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おしらせ

2019.05.16

西口顕一さん(大分県立芸術文化短期大学 准教授/ニシグチデザイン室/グラフィックデザイナー/アートディレクター)

今回は、大分県立芸術文化短期大学准教授で、グラフィックデザイナー・アートディレクターも勤めるニシグチデザイン室の西口顕一さんにお話を伺いました。西口さんは、大分県内を中心に企業のロゴやブランディング、パッケージ、プロモーションツールなどを手がけています。「クライアントとの対話の積み重ねによって最善のデザインを作りあげる」という西口さんに、これまでの企業との協働事例や、クリエイティビティを発揮しやすい条件などをお聞きしました。

 

聞き手:山出淳也
取材日:2019年4月12日

 


 

山出:まずデザインの仕事を志したきっかけと、これまでの経緯を教えてください。

 

西口:幼少期からものを作って人に喜んでもらうことが好きでした。高校で美術部に入り、デッサンや油絵を描く中でポスターコンペにも出品する機会が増え「テーマをもとにメッセージを伝える」という視覚表現に興味をもちました。デザイン系の大学と大学院に進学し、グラフィックデザインを中心としたタイポグラフィーやブランディングやの基礎を学び、自分で制作したイラストやポスターを販売するようになりました。

 

卒業後は教職に就くかデザイナーとして活動するかで悩みました。企画段階からデザインに関わることができるインハウスデザイナーやディレクター職で現場経験を積みたいと考え、トッパンアイデアセンター西日本(現凸版印刷 株式会社)のクリエイティブ部門に就職しました。ポスターやパンフレットなど、紙媒体を中心としたプロモーションツール、パッケージデザイン、通信販売の企画・制作に関わったほか、市場調査や販売戦略などマーケティングを意識した企画コンペの提案にも参加し、とても鍛えられました。

 

山出:大分県立芸術文化短期大学にはいつ着任されたのですか?

 

西口さんは大分県立芸術文化短期大学のV.I計画も手がけた

 

西口:2010年です。僕が美術やデザインに興味を持つきっかけには「恩師」の存在があり、身をもって「デザイン学」を教えてくれたのも「恩師」です。僕も同じような役割を次の世代に対して果たしたいと思っています。
現在は大学の准教授とデザイナーとしての活動を並行しておこなっています。個人でご依頼をお受けすることもありますが、案件によっては学生と協働することもあります。教員という立場から、産学官連携での研究やデザインなど、一個のデザイナーとは異なる社会との関わりが実現できることに意義を感じています。

 

山出:これまで企業と協働された事例をお聞かせください。

 

西口:『大分いっち』は国が全国に設置した無料の経営相談所『よろず支援拠点』から話をいただきました。

 

西口さんがデザインとディレクションをおこなったイチゴのスイーツ『大分いっち』(オードファーム)

 

「規格外の大分産イチゴを使用して新しい大分の定番土産を作りたい」との依頼だったのですが、クライアントにはこれまでにパッケージ制作の経験がありませんでした。商品自体もまだ試作段階でしたし、ネーミング、箱のサイズ、仕様なども未定で、企業は何から手をつけたらいいのかわからないという状況でした。

 

山出:商品そのものの企画にも関わられたのですか?

 

西口:はい。実際に試食しながら、味だけでなく食べやすいサイズ感や、クリームと調和する食感を検討しました。僕が具体的な指示をするというよりも、クライアントと一緒に考えていきました。
また、パッケージは駅構内で大きな荷物を持った女性やサラリーマンが手に取りやすいことを考えて、この薄さになりました。

 

山出:イラストレーターの起用も西口さんから提案ですか?

 

西口:はい。もともと企業から「大分のモノや人だけで作りたい」という要望がありました。はじめは自分でイラストを描いてみたのですが、女性向けであるということと、商品の強みである「無香料・無着色・ハンドメイドの商品」を表現するために、県内在住のイラストレーター・網中いづるさんに依頼をしました。依頼の際に、抽象的な描写でイチゴのイメージを取り入れつつ、今後のパッケージ展開にも対応できるように360度回転させても使えるイラストレーションにしたいとリクエストしたのですが、網中さんはすぐにイメージを共有してくれました。商品ロゴも網中さんが書いたものです。

 

山出:発売開始から、具体的にはどのような成果が生まれましたか?

 

西口:初回は5個入りの商品のみを販売したのですが、好評につき2個入り、10個入りと展開が生まれ、専用のショップバッグも制作しました。女性に人気になると男性が女性に買っていくという構図も生まれました。現在も売れ行きは好調で、社名ロゴの制作や次の企画も進んでいます。

 

 

山出:企業全体のブランディングや事業計画など企業の事業に抜本的に関わられたことはありますか?

 

西口:大分では抜本的な依頼は少ないですね。今ご相談いただいている案件も、きっかけはパッケージデザインだったのですが、会社のあり方やスローガンを見直すようご提案しています。スローガンのもとに社員が一体になったときに、初めてブランドが動き出すと考えています。

 

山出:さまざまな商品開発に挑戦することは重要ですが、プロダクトアウトのような発想だと流通の部分が見えなくなるので、売り方も一緒に考える必要がありますよね。

 

西口:企業とデザイナーが、同じ方向を向いて一丸となって進められるのが理想です。ときどき「デザインも売り方もおまかせ」と言われることがありますが、それではクライアントとイメージが共有できず、うまくいかないケースが多いです。商品にとって重要なのは、商品力です。デザインの役割は、それにどう付加価値をつけるかということです。それぞれの立場や得意分野で専門知識を出しあって情報を共有し、対話を積み重ねることで、「デザイン」と「商品」の最善を一緒に作りあげていくことが大切ですね。

 

たとえば、どこで売りたいか、誰に売りたいかによってパッケージデザインはまったく異なります。それが定まっていなければ、デザインを進めることは難しいです。商品に関しては依頼者の方が専門なので、マーケットのなかで狙いたいポジションや、価格帯や利益率などをしっかり考えていただいたうえでデザインをしていかないとせっかく頑張って作った商品が埋もれてしまいます。

 

山出:企業とデザイナーが協働する機会を増やして、多くの事例を生み出していきたいですね。

 

西口:そうですね。でも、クリエイターとの協働に踏み込めない企業も多いと思います。たとえばパッケージをデザインする場合、ロット数の問題もある。また、どうやってクリエイターに依頼すればいいのかわからないという方もいらっしゃいますよね。クリエイターと協働に取り組むための勉強会を開催し、おおまかな流れを把握したうえで、事業規模によって小さなことから段階的に取り組んでいくという手法もあると思います。時間をかけて少しずつ取り組んで、5年〜10年後にすべてがリニューアルされているというやり方でもいいのではないでしょうか。

 


 

西口顕一
大分県立芸術文化短期大学 准教授/ニシグチデザイン室

九州産業大学大学院修士課程修了後、トッパンアイデアセンター西日本(現・凸版印刷)企画・デザイン制作部門に従事。2010年大分に移り、県内を中心に企業のロゴやパッケージ、ブランディング、プロモーションツールを手がける。