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CREATIVE PLATFORM OITA

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おしらせ

2019.01.24

永田宙郷さん(合同会社 ててて協働組合 共同代表/プランニングディレクター)

今回は『おおいたクリエイティブ実践カレッジ』講師の永田宙郷(おきさと)さんをご紹介します。プランニングディレクターとして、さまざまな企業と協働する傍ら、作り手とバイヤーを繋げる『ててて見本市』の企画・運営もしています。永田さんは、企業の課題を見直すことやプランニングを重要視し、幅広いネットワークを駆使しながら、さまざまな実績を積んできました。そんな永田さんに、具体的な事例を通して、企業とクリエイターが協働する際に意識していることをお伺いしました。

 

聞き手:CREATIVE PLATFORM OITA スタッフ(CPO)


 

CPO:まずは、永田さんの「プランニングディレクター」という肩書についてお聞かせください。

 

永田:肩書きは役割分担毎でつけるじゃないですか。なので、企画からアウトプットまで全体に関われる肩書きが思いつかなかったときに、仕事の範囲を広く持たれていて、自分にとって憧れの仕事をされていた『リビングワールド』の西村佳哲さんが「プランニングディレクター」と名乗られていたので、僕もいずれそうなりたいとあやかって名乗りました。役割としてはプロデューサーに近いのですが、商品の色や見た目だけでなく、ビジネスの仕組みから整えるのがプランニングディレクターの仕事です。プランニングをベースに、リサーチ、コンサルティング、クリエイティブディレクションまでおこなっています。

 

CPO:現在に至るまでの経緯やきっかけを教えてください。

 

永田:高校卒業後、金沢美術工芸大学に入学し、学生時代は日本刀の研究をしていました。それで、19歳のときに現代に必要とされる刀とはなんだろう?と考え、その理想像を作りたくて企画書を作成し、『エルメス』に送ったんです。

 

 

CPO:すごい行動力ですね。なぜその企画書を『エルメス』に送ろうと思ったのでしょうか?

 

永田:伝統と最先端の感性の両方が理解できる企業であり、職人工房だと感じたんです。コネクションはありませんでしたが、2年後には『エルメス』と正式に契約し、日本刀の鞘を作るプロジェクトが始まりました。
当時、伝統工芸とファッションのコラボは珍しかったので、『イスタンブール・ビエンナーレ』に招聘され、最年少の日本代表アーティストとして参加しました。その経験から、伝統と最先端のものを繋ぎあわせ、既存の文脈を変えることで物事の可能性が広がる面白さを知りました。

 

CPO:大学卒業後はどのような仕事に就かれたのですか?

 

永田: 『金沢21世紀美術館』の建設準備局に在籍し、立ち上げに携わりました。とても充実していたのですが、より生活に近い仕事をやってみたいと考え、デザイン会社へ転職しました。その後、父の興した『株式会社 イクス』を引き継ぎ、プランニングとグラフィックを軸にした会社として2018年の8月まで、10年10期運営しました。今は新しい会社の設立を考えているところです。

 

CPO:永田さんが企業と協働された『高岡ラムネ』の事例についてお聞かせください。

 

永田:2012年に、富山県高岡市にある老舗和菓子店『大野屋』から、「落雁などに使う古い菓子用木型があるので、これを使って何かできないか」と相談を受けました。
実際に見せていただくと、とても美しい木型だったので、それを使ってこだわりのラムネを作ってはどうかと提案したんです。木型を用い、素材にこだわって本当においしいラムネを作ったら、落雁に馴染みがある世代には懐かしく、若い人も手に取りやすい商品が生まれるんじゃないかと考えたんです。

 

 

CPO:『高岡ラムネ』は、どのような顧客層や販路をイメージして開発されたのでしょうか?

