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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2018.06.28

たなかみのるさん(パラボラ舎 代表/デザイナー)

今回は、パラボラ舎代表のデザイナー・たなかみのるさんをご紹介します。たなかさんは大分市出身。6年ほど前に大阪からUターンし、グラフィックなどのデザインはもちろん、ネットショップの企画運営や販促計画、冊子の編集やイベントの企画など、多岐に渡る活動をなさっています。そのたなかさんが考えるデザインの面白さや、これまでたずさわった事例などをお聞きしました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)

 


 

CPO:まず初めに、デザイナーを志したきっかけやこれまでの経歴をお聞かせください。

 

たなか:学生時代に彫刻の勉強をし、卒業後はパチンコ台の周辺機器の会社で設計の仕事をしました。そこを1年半くらいで辞め、半年ほどブラブラしていました。貯金も減って、いよいよ仕事しないと……と思ったときに、今思えば本当に若気の至りでぞっとしますが「デザインならひとりでもできるんじゃないか」と思ったんです。そこから独学でデザインを学び、たまたま出会ったベテランデザイナーの方と一緒に地域のお仕事をしながら、現場で鍛えてもらいました。

 

CPO:その後、大分にUターンなさったのですね。

 

たなか:はい。2〜3年大阪で仕事をして、デザイナーとしての仕事が安定してきた頃に震災もあって、長く暮らすなら大分のほうが良いかなと思い、6年ほど前に戻ってきました。今は、大分県内の仕事と、関西など県外の仕事が半々くらいです。業種で言うと、一次産業に関わる仕事が多いですね。あとは行政との仕事もけっこうあります。

 

CPO:たなかさんにとってデザインの面白さとはどのあたりにありますか?

 

たなか:デザインによって「より使いやすくなった」「利益が上がるようになった」とか、「それまで苦労していた部分・困っていたことが解消された」といった、誰かが幸せになる、というところかなと思います。彫刻をやっていたときの「自分はこれを表現したい」というのとは違う喜びがあります。だから続けていけるのかなと思います。

 

CPO:和歌山の『山虎農園』さんとの協働では、デザインだけでなくネット販売までたなかさんが手がけていらっしゃると聞きました。そのお話を聞かせていただけますか?

 

たなか:そうなんです。『山虎農園』の土山さんとは大阪時代に出会い、かれこれ7〜8年のお付き合いになります。ここのみかんが、すごく美味しいんです。

 

『山虎農園』の土山さん。たなかさんは今も年に数回は農園に足を運んでいる

 

たなか:最初は、みかんのダンボールのパッケージをリニューアルしたいというご依頼でした。それまでのパッケージは、親族の方が作ったもので、ロゴも統一のものがありませんでした。最初はそれで良かったのですが、みかんの美味しさが評判になって、市場での価格帯も上がっていき、百貨店などにも卸すようになっていったんです。すると「山虎といえばこの箱」とわかるものにしてほしいと市場から言われたそうで、知り合いを通じてお声がけいただきました。

 

CPO:最初はパッケージのみの依頼だったのですね。

 

たなか:はい。でもそれだけだと、統一感がない。たとえば、パソコンを買ったとき、箱とパソコンのロゴが違っていたら「本物だろうか?」と心配になりますよね。そういう話を土山さんとしたうえで、ロゴを含めて提案させてもらうことになりました。

 

CPO:具体的なデザインが完成するまでに、どのようなプロセスを経たのでしょうか。

 

たなか:まず百貨店や市場へ行って、みかんの箱のリサーチをしました。当時はみかんの箱といえば、オレンジ、赤、緑のいずれかに「みかん」という文字と産地が大きく書かれたものが多かったんです。

そこで、ほかのものと差別化して、市場で見たときに「山虎農園のみかんがあるな」とすぐに分かってもらえるようなデザインにしました。

 

 

 

CPO:その過程の中で、ネット販売もたなかさんが手がけることになったのはなぜですか?

 

たなか:『山虎農園』は、家族で営むみかん・専業の果樹園です。年に3回の出荷シーズンと、それ以外の樹木の手入れをしているシーズンがあるのですが、販売や出荷の時期が、収穫の忙しい時期と必ず重なってしまうんですね。だから、ネット販売をしたくても忙しすぎてできなかったんです。ロゴやパッケージの件でお話をさせていただいているうちに、そういうお悩みを知りました。

 

CPO:ネットで直接買いたいという消費者のニーズはあったのでしょうか。

 

たなか:震災のあと、郊外の百貨店の閉店が続いた時期がありました。そうすると、もともと百貨店で買っていたお客さんが、土山さんのところに「百貨店で買えなくなったので直接売ってくれないか」と電話を掛けてくるようになったそうです。そこで「直接買えないかと問い合わせいただくけど、対応できずに困っている。ネットショップってできんのかな」と聞かれました。最初は個人でやっているデザイン会社なので、そこまではできないと断っていたんですけど、1年ほどお付き合いするうちに農家にとってネット販売がいかに困難かという事情がわかり、お引き受けすることにしたんです。

 

CPO:どこからどこまでをたなかさんが担っているのですか?

