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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2019.03.28

坂口 剛さん (株式会社 野村総合研究所/プリンシパル)

今回は『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』講師の坂口 剛さんをご紹介します。野村総合研究所 プリンシパルとして、省庁の政策立案支援、民間企業の事業開発、地域での起業・創業支援などを手がけています。『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』では、プロデューサーコースの講師を務めた坂口さんに、クリエイティブ産業における事業開発のポイントや大分県のポテンシャルなどをお伺いしました。

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)


 

CPO:坂口さんは、全国各地で企業や自治体と一緒に、クリエイティブ産業の創出や起業・創業支援に携わっていらっしゃいますが、このような取組をはじめるまでに、どのような経緯があったのでしょうか?

 

坂口:新卒で野村総合研究所に入社し、しばらくして、繊維・アパレル産業に関する業務を担当するようになりました。グローバルでの資材調達方針や輸出戦略の検討、業界の基準策定など、官民問わず、幅広いテーマで活動していました。ちょうどその頃、経済産業省に『クリエイティブ産業課』という部署が新設されまして、繊維・アパレル産業に知見があるということもあり、担当者の方とこの分野で意見交換をおこなうようになりました。当時は、日本における「クリエイティブとは何か、クリエイティブ産業とは何か」という明確な定義もありませんでした。2011年、経済産業省の方々と一緒に、クリエイティブ産業の定義付けや市場規模の算出、経営資源としてのデザイン、個別の施策方針などの検討をおこないました。それがクリエイティブという文脈に携わるきっかけでした。

 

CPO:経産省が発信するクリエイティブという言葉の定義は、このときに作られたものだったんですね。

 

坂口:最近では、大分でもクリエイティブ産業や、クリエイティブを活用した事業開発への意識が高まっていますね。実際、『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』のような取組が始まっていますし、そこには優秀なクリエイターが数多く集まっています。
僕は『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』では、プロデューサーコースでお話をさせていただきました。プロデューサーは、コンセプトの立案から最終的な販売に至るまでの事業全体を統括する役割です。そのため、事業の全体像を描き、必要となる機能や役割を特定し、適切なプレイヤーを繋ぎ合わせ、事業成果を最大限に高めることが求められます。しばしばクリエイターを右脳系人材と呼ぶことがありますが、プロデューサーは、その役割を考えると、右脳・左脳の両方が必要だと思います。

 

 

CPO:ニーズの発掘や新たな価値を発見できるスキルを身につける必要があるということで、『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』では、アイデアの出し方から事業化について受講生にご指導されていましたね。

 

坂口:はい。アイデアの出し方も、スキルと考えています。やり方さえマスターすれば誰でもできるようになるというのが基本的な考えです。アイデアは急に浮かぶものではありません。でも、出し方さえ身に着けていれば、十分アイデアは創出できるといえます。『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』では、実際のアイデア創出の手法を学び、ワークショップを通じて、尖ったアイデアに作り込んでいくプロセスを体験していただきました。
一方で、やみくもにアイデアを出せばいいというものでもありません。新しい商品・サービスの次の展開を検討するためには現状を分析する必要がありますし、これから起こる未来を知り、どこにホワイトスペースがあるのかを探るということも必要です。これもアイデアの出し方同様、スキルの1つです。今回のプロデューサーコースは、参加されているクリエイターの方々の既存の右脳スキルに、新たな左脳スキルを付与していくという内容でした。

 

CPO:今後、参加したクリエイターを含め、大分のクリエイティブ産業では、どのような展開が期待されるでしょうか。

 

坂口:今回関わらせていただき、『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』はスキルを取得する場のみならず、人材のプラットフォームとして機能していることがわかりました。クリエイターの皆さんとお会いし、毎回、懇親会でお酒を飲みながら、「このようなプラットフォームがあるなら、今後は組織化して、新会社を立ち上げてもいいのでは?」と思うようになりました。特定のスキルに強みを有し、プロデューサーの視点で物事を捉えることができる人材の集合体です。案件に応じてチーム編成さえできれば、水準の高い成果を打ち出すことができると考えています。
ただし、これを実現するために、圧倒的に足りない機能があります。それは、営業力です。
営業力は、実践の中で身につけるものですし、『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』で学ぶことはできません。得手不得手もありますし、クリエイターの方にゼロから営業力を身につけていただくことは、生産的ではないと思います。この組織に、営業に特化した人材を投入し、地域のクリエイティブに関する仕事を切り出せるようになれば、よりダイナミックに、地域を変えていけるといえます。
実際、大分には重厚長大型の産業をはじめ、クリエイティブとは馴染みの薄い業種や業態が数多く存在しています。また、隣県に、クリエイティブ関連の仕事が数多く流出しているという状況であることも理解しています。
この状況は決してマイナスの状態ではなく、「まだまだ手付かずの仕事が数多くある」「大分県内で仕事を内製化できる機会がある」と、ポジティブに捉えることができますし、マーケットサイズも大きいです。これまでクリエイティブとは疎遠だと思っていた企業にとっても、クリエイティブを活用することで、もう一段、自社の製品の付加価値を向上させる可能性が生まれますし、最終的には、売上向上や新規ビジネスの創出にも十分繋がると思います。

