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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2017.08.31

光浦高史さん(一級建築士)

今回は、『DABURA.m 株式会社』代表取締役の光浦高史さんをご紹介します。

神奈川県出身の光浦さんは、縁あって大分へ活動拠点を移し、2009年に独立、2015年『DABURA.m 株式会社』を設立しました。以来、住宅や店舗、宿泊施設など、さまざまな案件を手がけながら、都市や環境と向き合ってこられました。今回は具体的な事例をご紹介いただきながら、設計の際の考え方やクライアントとのやりとりについて伺いました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA(CPO)


CPO:建築家を志したきっかけを教えてください。

 

光浦:高校2年生くらいまではスペースシャトルを作る人になりたかったんです。しかし、将来的に地球から石油が枯渇するという本を読み、宇宙よりも地球のことを、なおかつ環境をテーマに仕事をしたほうが面白いんじゃないか、と思うようになりました。環境といっても、政治、経済、科学など、いろんな切り口がありますよね。その中でも、形のあるものをきちんと世の中に対して提示したいと思い、建築や都市を作る道へ進もうと思ったのがきっかけです。それと、中学生くらいの頃からファッションやデザインが好きだったというのも影響していると思います。

 

CPO:関東のご出身ですよね? 大分との縁はどういう風に始まったんですか?

 

光浦:私が所属していた大学の研究室の石山修武先生が、大分市のアートプラザの保存運動の一環で、大分市で講演をされた際に、大分市出身の建築家の青木 茂先生に「誰かうちの事務所に紹介してくれないか」と相談されたそうです。それで、石山先生からのご紹介で青木先生にお世話になることになりました。

 

CPO:拠点を変えるというのは、大きな変化だと思うのですが、すんなりと決断できましたか?

 

光浦:そんなに難しくはなかったですね。関東は人口は多いですが、同じような人たちでコミュニティができあがることが多く、長くいると新鮮味を感じなくなる部分もあります。

大分には、海があり、山があり、都市の環境も、自然の環境も揃っています。大分へ来た当初「みんなどうして地方へ来ないんだろう」と思いました。これから取り組むべきテーマがたくさんあり、建築家にとって面白い、やりがいのある場所です。「みんな地方へ行って、自分の仕事をみつけた方が面白いよ」って言いたいですね。

 

DABURA.mの携わった事例を集めたポートフォリオ集

 

CPO:クライアントから依頼を受けた場合、どういう過程を経るんでしょうか?

 

光浦:まず、クライアントの話を聞き、そこに潜んでいる可能性を探します。依頼された土地や地域の来歴、その地域がどういう位置付けなのか、また、リノベーションの依頼であれば既存の建物の来歴などをリサーチします。

建物を建てるということは、人生や社運を左右する力があると思います。うまくいけば、クライアントの人生や会社の方向性がガラッといい方向へ行く。だからこそ、クライアントや場所の持つ性質や特性を調べ、そのプロジェクトでしか実現できないことはなんだろうかと考えていく、複雑な関数を解いてゆくみたいな感覚です。

自分の中に素晴らしいデザインメソッドがあって、それをクライアントに示す、というような、ヒーロー的やり方ではないですね。

 

 

CPO:いままで企業との協働で手応えのあった案件について、お聞かせください。

 

光浦:別府の老舗旅館がクライアントとなった『別府温泉 テラス御堂原』ですね。クライアントにとっては三軒目の旅館となる案件でした。私は土地探しから関わったのですが、早い段階からクライアントとやりたい方向性を共有できた、貴重な機会でした。

 

CPO:土地探しから関わる案件というのは、珍しいことですか?

 

光浦:多くはありませんが、本当にいいものを建てたいと思っているクライアントほど、早い段階から相談してくれます。

 

CPO:コンセプトや事業計画に関わることもあるんでしょうか?

 

光浦:この旅館の場合は、コンセプトはすでにお持ちでした。しかし、当初は20客室作りたいという計画で、それでは窮屈で、土地の良さが活かされないことがわかりました。しかし、客室を減らすと収支が変わってしまいます。ではどうしようかというところから話し合いました。

 

『別府温泉 テラス御堂原』外観 photo:イクマサトシ(techni staff)

 

 

ロビー棟内部からテラスへ続く空間 photo:今枝あき(KINOCO PHOTO)

 

CPO:プロジェクトがうまくいくときと、スムーズにいかないときとの違いはなんでしょうか?

