MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

INTERVIEW

Interview

2017.03.31

異なる視点があることに感謝したい

ロフトワーク 林千晶

林千晶
page1

それぞれプロとしての領域を信じあうべきだと思うんです

 


 

山出:今日は、ロフトワークを立ち上げられた経緯や問題意識と、いくつか特徴的なプロジェクトのご紹介、そして今後どういう風に進んでいくべきか、未来の展望を伺いたいです。

 

林:正直に言うと、今日はインタビュアーが山出さんだから、いつものように耳障りのいい言葉を言いたくないなという甘えがあります。だから「こうだと思います」ということではなくて、私自身も悩んでいることをお話ししたいです。

 

山出:いいですね。どうあるべきかということを2人で掛け合いながら進めてきましょうか。話が多岐に渡ってもいいですよ。ぜひ茨城県北芸術祭の話も聞きたいですし。

 

IMG_1124

 

林:県北芸術祭、たのしかったですよ。

県庁チームも企画チームにも、芸術祭の企画や運営経験のある人が少なくて、実験的で手探りの芸術祭でした。でも振り返ってみると、想像以上にうまくいったんじゃないかなと思っています。

他の都市からのアクセスを考えると茨城県が遠すぎることや、作品同士が離れすぎていること、作品の力より自然の方が勝ってしまうことを恐れていたんですが、距離の問題はむしろドライブが楽しめるということで喜ばれたんです。

それからアート作品と自然は、どちらか一方がもう一方を淘汰するのではなく、双方の評価が足し算されることがわかりました。アーティストもそれを読み取ってくれて、ちょうどいいバランスで作品を考えてくれたように感じています。

でも、そもそもアートがなければその場所に行くことがなかった人たちが、たくさん足を運んでくれたんですよね。それがすごく嬉しくて。

 

 

山出:林さんはコミュニケーションディレクターという肩書きでしたが、そこで工夫されたことはありますか?

 

林:プロジェクトメンバー間で、「褒める」「お礼を言う」「できる人がやる」ということを心がけていました。できていないことに文句を言うのではなく、できる人ができることをやろうと。そうすると、視点や能力の違いがあることに感謝の気持ちが湧いてくるんです。

たとえば、原稿の確認依頼をすると、行政の人が細部までレビューしたものが戻ってくる。「どうしてこんなに細かいところまで…」と初めは戸惑ったけど、見方を変えれば、私たちが気づかないことを指摘してくれる、貴重なレビュアーなんですよね。だから「今回もよろしくお願いします」「こんなに丁寧に校正してくれてありがとうございます」というコミュニケーションに変えることを意識しました。

異なる視点があることに感謝したいと思ったんです。

 

 

山出:ロフトワークって専門性の高い仕事が多いから、通常のお仕事では意見が優先されることが多いのでしょうか?

 

林:たとえば、Webサイトを作っている場面で、どうしてもっと早くできないのかとクライアントから聞かれることがあります。でも、私たちも1日でも早くサイトを公開したい気持ちは一緒なんです。多くのことに言えると思いますが、Web制作には大小様々で表面からは見えにくい、いろんな作業があって、その進行管理やディレクションに私たちはプロとして取り組んでいます。

サボっているわけでもないし、わざと遅れさせようとしているのでもない。専門知識や経験値から考えて「それを実現するならあと1週間かかります」と言っている。そこは、プロとしての領域をお互い信じあうべきだと思うんです。

もっと良くなるための提案は歓迎しますが、「なぜ早くならないのか」という会話から生まれるものはあまりないと思います。持ちうる知識や経験を生かして、メンバーそれぞれが最善の方法で進めるプロジェクトは、必然的にうまくいくはず。

 

山出:すごく繊細なお話しですね。
たとえば「ロフトワークに頼めばうまくいく」みたいに、プロに依頼するって、ともすればインスタントに考えられがちですよね。でも本当は、クライアントも考えることをやめてはいけないんですよね。一緒に答えを見つけ出していかなければならない。

 

IMG_1107

 

林:そう思います。それと関連して、私が大切にしているのは「動的」というキーワード。デザイナーに依頼すれば綺麗なものができますが、それはあくまで「静的」なことと言える気がします。

それは、腕のいいお医者さんに手術してもらったら、一生健康な体でいられるのかということに似ていると思います。手術のあとも健康な体で生き続けるためには、食事するとか、運動するとか、日常的に繰り返される行為が重要ですよね。

腕のいいお医者さんの手術もデザイナーの提案による改善も、もちろん効果はある。でもそれが運用され続けていくためには、たった1回の行為に頼るのではなく、その後も続けていく「仕組み」が必要です。それがより大きな流れやムーブメントを作っていくんじゃないかと思うんです。

芸術祭で必要だったのは、綺麗なWebサイトを作ることではなく、そのサイトでみんなが情報発信するために、コミュニケーションのツールとして使い続けられるルールやシステムを作ることだった。1つの成果物と合わせて、つくったものを運用する仕組みも構築することが大事だと思います。

 

次のページへ

編集長雑感

林さんのご提案で、いつものインタビューの形式を急遽変更し、たくさんの事例を持つロフトワークが、実際はどのようなことに悩み、創意工夫しながらプロジェクトを進めているかをお聞きすることになりました。
これまで林さんには、素晴らしいプロジェクトの成果をたくさん聞かせていただきましたが、このようなお話しを聞かせていただいたのは初めてで、これから様々な職能を持ったクリエイターと協働していくときに参考になるエピソードをたくさん伺うことができました。
ここでは、コミュニケーションの工夫についてお聞きしました。領域が異なると、会話の中で使用する言語やルールが異なることもしばしばです。それを林さんは「違いに感謝する」という前向きな思考で受け止められていました。

Profile

林千晶

Chiaki Hayashi

ロフトワーク

1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間530件を超える。 書籍『シェアをデザインする』『Webプロジェクトマネジメント標準』『グローバル・プロジェクトマネジメント』などを執筆。 2万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「ロフトワークドットコム」、グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材をテーマにしたクリエイティブラウンジ「MTRL(マテリアル)」を運営。 MITメディアラボ 所長補佐(2012年〜)、グッドデザイン審査委員(2013年〜)、経済産業省 産業構造審議会製造産業分科会委員(2014年〜)も務める。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任(2015年4月〜)。

Mail Magazineメールマガジン

「CREATIVE PLATFORM OITA」のメールマガジンにご登録いただくと、最新の情報やイベントのお知らせ、会員だけが読めるスペシャルコラムなどを無料でお届けいたします。

メールマガジンの
ご登録はこちら

© CREATIVE PLATFORM OITA.