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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2020.12.17

平川 摂さん (さいき・あまべ食べる通信 発行人 兼 編集長/株式会社 ベース 代表取締役社長)

今回は、『さいき・あまべ食べる通信』 発行人で、編集長の平川 摂さんをご紹介します。平川さんは佐伯市出身。進学を機に県外に出て9年ほど前に地元佐伯に戻りました。現在は家業の海藻加工卸会社で働きながら、食べ物付き情報誌『さいき・あまべ食べる通信』を発行している平川さんに、佐伯に対する思いや食についてのお考えをお聞きしました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)

取材日:2020年10月29日


CPO現職に至るまでの経緯を教えてください。

 

平川:僕は佐伯で生まれ育ち、高校卒業後は県外の大学に進学し、そのまま県外に住んでいました。卒業後は教育関係の仕事に就き、20年ほど営業・制作・編集・マネジメントなどに携わっていたのですが、その間は全くと言っていいほど帰省しませんでしたね。故郷はずっとそのままあるという感覚だったのだと思います。その頃、たまたまNPOの社会起業家の方々と出会い、プロボノとして活動に関わっていくうちに、会社を離れた方がより良い事業が展開できるのではないかと考えるようになりました。その頃久しぶりに帰ってみた佐伯の町並みは、昔の賑わいがなくなっているように感じました。昔行ったお店が閉店して空き物件になっていたり、記憶にあった町の風景とは随分変わっていて、ショックを受けました。起業か家業かで悩んでいましたが、自分のこれまでの経験を活かし、結果的に佐伯になにか役立てられたらいいなと思い、Uターンを決めたんです。

 

戻った頃の佐伯には同級生も少なく、イチから人間関係を作るために、まちづくり団体に入りました。

自分のなかで、最も佐伯の良さを感じられるのはなにかと考えたときに、すぐに「食」というテーマが浮かびました。それから佐伯市民に対して、食育関係の映画上映などの活動をはじめましました。

 

タブロイド判で発行されている『さいき・あまべ食べる通信』

CPO『さいき・あまべ食べる通信』について教えていただけますか?

 

平川:『食べる通信』は、全国で発行されている食べ物付き情報誌です。生産者の物語を紹介するメディアとして、情報誌と食べ物をセットにして定期的に発行しています。

 

『食べる通信』のことは以前から知っていましたが、自分で発行するようになるとは思っていませんでした。しかし、2016年の熊本地震で『くまもと食べる通信』が休刊になったことを知り、「やろうと思ったときに行動しないとできなくなる」と強く感じ、佐伯でも『食べる通信』を始めることにしました。せっかくなら、佐伯で今まで見たことないような地元発信のメディアを作りあげたいとも思っていました。

 

左:なずなの塩と食べる通信         右:1つひとつ丁寧に箱詰めしていく

 

佐伯市は九州で1番広い市です。浦、山が広がっているので全てをカバーするよりは、まず自分の仕事でもある水産関連の「あまべ」=浦々の生産者を中心に取りあげることにしました。いずれは山間部にも行けたらいいなと考えてはいます。

他都市の『食べる通信』と違うのは、第一次産業の生産者だけではなく、干物やごまだしなどの加工業従事者も特集するところかもしれません。佐伯の地場産業でもありますし、私自身そこを誇りに思っているので。

情報誌発送以外の活動としては、購読者が生産者の繋がりを感じられるよう、SNSのグループページを運用したり、県内外で私たちの活動を知ってもらうための“さいきあまべ食べる屋台”という生産者と料理人と一緒に食を感じるイベントをしたりしています。

 

イベントを通し生産者や料理人の繋がりも広がっている

 

CPOこれまでの取材で印象的だった事例を教えてください。

 

平川:取材では、その人の一生の話を聞くことになるので、何度も生産者のもとに足を運んでいます。そのなかに本人が特別だと思っていないことがたくさんあって、面白いんです。

最も長く取材をしたのは『美人鰤』ですね。きっかけはよく行く飲食店で、養殖鰤の生産者が新しく美味しい鰤を作ろうとしているという構想を聞いたことでした。

 

美人鰤の養殖現場

取材では船に乗船し生産者を追いかける

 

取材を通じて、漁業はほとんどの生産者が自分たちで魚の値段を決められない業界であることを知りました。手間をかけた魚とそうでない魚も、同じ値段になってしまうのだそうです。そんな業界の常識に風穴を開けに行った2人の漁師が本当にかっこよくて。この事実を世に伝えたいと思い、モジャコ (ブリの子ども) から成長し出荷するまでを追いかけ続けました。

今では大分県内でも『美人鰤』を取り扱う飲食店も増え、県外からもバイヤーが買い付けに来るようになっています。

 

CPO時間をかけて深く取材していくことで、地域や業界の課題が見えてくるんですね。

 

平川:そうですね。海水温の上昇によるカタクチイワシの不漁から「佐伯いりこ」が作れなくなったり、輸入品に押されて国産レモンの価格が大暴落し、佐伯のレモン農家が最後の1軒になったり、さまざまな課題が見えてきます。それらの課題を施策を重ねて乗り越えたという事例もあれば、解決されていない事例もあります。

しかし、このような食材にまつわるストーリーを知ることが、食と向き合うきっかけになると思っています。実際に、『さいき・あまべ食べる通信』の購読者が佐伯まで食材を買いに来たり、生産者の現場を見に来たりといった行動に繋がっています。

 

平川さん (左) と、副編集長の染矢弘子さん (右)

 

CPO食材だけでなく、地域の魅力発信にも繋がっているんですね。

 

平川:食のメディアを作ろうと思ったときに、最後は人なんじゃないかと思ったんです。

無名の生産者というのは、ブランドになり得る可能性を持っています。そして、佐伯にはそういう方々がたくさんいます。人の集合体が町なのであれば、僕が媒介者になって、その人たちのことを伝えることは結果的に今の佐伯を知ってもらうことになるのではないかと思っています。

 

CPこれからやってみたいことを教えてください。

 

平川:近年、先人たちから受け継がれてきた加工や生産の技術が途絶えてきていることに危機感を感じています。地域の食文化を作ってきた生産者の試行錯誤の過程や生き様を取材し、残していかないと誰も知らないものになってしまいます。文章として、アーカイブを残し続けていきたいと思っています。

もちろん生産者の思いを消費者に伝え続けていきたいと思っています。食材の価値を広く知ってもらうことで、生産者に喜びを感じてほしい。そして、生産者が喜びを感じながら育てたものを食べられる世界は、幸せなのではないかと感じています。そういう循環の一端を担っていければと思っています。

 


平川 摂

さいき・あまべ食べる通信 発行人 兼 編集長/株式会社ベース 代表取締役社長

大分県佐伯市生まれ。㈱リクルートにおいて教育事業を中心に営業・制作・編集・商品企画・マネジメントに従事。2012年に佐伯市へUターン。海藻加工卸業を行いながら、2016年に生産者と消費者をつなぐメディア『さいき・あまべ食べる通信』を創刊。佐伯の漁師や農家、水産加工事業者と伴走しながら、食のまち「佐伯」を広めるべく情報発信を続けている。

 

『さいき・あまべ食べる通信』最新情報はこちら (https://taberu.me/post/latest/15336.html)