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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2018.01.25

数野美子さん(デザインCASTER 代表/アートディレクター・グラフィックデザイナー)

今回は、約40年間ものあいだ、大分県でグラフィックデザインを中心に活動を続けているアートディレクター・グラフィックデザイナーの数野美子さんにお話を伺いました。
「あらゆる紙媒体の制作を経験してきた」と語る数野さんに、デザインやデザインを取り巻く環境への思い、そして今後の展望をお聞かせいただきました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA(CPO)


CPO:デザイナーを志したきっかけを教えてください。

 

数野:高校生のときに書店で『アイデア』の別冊『プッシュピン・スタジオ』という1冊の雑誌を見つけたのがきっかけですね。その雑誌との出会いから「どうしてもグラフィックデザイナーになりたい」と思うようになり、美術大学の商業デザイン科に進みました。
今もあまり変わりませんが、当時の日本の美術教育は図画工作がほとんどで、デザインに関する教育がされていないんです。まして地方である大分県で育った私は、グラフィックデザインに触れる機会が少なかったんですよね。

 

CPO:だからなおさら、『プッシュピン・スタジオ』という雑誌でグラフィックデザインに出会ったときの衝撃が大きかったんですね。

 

数野:ええ。高校生の私にとっては、コマーシャルアートとの初めての出会いでした。
私が生まれた頃に、ようやく大学にグラフィックデザイン科が設立され始め、日本のデザインの黎明期ともいえる時代でした。その頃NYでは、デザイン集団『プッシュピン・スタジオ』が活躍し始めます。後に彼らは新しいポストモダン・スタイルで全世界のポップアートムーブメントに火をつけることになります。
1972年に発行された『アイデア』の別冊『プッシュピン・スタジオ』という雑誌は、1965年から1971年の彼らの作品を収録したものでした。当時 2,200円だったこの本は、高校生のお小遣いで買うには少し高価でしたが、自分の大切な出発点として、今も私の書棚に置いています。

 

 

CPO:大学で商業デザインを学び、その後はどのように活動を広げていったのでしょうか?

 

数野:大学卒業後しばらくは東京・大分のデザイン会社に所属していましたが、27歳で独立しました。だから、総職歴約40年のうち、ほとんどがフリーランスとしての活動なんです。
パッケージやショッピングバッグ、書籍、雑誌、ポスター、フライヤー、パンフレット、ロゴマーク、POPなどなど、あらゆる紙媒体の制作を主に経験してきました。
そのほかにも、商品開発におけるヴィジュアル制作や商品ブランディング、医療関係のビジネスツール、広告物提案、地域商品のデザイン力による価値向上などに加え、一般企業や印刷会社職員向けにデザインのスキルアップや考え方・提案の仕方を指導するセミナーの講師など、制作から指導まで幅広く携わってきました。

 

CPO:デザイナーとしての職歴が40年と、非常に長くご活動されていらっしゃいますが、若手デザイナーへの指導などを通じて感じることや違いなどはありますか?

 

数野:私は比較的、印刷現場寄りのデザイナーかもしれません。昔はわからないことがあるとすぐに印刷工場に足を運び、わかるまで説明してもらっていました。現場の知識がないと机上の空論的なデザインをしてしまいがちで、せっかくのアイデアを活かすことができません。デザインだけでなく、印刷や印刷の現場に関する基礎知識を大切にして製作に取り組むといいですよ。

 

CPO:これまで企業と協働した事例をいくつか教えてください。

 

数野:(株)おおやま夢工房との協働は、商品のあり方を大きく変えることに繋がりました。それまでいろんな業者がスポットで関わっていて、パッケージやパンフレットなどがぐちゃぐちゃだったのを、1つのブランドとして整理するよう提案したんです。

 

 

最初に手がけたのが、この『天女の古里』というシリーズでした。当時の社長が海外で販路を開拓したいと考えていらっしゃることがわかったので『ネオジャパン』をテーマに、ネーミングやラベルのディレクションを手がけました。
その後、フランスでの見本市に出品する際に瓶にもこだわってディレクションしたのが『ゆめひびき』シリーズです。ヨーロッパではお慶びのときにアプリコット酒を贈り合う習慣があると聞き、そういう特別なギフトになればと思ってデザインしました。

 

 

CPO:デザインや商品名を変えることによって、具体的な変化はありましたか?

 

数野:やはり『ゆめひびき』はこれまでになかった高級志向が話題になり、会社やそのほかの商品の知名度を上げることにも繋がりました。
2013年の水戸梅酒祭梅酒大会ではパッケージデザイン部門第1位、2015年の全国梅酒品評会では醸造アルコール部門第1位と、デザイン・品質ともに高い評価をいただき、多くの賞を受賞しています。

 

CPO:そのほかの事例についてもご紹介いただけますか?

 

数野: (株) サークルワンの『コスモトーク』『アポロン』の紹介パンフレットなど、告知ツール一連に関わらせていただきました。『コスモトーク』は、携帯電話が繋がる場所なら全国どこでも通話可能なIP通信機です。災害用のハンディタイプや自治体向け防災システム、車載型など多様なバリエーションがあり、実用商品力が高く、国内外で話題となっています。また、『アポロン』は映像配信型ホームセキュリティシステムで、今年の大分県ビジネスグランプリでは最優秀賞を受賞しています。

 

 

 

 

CPO:医療の分野にも関わっていらっしゃるんですよね?

 

数野:ええ。これは現在進行中のプロジェクトなのですが、訪日外国人が病院で診察を受けるときのコミュニケーションのための翻訳ツールを制作しています。これは、英会話教室の社長から新たなビジネス展開についてご相談を受けたことがきっかけで、一緒に組み立ててきた事業です。この事業は、ゆくゆくは全国に展開して行きたいと考えています。

 

CPO:企業と協働する上で、意識していることはありますか?

 

数野:打ち合わせの段階でしっかり対話して、クライアントの目的や解決すべき課題をしっかり引き出し、整理することです。複数のビジュアル案を提示してプレゼンするデザイナーも多くいますが、私はビジュアル案はブラッシュアップしたものを1案しか出しません。だって目的は1つなんだから、初めにきちんと目的が共有できていれば1案で十分のはずでしょう? でも、もしも私の提案と目的にズレがあったら、何度でも無料で修正に応じますよ。

 

CPO:今後の展望や取り組んでみたいことがあれば教えてください。

 

数野:地元大分の商品を、デザインの力で世界や全国を意識した「売れる商品」にしていきたいですね。
商業デザインを取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。その流れのなかで、最近では紙媒体のグラフィックスだけでなく、クロスメディアのアートディレクターとしての仕事も増えてきました。
時代や環境の変化をなるべくキャッチして、これからも新しいことにどんどん挑戦し続けていきたいと思っています。日々、学びの連続ですね。

 

 

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数野美子
デザインCASTER 代表
アートディレクター・グラフィックデザイナー
武蔵野美術大学卒業。
紙媒体デザイン、商品パッケージデザイン、編集デザイン、商品ブランディング等をアートディレクター、グラフィックデザイナーとして携わる。

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