 

光浦:結果だけ聞くとどれもスムーズなように聞こえるかもしれないのですが、多くの場合は「生みの苦しみ」を経て完成に辿り着きます。それが当たり前だと思っています。 空間を創造するということは、建築家とクライアントとの泥臭いコミュニケーション無くしてはありえません。既製メーカーに依頼したら、プランの打ち合わせは3〜4回くらいで終わると思うんですが、我々の場合はプランAからスタートして、A’からG、Hくらいまでいくのが普通で、場合によってはP、Q、Rまでプランを作成することもあります。創造性があるものを作って行くときには、クライアントにも困難なプロセスを一緒に楽しんでくれるような感覚がないと、成立しないかなと思っています。

 

CPO:シンプルでも、やりたいことを持っているクライアントとの方がやりやすいということですね。

 

光浦:そうですね。たとえば、これは私が独立してから初めて依頼された案件です。

佐伯のご夫婦が運営されている動物病院の建て替えの依頼でした。エコロジカルな思想を持っている先生で、ペットの暮らしている環境を整えたり、感じているストレスを排除したりすることで症状を改善していくんです。リサーチに数日通ったんですが、近所の患者さんたちが先生や奥様とゆったりおしゃべりをしている光景に出会いました。

この案件は、融資に関する条件などの理由からスケジュールが非常に短く、我々は依頼を受けてから10日でプランを作ってプレゼンをしました。

 

動物病院の外観。木の固まりを切り抜いた様な印象的な連続窓

 

光浦:プラン作りの際に私がポイントだと考えたのは、まず、先生の思想が建築に現れていないといけないということ。それと、建設のしやすさやコスト面を考慮すること。そして、周りに並木や公園がある川沿いの敷地だったので、その環境の持っている力を活かす、ということでした。

動物病院とカフェと住居を併設しなければならない複雑な案件だったので、そういうときこそシンプルに計画しました。

また、佐伯産の材料で建てられないかと考え、構造体、内装、外装に佐伯の木を使いました。昔からこの地域のまちの風景をつくって来た素材と同じものということです。そうすることで、1箇所から一気に資材を購入できてコストが抑えられますし、施工を依頼した地元の大工さんにとっても、使い慣れていて加工しやすい材料を使うことができました。

 

CPO:クライアントの思想や周囲の環境が反映された、とても気持ちのいい空間ですね。

 

動物病院の1階カフェスペース

 

光浦:建築に限ったことではないのですが、クリエイターの「使い方」がわからない方が多いのではと感じています。たとえば、「建築家使い方講座」みたいな機会があってもいいのではないでしょうか。どういうふうに声をかけて、何を依頼して、どこから一緒に考えてもらうか、分かっていると使いやすいですし、とっても得です。

特に建物を建てた経験がなければ、なんでそんなにお金がかかるのか、建築家がどんな働きをしているのか、わからないですよね。

どのようなルートを通っても、建物を建てるのにはお金はかかります。しかし、とても効果のある方法もあれば、一見お得そうに見えてもそうでもない方法もあります。

一般の人には複雑で不可解な建築というプロジェクトにおいて、建築家はクライアントにとって水先案内人であり、用心棒です。いい建築家は、クライアントの利益を最大限に確保します。短期、長期とさまざまな視点で見て、それぞれのメリット、デメリットを説明しながら先導して行く存在です。そういった建築家にまずは思っていることの全てをぶつけて、そして任せてほしいと思っています。

 

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光浦高史

一級建築士

1977年 神奈川県川崎市生まれ

早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、青木茂建築工房に所属。

2009年 池浦順一郎とDABURAを設立、共同主宰

2015年 DABURA.m 株式会社設立

日本文理大学工学部建築学科非常勤講師

大分大学工学部福祉環境工学科建築コース非常勤講師

HP:http://dabura-m.info

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