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2017.06.01

食文化を通じたクリエイティブな取組 —食文化創造都市パルマ

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2015年12月にユネスコによって『食文化創造都市』に認定されたパルマ市(イタリア)は、生ハムの1種であるプロシュット・ディ・パルマや、チーズの王様とも称されるパルミジャーノ・レッジャーノなどが有名で、古くから「美食の都」として知られています。2017年5月、山出編集長は大分経済同友会の視察団に同行し、パルマ市における食文化を通じたクリエイティブな取組を調査しました。

 

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雄大な自然に恵まれたパルマの風景

 

ユネスコは、工芸、デザイン、映画、食文化、文学、音楽、メディア・アーツの7部門において独自の文化や創造性を発揮する『創造都市』をネットワーク化する『ユネスコ創造都市ネットワーク(UCCN)』の認定を2014年より開始しました。このネットワークによる経験・知識の共有や普及促進が、各都市の文化的プログラムの活性化や地域課題の解決に向けた取組を加速させています。

 

技術と生態系を守り、人と自然が調和した企業経営を実践する

 

まずは、食文化創造都市パルマを代表する企業の1つである、ローザ・デル・アンジェロ社を訪問しました。

同社では「職人の手作業による製品づくりを守り続けること、農業における生物多様性を維持促進すること」をミッションに、昔ながらの生態系や種を保護・活用することで、人と自然が調和する企業経営を実践しています。

 

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Tosini Maurizio氏(右)

 

Tosini Maurizio氏にご案内いただいたプロシュット製造所では、パルマ産プロシュットの生産量を減らし、この地域に古代から生息する小ぶりで希少な黒豚のプロシュットに移行していく計画が進められています。

通常のパルマ産プロシュットは、1頭あたり1㎡のスペースで飼育された豚が原料となりますが、このエリアの農家の組合では500㎡/頭と規定しています。さらに、ローザ・デル・アンジェロ社の黒豚は1,000㎡/頭と、より広大な土地で飼育しているそうです。野外で育ち、よく運動した黒豚は、脂に通常よりも多くのリノレン酸を含むそうです。また、プロシュットは製造過程でタンパク質の分解が始まっているため、消化が良く吸収されやすい、非常に体にいい食品であるとされています。

 

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広大な丘陵地でのびのび育った黒豚のなかでも、最も運動量の多い後足だけがプロシュットに加工される

 

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プロシュットは約3年の年月をかけて製造される

 

ローザ・デル・アンジェロ社では黒豚だけでなく、古代麦や牛など、200年以上前からこの地域に生息している家畜や農産物を大切に育てています。視察を通じ、このような取組によって生物多様性を保存し、地域の食文化を守り、発展させようとする、同社の強い経営理念を感じました。

 

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ローザ・デル・アンジェロ社の運営する観光農園では、昔ながらの農作物や黒豚、牛などがのびのびと育つ自然や風景を深く体験できる(写真中央は宿泊施設)

 

数ある魅力やコンテンツのなかから1つに絞って磨きをかけることで、大きく付加価値化する

 

次に、『食文化創造都市』について、パルマ市役所のGabriele Righi氏に詳細を伺いました。

 

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Gabriele Righi氏にヒアリングする視察団

 

パルマは食だけでなく、古くから音楽や建築などにおいても独自の文化が栄えています。しかし、2014年に『食文化創造都市』を目指すことが決まって以来、食文化1本に絞りプロモーションをしてきたそうです。

 

登録申請にあたっては、パルマの食文化の伝統・歴史がいかに教育、経験、生産の分野に息づいているかをアピールしました。その具体例の1つに、原料の取り扱いや製造工程の規定があり、古くからこの地域で作られている加工食品の伝統や品質を守るために規定を遵守しています。Righi氏は「良質な食品を作り続けることがブランドとなり、ここにしかない観光資源となります」と語ります。

とはいえ、伝統は初めから伝統だったわけではありません。長い歴史のなかで社会に浸透していったものであり、守るばかりではなく前進させることも重要です。そこでパルマでは、生ハムやチーズの伝統的な製法を見直し、品質を保ちながらも改良や研究を進めるなど、絶えず研鑽を重ねているそうです。

そのほかにも、教育機関や食品メーカーと連携した教育普及事業や出版事業、1000人が食事できる巨大なテーブルが街に出現するイベントの開催など、民間企業や市民とともに、食をテーマにした多彩な取組を展開しています。

 

Righi氏からは「まずは、日本人のアイデンティティに根ざした、和食に立ち戻るべきです。母親のレシピをひもとき、その土地にしかないものや、地元のアイデンティティを探してみてください。食文化に関する取組にはパルマ市も協力しますよ」と、大分県に向けた激励の言葉もいただきました。

 

 

パルマ市では『食文化創造都市』を目指すにあたり、パルマにしかない技術や強み、アイデンティティを探り、数ある魅力やコンテンツのなかから1つに絞って磨きをかけることで、大きく付加価値化していきました。この考え方は、企業のブランディングにも大いに共通します。

2017年5月には、パルマ市がユネスコに申請した4ヶ年の計画を実現するための基金が設立されたそうです。土地や領域を超え、行政や企業、教育機関などが繋がり1つの大きな活動体となれば、より大きな課題の解決を図ることができます。パルマでは、その胎動を確かに感じることができました。

 

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