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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2020.10.29

堀内弘誓さん (STUDIO HOLIDAY 代表/クリエイティブディレクター)

今回は『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』講師で、クリエイティブディレクターの堀内弘誓さんをご紹介します。

堀内さんはアートディレクターとして、企業のプロモーションやブランディング、プロダクトデザインや企業のコミュニティサイトの立ちあげ、新規サービスのディレクションなど幅広く活動しています。ミスタードーナツの『ポン・デ・ライオン』では、コンセプトメイキングからキャラクターデザインまで手がけるなど、広告やデザインの枠にとらわれず活躍する堀内さんに、お話を伺いました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)


 

CPOアートディレクターを志したきっかけを教えてください。

 

堀内:子どもの頃から絵を書くのが好きで、大学ではグラフィックデザインを学んでいました。当時は広告にあまり興味がなく、学生時代からイラストを描く仕事をしていたので、周りの友人からは僕はイラストレーターになると思われていたでしょうね。

 

大学3年生のとき、アートディレクター宮田 識さんのインタビュー記事を読んだことが僕の人生の転機になりました。宮田さんは、あるファーストフード店のポスターに、きんきんに冷えて凍りついたグラスにシェイクを注いだ写真を起用しました。その際に社長に、ポスターの写真と同じ状態でお客様に商品を提供するよう進言されたそうです。僕は当時、そのファーストフード店でアルバイトをしていて、ある日突然グラスを冷やすための冷凍ショーケースが送られてきたことを思い出しました。あれは宮田さんのアートディレクションと繋がっていたわけです。

それまで僕は、グラフィックデザイナーは情報を伝えるだけの仕事だと思っていたのですが、企業の経営にも関わるデザイナーがいるということを知り、大きな衝撃を受けました。僕もそういう仕事がしたいと思い、宮田さんの肩書と同じアートディレクターを志し、電通に入社しました。

 

 

 

CPOその後、アートディレクターとして企業の経営に関わってきたのでしょうか。

 

堀内:はい。入社してすぐにミスタードーナツのプロモーションチームに入ったことで、多くのことを経験し学んだことで、自分のデザインに対する考え方がより明確になりました。

当時からミスタードーナツは、グッズによる販促が人気を博していたのですが、グッズにばかり目を奪われて、ドーナツの存在感の低下を感じていました。調べると、年間12回のキャンペーンが売上を支えていることがわかり、販促の力を再認識しました。

しかし、あくまでも主役はドーナツです。ミスタードーナツというブランドの本質であるドーナツをモチーフにしたオリジナルキャラクターを作り、その販促商品をお客様が持って帰ることで、またドーナツを食べたくなるようにできないか、販促がまたブランド価値にちゃんと返ってくる仕組みが作れないか、と考えたんです。

当初は知名度のないオリジナルキャラクターでは、グッズの需要が減り、売上が下がってしまうことを危惧する声もあがりました。より良いデザインを求めてたくさんのデザイナーやイラストレーターにもアイデアを出してもらい、さまざまなキャラクター案を提案するもなかなか納得していただけなかったんですが、2年間ほど粘り強く自主提案を続けた結果、最終的に僕が描いた『ポン・デ・ライオン』が採用されることになりました。

 

『ポン・デ・ライオン』

 

キャラクターデザインだけでなく、CM制作時においても「ドーナツを主役にすること」に配慮しました。CMは立体の人形を1コマ1コマ動かして撮影する、ストップモーションアニメの技法で制作しています。見た人に「ドーナツを食べたい」と思ってもらえるようなリアルな質感を出すには、立体が最適と考えたからです。そこでキャラクターも3次元にする必要がありました。

 

CPOキャラクターも大変な人気でしたが、それに伴ってドーナツ自体もヒットしましたね。

 

堀内:このプロジェクトを経験したことで、キャラクターは企業の経営資産になるということがわかりました。広告は次々に流れて記憶から消えていきますが、キャラクターは広告表現でありながらクライアントの商品と同じであり、ちゃんと育てることによって長期的な資産になると気づいたのです。

 

CPOそのほかにも、デザインが企業の経営に関わった事例があればお聞かせください。

 

堀内:キャラクターデザインに限らず、プロダクトでもグラフィックでも、手法にこだわらず枠を超えて企業の問題を解決することを目指してきました。

 

携帯電話サービス『mineo (以下、マイネオ)』では、『FREETANK』というサービスの企画に関わりました。このサービスは、Web上にパケットの貯蔵庫のようなものを作り、パケットが余った人は寄付することができ、足りなくなった人は引き出すことができるというものです。

以前、同社の『マイネ王』というコミュニティサイトで、ユーザー同士のコミュニケーションを促進する仕組みづくりを担当し、成功した前例がありました。そこで構築したコミュニティをもとに、『FREETANK』では、お醤油が足りなくなったらお隣さんに借りにいくような、長屋文化みたいなことをネット上で展開できないかと考えたんです。社会実験的な企画でしたが、このサービスは無形のデザインとして2016年に『グッドデザイン賞』を受賞しました。

 

『FREETANK』サービスのイラスト

 

CPO2018年に『STUDIO HOLIDAY』を設立されていますが、現在はどのような事業に力を入れていらっしゃるのでしょうか?

 

堀内:企業や製品のブランドデザインです。弊社では、まずクライアントに「ブランドとは何か? 何をすればブランドになるのか? ブランド化するメリットは何か?」という話をしたうえで、対象のリサーチから始めます。そのリサーチをもとにその企業の本質的な「らしさ」を掘り出し、ブレない「北極星」として言語化します。そこからようやくCIやVIのような、ビジュアル的なデザイン展開に着手します。コンサルのような仕事ですが、多くの企業の悩みはここにあると思っています。また、長期的に企業に寄り添い、ブランドのメンテナンスやマネジメントもしていければと思っています。

デザイナーは情報を整理して概念化することが得意です。自分の持っているデザインとアートディレクションの力で、経営者の決断を手助けできれば嬉しいです。

 

CPO今後やってみたいことをお聞かせください。

 

堀内:地方のものづくり企業と一緒に、新しい価値をデザインして作っていけたら面白いだろうなと思っています。それはビジネスチャンスであるとともに、自分たちの学びや成長のチャンスにもなると思っています。

地方のクリエイターチームともっと一緒に仕事をしてみたいですね。地元をよく知るデザイナーさんが主役となり、僕が戦略面やアートディレクションでサポートすることで、地域のクライアントとデザイナーの間の翻訳者になりたいと思っています。また、そんなアートディレクターを育てることが今後地方でも求められていくと思っています。

 


 

堀内弘誓

STUDIO HOLIDAY 代表/クリエイティブディレクター

宮崎県出身。

多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。

2001年 株式会社 電通入社、2018年 STUDIO HOLIDAY設立。企業ブランディングからキャラクター開発、サービス開発のコンサルティングまで幅広く手がける。