 

たなか:受注管理はもちろん、ご注文いただいた方への連絡や、お問い合わせの対応もやっています。弊社で受注リストをデータ化するので、『山虎農園』さんは、それを配達伝票に印刷して出荷するだけです。こうすると一次産業に従事する方でも負担なくネット販売ができるし、売上の分配割合をあらかじめ両者で取り決めているので、みかんが売れれば、弊社も利益に繋がります。

また、お客様の要望や反応がダイレクトにわかります。それまでは5kgの箱でしか売っていなかったのですが、「小さいサイズはないですか」というご要望が多かったので、小さいサイズも作りませんかと土山さんに提案したところ、同じ頃に市場からも同じような要望があったそうで、2.5kg用の箱を作ることになりました。売上の増減もダイレクトに知ることになりますし、パッケージやネットショップの課題が直接伝わってくるのが、デザイナーとして興味深いですね。

 

『山虎農園』のネットショップ。2018年の早生みかんは11月ごろ予約開始予定とのこと

 

CPO:ネットショップを作るにあたって工夫したことはありますか。

 

たなか:固定費を小さくするために、既存のネットショップサービスを利用しています。一次産業の場合、収穫の季節が限られるのでショップも通年で開けておく必要はありません。たとえば『山虎農園』さんの場合、予約も含めて実質4ヶ月くらいしかネットショップは使いません。それに対して年間の維持費を払うのはもったいない。なので、維持費が無料のネットショップを開設できるサービスを活用することにしました。

 

CPO:非常にリーズナブルでいい仕組みですね。

 

たなか:最初から狙ったわけではなく、生産者が求めていること、エンドユーザーが求めていることを実現するために、僕ができること・やった方がいいと思うことをやっていくうちに今のかたちができあがりました。

ともすると農作物は、いくらで売られているかも、どんな人が購入しているかもわからない、ということもあります。このネット販売の仕組みだと、僕も「美味しかった」という声や要望を購入者から直接聞けます。みんなが幸せになる仕組みだなと思いますね。

 

 

CPO:大分での事例も教えていただけますか?

 

たなか:『うすきオーガニックラボラトリーズ』さんのラベルやパッケージを手掛けた例があります。臼杵市野津町でオーガニックの野菜や加工品を作っていらっしゃるのですが、もともとデザインもご自身でなさる方で、自分で作ったロゴやラベルでいろんなところに卸していらっしゃったのですが、そのデザインを統一したいというのがもともとのオーダーでした。

 

 

 

 

 

 

 

ジンジャーシロップはブレンドに応じて個別のラベルが作成されている

 

たなか:農作物や加工品は多品種・小ロットの商品が多く、全商品のラベルを個別に作ると管理が大変になるので、レイアウトや色のルールを整理しました。「この系統の商品はこのパターンを組み合わせる」「このシリーズはこの色で」というルールと雛形をデータで納品し、ご自身で仕上げて、ラベルをプリンターで印刷できるようにしました。そうすると、必要な分だけ作って印刷すればいいので、過不足が少なくなります。また、農作業の合間にPCで作業する時間がなかなか取りづらいことも考慮し、あえてマーカーや鉛筆で品種を手描きするデザインと、それにあう素朴な印刷ラベルも作成しました。

 

 

たなか:この事例のように、僕がデザインを全部コントロールするのではなく、「ブロック」のようなツールをお渡しして、あとはご自身で仕上げてもらうというやり方を意識しています。その「ブロック」をクライアントさんがどんどん使いこなしてくださるのを見ると、とても嬉しいです。

 

CPO:ほかにも、『こどもボウサイ』『版フェス』の開催など、自発的な活動も多くなさっていますね。

 

たなか:せっかくフリーランスなんだから、やりたいことを自由にやろうという思いからです。発注する側もデザイナーが何を考え、活動しているかを知る機会って少ないですよね。でも、いろんなイベントを通じてそれを知るきっかけが増えれば、デザイナーに相談する間口も広がると思うんです。それが多少でも広がり、デザインやデザイナーをもっと身近に感じていただけたらいいなと思います。

 


たなかみのる

パラボラ舎 代表/デザイナー

電機メーカー勤務後、広報・デザインのパラボラ舎を設立。デザイン業のほか、印刷物のできるまでを体験できる「版フェス」や「マチオモイ帖大分展」などを企画。防災の知識を楽しく学ぶワークショップ「こどもボウサイ(大分市エリア)」のサポートなど、暮らしを作るデザインを行う。http://para-base.net/