 

CPO:そこで重要なのが営業マン、つまり有望分野を開拓し、仕事を取ってくる役割なんですね。

 

坂口:はい。営業マンを組織として雇用・配置し、フリーランスが主体のクリエイターの方々の営業機能を共通化させるという手法です。
実は、ある地域でも同じ課題があり、昨年、どのような手立てがあるか、検討を進めてきました。その地域では、クリエイティブな街というイメージがあるにも関わらず、クリエイティブに関連する仕事の多くは隣接県の代理店に発注している状態にありました。統計情報を活用し、市際収支も細かく分析したところ、数千億円が域外に流出している、いわば「クリエイティブ赤字」の状態であることがわかりました。
そこで僕らが推進したのは、クリエイターが貢献できる業務の開拓や特定をおこない、企業とクリエイターを直に繋ぐ窓口となる“営業力のある人材”を地域で雇用することでした。実際、営業力のある人材を市役所で1名雇用し、地域の新しい取組がスタートしています。
今後は、地域内のどこに、どのようなことを得意とするクリエイターがいるのか、そのデータベースを構築することも必要になってくると思います。データベースがあれば、企業が必要な人材を検索し、直接クリエイターに相談することもできますよね。営業マンは雇用するものの、それ以外のチャネルも有することで、仕事に広がりがでます。また、データベースは常に情報を最新の状態にしておくことが必要ですので、クリエイターが自ら情報にアクセスし、定期的にアップデートできる仕組みもあるといいですね。大分でのクリエイターの組織化、会社化の推進を期待したいです。

 

 

CPO:その他、これまでに坂口さんが地域と関わった案件について、具体的に教えてください。

 

坂口:野村総合研究所では、2030年研究室という組織にも兼務しているのですが、ここでは、地域にこれまでなかった新しい事業の創出を支援する『イノベーションプログラム』という活動をおこなっています。地域金融機関や次世代経営者がファウンダーとなり、地元クリエイター、行政も巻き込みつつ、新たな視点や切り口から新しい事業の種を作っています。2015年から十勝、2017年から沖縄、2018年から新潟、山陰と4地域でプログラムが始まっており、これまで会社化した案件、新サービス・新商品の展開に至った案件が多数あります。
たとえば、絶景に泊まれる移動式タイニーハウス事業や中小企業向けの革新的な福利厚生サービス開発、さらには100%十勝産野菜だしやクラフトウイスキー、アップサイクル事業などのものづくりに至るまで、幅広い分野で、地域になかった事業が始まっています。

移動式タイニーハウス『Koya lab』

 

沖縄では、那覇市の不動産を舞台に、クリエイターとのコラボ事業が始まりました。まず、空き物件のオーナーさんから、クリエイターに100〜300万円の費用が渡されます。クリエイターはその費用で自分好みに部屋をリノベーションし、実際に活動・居住します。家賃はリノベーション費用に応じて、月々5万〜7万円に設定されています。クリエイターが自らリノベーションするので、とても面白い部屋に仕上がります。一般的に、“面白い”部屋は、その使い勝手から入居者にとって敬遠されがちですが、有名またはこれから将来の活躍が期待されるクリエイターが関わった物件です。クリエイターが将来退去してしまっても、クリエイターがリノベーションした部屋ということもあり、待ちが発生しているという状況になります。いわば、すでに不動産としての価値が上がっている状態です。昨年スタートしたこの活動も、すでに5件の引き渡しが完了し、4件がリノベーション中です。先日、その1つの格闘技アパレルショップ『EVER GROUND』にお邪魔しましたが、内装も店内の雰囲気もすばらしく、面白い活動に発展していることを実感しました。

格闘技アパレルショップ『EVER GROUND』

 

クリエイティブの力は、事業まで落とし込んではじめて価値として認知されます。『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』に参加されているクリエイターの方も、そのことを深く理解し、さらに面白い、具体的なアクションをはじめています。今後、大分から新しい動きが進んでいく予感がありますし、自分自身も1つのご縁として、受講生の皆さんの活動を継続してサポートしていけたらと思っています。

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坂口 剛
(株)野村総合研究所 プリンシパル

熊本県天草市生まれ。大阪大学大学院修了後、(株)野村総合研究所入社。省庁の政策立案支援、民間企業の事業開発、地域における企業・創業支援などを実施。熊本県民の総幸福量を最大化することを目指した“くまモン”とのコラボ事業『くまラボ』のフェローとしても活動。

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