MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

おしらせ

2021.01.14

森竹俊象さん (デザイナー)

今回は、大分市にデザイン事務所『NAUT GRAPHICS』を構える、デザイナーの森竹俊象さんにお話を伺いました。2018年のグッドデザイン賞を受賞した、竹田市の農林産品と地域のブランディング『竹田うまれ』のデザインなど、数々のグラフィックデザインを手がけてきた森竹さんのデザインには、依頼内容の本質的な魅力をデザインで伝えたいという強い信念がありました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA(CPO)

取材日:2020年11月12日


CPO:デザイナーになるまでの経緯をお聞かせください。

 

森竹:子どもの頃から絵を描くのが好きで、大分県立芸術文化短期大学の美術科で油絵を専攻していました。卒業後はオフィス什器などを販売する会社に就職し店舗やオフィスレイアウトの設計に数年携わりましたが、もともと興味のあったデザインを仕事にしたいと考えるようになりました。

そこで印刷会社での写真製版の仕事を経て、主に量販店などのチラシを制作しているデザイン会社に転職したのですが、もっと幅広く仕事したいと26歳で独立しました。当時は顧客も受賞歴もなく、家の近所にDMを作り配ったりしてみましたが、全く依頼はありませんでした。今考えてもあまりにも無謀だったと思います。

その後、広告代理店を周り、仕事の依頼をもらえるようになりました。始めに受けた仕事はポスターのコンペでしたが、無事に採用されそこから徐々にロゴ作成や冊子の制作などに幅を広げていきました。そこからは、ずっと紙媒体を中心としたグラフィックデザインを手がけています。

 

 

CPO:印象的なお仕事について教えていただけますか?

 

森竹:2006年に発行した『BEPPU PROJECT』の『manifest』という書籍は、デザインや構成などを自由にさせていただき、遊びがいがあって楽しくできた印象深い仕事でしたね。

 

CPO:本の構成にも携わっているんですね。

 

森竹:冊子制作のノウハウは誰かに教わったわけではないのですが、仕事をしながら覚えていきました。ここ数年関わらせていただいている、大分市の『明日香美容文化専門大学校』では学校案内の冊子を始め、ブランディングから各種DM 、Webページなど広報ツールの、総合ディレクターとして企画立案、構成、イメージ作成、フォトディレクションなど全般を手がけています。

写真撮影の現場にも立ち会いながら、フォトディレクションやイメージ作成も一手に担う方が、僕としてはやりやすいですね。

 

これまで手がけてきた『明日香美容文化専門大学校』の広報ツール

 

CPO:冊子制作において、こだわりや心がけていることがあればお聞かせください。

 

森竹:ターゲットの傾向や流行は日々変わっていきますから、同じクライアントの仕事であっても、変化に対応できるよう意識しています。『明日香美容文化専門大学校』の学校案内も、スマホ世代の若い人に向けて文字を減らし、できるだけ写真やデザインでイメージを伝えるよう心がけるなど、年々変化しています。

 

CPO:竹田市の農林産品と地域のブランディング『竹田うまれ』にも関わっていらっしゃったそうですね。

 

森竹:『竹田うまれ』は、竹田市の農林産品を「環境」「容姿」「食卓」の3つの視点で発信する、産品と地域のブランディング事業です。『株式会社 ドアー』の戸上 真由美さんがコンセプトづくりを含めたクリエイティブディレクションとコピーライターとして竹田市農政課から依頼を受け、僕はアートディレクションという立ち位置で携わらせていただきました。

 

上段が「環境」、中段が「容姿」、下段が「食卓」のビジュアル

 

竹田には、竹田市、久住町、荻町、直入町の4つの環境も地域性も異なる地域があります。『竹田うまれ』のロゴは、その4地域を円に入れて、生まれる場所としての意味合いを持つ「田」の漢字を形成しています。集まる感じと外に出ていく感じや、穀物のような有機的な形をイメージしました。

 

また、竹田市の主要農林産品7品目を特選品とし、その魅力を写真とキャッチコピーで表現するポスターをシリーズで制作しました。

最初のテーマは「環境」で、産地を周り、写真撮影に最適なイメージの場所を探しました。景観はもちろん、光の射し方など、そこが最も美しく撮影できる時間帯を慎重に探りました。

 

 

次に「容姿」では、ポスター1枚で野菜の鮮やかさを表現できるよう、背景を野菜と同系色にしました。野菜のみずみずしさを伝えるため、カメラマンさんと何度も試作を重ねました。

 

「食卓」では、「野菜が主役の日常的な料理」をテーマに、料理家の方に撮影用の料理を作っていただきました。美しい野菜は特別なことをしなくても美味しい料理になるんだと実感しながら撮影しました。

 

いずれもビジュアルを大事にしたいと考えたので、情報をできるだけ少なくシンプルなデザインにしました。これらのビジュアルは、ポスターや冊子のほか、Webサイトや竹田市役所の名刺の裏面、法被などにも展開されました。

 

CPO:『竹田生まれ』の評判はどうでしたか?

 

森竹:ポスターは道の駅や役所に貼られていました。1枚のポスターに1産品だけを起用したストイックなデザインだったため、使い方を限定せず掲示しやすかったと聞いています。

また、グッドデザイン賞を受賞したことで、多くの人に知ってもらえました。審査委員の講評に「ブランディングにはデザインが必要だ」と書かれていたことと、野菜に対する丁寧な気持ちを評価してもらえたのが嬉しかったです。

 

CPO:デザインをするときに、どのようなことが大切だとお考えでしょうか。

 

森竹:あまりデザインをしたというのが出すぎない、「ほどよい感じ」のデザインを心がけています。きれいすぎない、スタイリッシュすぎない、依頼内容の本当の良さを伝えられるデザインが僕の理想です。

また、誰にでもわかりやすく、しっかり伝わるデザインであることが重要だと思っています。特に広告では、「目にとまること」と「目に見えない引っかかり」のバランスをいつも思索しています。

 

CPO:今後、どのようなことに挑戦していきたいとお考えですか?

 

森竹:これからはもっと、クライアントと直接対話をしながら一緒に作っていく仕事がしたいと思っています。単発で終わるものではなく、長い時間をかけて持続的な効果を出せる仕事をしていきたいですね。ブランディングや広報戦略から関わり、ロゴやパンフレットなど必要なツールの提案・制作まで担うことで、クライアントの問題をクリエイティブでどこまで解決できるか挑戦したいと思っています。

 


森竹俊象

デザイナー

1974年 大分県豊後大野市生まれ。

大分県立芸術文化短期大学卒業後、印刷会社やデザイン事務所などを経て独立。ブランディング、ロゴ制作、エディトリアル、プロモーションツールなど幅広く手がける。

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。

moritake@nautgraph.com