 

永田:ちょうど北陸新幹線が開通するタイミングだったので、「OLD&NEW」をコンセプトに、伝統的な文化を持ちながらも常にチャレンジを続ける高岡のまちを表現できるように開発しました。商品名を『高岡ラムネ』に決め、プチギフトとしてのまとめ買いを想定し、価格は500円に設定しました。
自社の店頭と既存の卸先から販売を開始し、展示会への出展、百貨店、自然食品系スーパーと、徐々に販路を広げていきました。2013年に発売し、現在は年間3万袋くらい売れています。職人の生産可能な量にあわせて、あえて販路を広げず、しっかりと商品を伝えてくれるところを中心に卸しをしています。高岡市内での販売が主ですが、『三越』など百貨店や『D&DEPARTMENT』など、情報発信の効果が高いお店には卸すようにしています。

 

CPO:お話を聞いていると、リサーチを重要視されているのがわかります。

 

永田:そうですね。相談を受けたらまずリサーチして、オファーいただいた内容自体を検証することから始めるようにしています。
特に小さな企業だと、オファー方法も課題の洗い出しの方法もあまり分からずに相談に至るケースが多いので、例えばパッケージのデザインの依頼だとしても、本当にパッケージのデザインを変えることで目的に叶うのかなどあらためて考えます。
本来、そういうことはコンサルタントがすることだと思いますが、コンサルタントに頼むと、戦略を立てるまでに莫大な費用が掛かる。だからといって最初からグラフィックデザイナーに頼むと、どんな問いにもグラフィックで返そうとする。そうではなくて、商品開発の目的から一緒に考え、全体を見てくれる人を企業は必要としているんです。

 

それから、デザイナーは医者に似てると思っています。身体と同じく、会社のなかで調子が悪いなと思うことがあるから相談しようと思う。まずは一緒に問診しながら原因や実際の治療というか、実施のプランを練りたいと思います。病院に行くとき、事前に手術の方法まで決めて医者に頼みにいくことはさすがにないでしょ?それなのにものづくりだと、いろんなことを決めてから実施だけ相談に行くケースがすごく多い。それと、治療法が1人ひとり違うから解決手段もちがうはず。そのため、僕が携わってきたプロジェクトのアウトプットも必然的に多岐に渡っているんです。

 

 

CPO:永田さんが企画・運営を手がける『ててて見本市』について教えてください。

 

永田:地域や文化を背景にものづくりをする作り手の商品を紹介する見本市で、「作り手」「伝え手」「使い手」を繋ぎ、交流する場を作るためにおこなっています。
中量生産・手工業でものづくりを実践する「作り手」を全国から募り、審査で100組を決定します。毎年4,000人近くのバイヤーやメディアが来ます。使い手(=ユーザーや消費者)とのタッチポイントに近いことが重要なので、商社はできる限りお断りしていて、こだわりのものを売ろうという意識を持った小売店が直で買い付けに来ます。
僕はものづくりには人との繋がりや交流の場が必須だと考えています。ですから、『ててて見本市』では出展者同士の飲み会も大事にしています。ものづくりが衰退する理由の1つは、作り手が地元の同業者としか交流していないことです。商品は媒介者を通じてエンドユーザーに届きますし、他地域との交流があれば技術も広がります。

 

CPO:大分の企業との協働の可能性はありますか?

 

永田:元々、九州の生まれですし、4月から事務所を福岡に構えるので、お気軽にご相談ください。
また、いつかは福岡に『ててて見本市』に参加する作り手の商品を集めたショップを出したいと思っています。作り手にとって、ショップはものを売る場所ではなく、自分の仕事を伝えてくれるパートナーです。このショップは小売店の可能性を検証する場にしたいと考えています。

 

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永田宙郷
合同会社 ててて協働組合 共同代表
プランニングディレクター

 

1978年福岡県出身。

金沢美術工芸大学芸術学卒業後、金沢21世紀美術館勤務、デザイン事務所勤務を経て現職。

各地で地域活性や商品開発デザイン・ディレクション、コーディネートをおこなう。
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