を知ったうえで依頼があるので、求められている着地点はぶれないようにしています。装画によって作品世界の「匂い」のようなものを伝えることができたら、と考えていますが、デザイナーや編集者とのすり合わせが大切ですね。

 

CPO:今後、大分県内の企業と取り組んでみたいことがあればお聞かせください。

 

網中:「どういうものがお客さんに喜んでもらえるか」というところから一緒に考えたいですね。デザインは奥が深くて、ほんの少しのことで見え方が変わります。クライアント、デザイナーとともに商品の根元の部分から関わらせてもらえると嬉しいです。

 

 

社史や企業のパンフレットなどの制作にも関わってみたいですね。企業のブランドイメージや歴史をイラストレーションで伝えていくようなお仕事ができたらいいなと思っています。
あと、今は個人や小さな規模のお店でもオリジナルのグッズなどを制作する人が増えましたよね。そういった相談も受けたいと思っています。

 


 

網中いづる
イラストレーター

1968年生まれ。アパレル会社勤務を経て2002年にイラストレーターとして独立。エディトリアルの仕事を中心に、ファッションブランドへのデザイン提供など幅広く活動する。1999年ペーター賞、2003年TIS公募プロ部門大賞、2007年講談社出版文化賞さしえ賞受賞。装画に『完訳クラシック 赤毛のアン』シリーズ(講談社文庫)、『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ(角川書店)、『絵本 アンデルセン童話 赤いくつ』(角田光代・文/フェリシモ出版)、『あたし ときどき おひめさま』(石津 ちひろ/BL出版)、『ふくはなにからできてるの?』(佐藤哲也/福音館書店) 他多数。CDジャケットに大貫妙子『note』、『愛しきあなたへ』、広告企業でAGFブレンディ「ぐうたら紅茶」シリーズ、ワコールカレンダー、資生堂、アフターヌーンティー、Loftキャンペーン他。大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。TIS会員。