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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2018.06.07

松野奈帆(NAHO DESIGN代表/プロダクトデザイナー)

今回は、大分市在住のプロダクトデザイナー・松野奈帆さんをご紹介します。松野さんは大阪府出身で、関西のデザイン会社や福岡の家具メーカーを経て独立。2015年に大分市に移住し、フリーランスのデザイナーとしてプロダクトはもちろん、グラフィックの分野でも活躍しています。今回は、大分県の企業との実績を中心に、さまざまなお話を伺いました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)

 


 

CPO:デザイナーを志したきっかけやこれまでの経歴をお聞かせください。

 

松野:子どもの頃からものづくりが好きで、日本でも数少ない、造形に特化した専門の高校に進学し、デザインの基礎やクラフトを学びました。その後、東北芸術工科大学と大学院に進学し、総合的にプロダクトデザインを学びました。プロダクトデザインと一言で言っても幅広いのですが、私の場合、機械や家電ではなく、家具の分野を専門に学びました。

 

CPO:学生時代にスウェーデンへ留学もなさったんですよね? そこではどのような気付きがありましたか?

 

松野:シンプルで無駄のないデザインや生き方に感銘を受けました。また、デザインやライフスタイルに自然を取り込むのがすごく上手だと感じました。それを向こうの人にしたら、「それは日本人の方がうまいよ!」と言われました。私から見たら当たり前のことが、向こうの人にとっては新鮮なんですよね。自分たちの生活や文化を客観的に捉える、いい機会でした。

 

松野:その後、関西でいくつかのデザイン会社を経て、福岡の家具メーカーで勤めた後、5年ほど前に独立しました。大分に移住したのは、2年半ほど前です。今は半分が東京のクライアントからの仕事で、あとの半分は大分の仕事です。

 

CPO:企業と協働して手がけた事例をいくつか挙げていただけますか?

 

松野:大分に来て最初に関わらせていただいたのが、別府市の『株式会社 三洋産業』さんとの仕事です。『三洋産業』さんがもともと業務用に作っていたドリッパーが素晴らしくて、コーヒー好きの人向けの雑誌に載ったり、本当に美味しい喫茶店で使われたり、すでに定評がありました。その商品の良さを活かしながら、若い女性向けの商品を作りたいというのが企業からのオーダーでした。

 

CPO:具体的にはどのようなプロセスで開発が進んでいったのでしょうか?

 

松野:「コーヒーを美味しく淹れるためのリブを大きくしたい」など、社長はすでに具体的なアイデアをお持ちでした。それをヒアリングして、何枚もスケッチに起こしました。

 

松野:「もっとシンプルにしても良いのでは」「こうしたら持ちやすいのでは」など、いろんな角度で提案をして、社長からコーヒーを美味しくするための専門的な意見もいただきながら、図面にも落とし込んでいきました。私はコーヒーに関しては全く無知だったので、美味しいコーヒーとはどういうものかというレクチャーを社長から何度も受けて、「なるほど、ここの空気層を大きくすれば美味しくなるんだ!」というようなことから学んでいきました。

 

CPO:そうして出来上がったのが、『Flower Dripper』ですね。

 

 

 

 

松野:はい。若い女性向けの雑貨屋などにも置いてもらえることを狙って、パッケージもデザインしました。

 

CPO:この商品が出来るまでにどれくらいの期間がかかったのでしょうか?

 

松野:だいたい半年くらいでサンプル販売できるまでに至りました。社長のアイデアが最初から明確だったこともあり、これはかなり早く完成しましたね。通常だと1年くらいかかります。

 

 

 

 

CPO:ほかにはどのような協働実績がありますか?

 

松野:中津市の『中津家具株式会社』さんの『C-Fit-Chair』という高齢者用の椅子の開発にたずさわりました。これは、『中津家具』さんが、(公財)大分県産業創造機構の助成制度の『おおいた地域資源活用商品創出支援事業』に応募なさったのをきっかけに、産学官が協働で商品開発をおこなった事業です。

 

 

 

 

松野:大分県産業科学技術センターのコーディネートで、大分県立看護科学大学と大分県立芸術文化短期大学、そしてデザインの部分にわたしが関わって、連携して商品化しました。高齢者の生活スタイルや、通常の椅子だとここが痛いとか、これだと座りにくいなどの意見をヒアリングしたり、データを取ってモニタリングしたり、リサーチにかなり時間をかけました。民間や大学と連携することで、それぞれのプロとしての目線で、本質的な商品開発に取り組むことができた例だと思います。

 

CPO:この商品は2017年のグッドデザイン賞を受賞したのですよね。おめでとうございます。

 

松野:ありがとうございます。受賞できて本当によかったです。

 

 

 

 

CPO:プロダクトデザインにかかる費用をイメージしにくい方も多いと思うのですが、松野さんの場合はどのように仕事を引き受けていらっしゃいますか?

 

松野:案件によりさまざまです。内容や難易度に応じて掛かる時間もさまざまですので、一概にいくらということは言えませんが、初期投資を抑えることを目的に、商品が売れた分のロイヤリティ契約という場合もあります。また、補助金申請の提案をすることも多いです。商品開発の場合、ある程度の初期投資が必要となることが多いので、補助金をうまく活用することは重要だと思います。

 

CPO:クリエイターがクリエイティビティを発揮しやすい条件があるとしたら何だと思いますか?

 

松野:企業の方との対等な、透明感のある対話ですね。

 

CPO:透明感のある対話とは、どういうことでしょうか?

 

松野:「これをデザインしてください」「はい、しました」という関係で終わるのではなく、もっと本質的な、深いところまで入り込んで話し合える関係を築けるといいなと思います。なぜそれが必要なのか、なぜそうしたのか、お互いが本当に考えていることや求めていることは何か。そういうことを対等に話せると、クリエイターもやりやすいし、企業にとっても、これまでとは違う観点で商品やサービス、経営のことを考えることができて、それが新しい戦略に繋がる。そういう、対等で透明感のある関係や、深いところまで入り込んで話し合える関係が築けるといいですよね。

 


松野奈帆

NAHO DESIGN

1981年大阪府生まれ。2004年東北芸術工科大学デザイン工学部生産デザイン学科卒業。同年スウェーデン国立芸術工芸デザイン大学に留学。2007年東北芸術工科大学芸術工学研究科修了。同学プロダクトデザイン学科副手、デザイン事務所、家具メーカー等を経て、フリーで活動中。2015年に大分県に移住。プロダクトからグラフィックまで幅広く手がける。
https://www.naho-matsuno.com