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INTERVIEW

Interview

2017.03.31

矛盾を受け止めて、実践の中で発展的に解消する

ロフトワーク 林千晶

林千晶
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やりながらじゃないと見つけられないんですよね

 


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山出:ロフトワークの創業は?

 

林:2000年。私が29歳のときです。最初は目黒区2DKの家賃10万円くらいのマンションの1室から始まったんですよ。

 

山出:なんかロフトワークのイメージと違うなぁ! 歴史ありですね。

 

林:この時から黄色がイメージカラーなんですよ。テーブルが買えないから押入れを活用していました。

ロフトワークは立ち上げからずっと「クリエイター」という言葉を使っていたんです。デザイナーやアーティストに限定せず、創造的な行為を行う人全員を対象にしたかったから。でも当時、クリエイターって名乗る人はそんなにいなかったから、説明しても「それは何をする人たちですか? 日本に何人いるんですか?」って言われちゃって。

 

山出:どう答えたんですか?

 

林:創造的行為に関わる人間は誰もがクリエイターだから、成人人口の半分くらいかなって思って、理想も込めて「4,000万人」って答えちゃいました。

 

山出:確かに、以前は画家とか彫刻家とかイラストレーター、デザイナーって、それぞれのジャンルがはっきりしていて、クリエイターっていう言葉で表現することはありませんでしたね。
ロフトワークが創業した2000年くらいって、『クリエイティブクラスの台頭』が出版されたのとちょうど同じ時期ですよね。そのときのクリエイターっていう考え方はもっと広くて、作る人より受ける人が大事という観点が提唱されていた頃ですね。

 

林:でも日本では、まだまだ浸透していなかったんですよね。

私、創業から17年経って、最近やっと「クリエイティブ」という言葉の意味がわかったんです

 

山出:ほう。では、クリエイティブって何ですか?

 

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林:文化人類学者の川喜田 二郎が1970年代に書いた本の中に「矛盾を一度に呑み下し、実践のなかに発展的に解消することをこそ、創造的というのだ」と書いてあって、「まさにこれが私たちが追求してきたクリエイティビティだ!」と思ったんです。

アートが持つ本質的な問いの強さは、矛盾を抱えたり、無理だと思って諦めていることをもう一歩深めて見つめ直し、異なるもの同士の間に繋がりを作っていく行為にあると思うんです。

それには、やりながらしか見えてこないこともたくさんあるし、反発されることもあるだろうけど、それを乗り越えていけるだけの力もクリエイティブには必要なんだと思います。

 

山出:BEPPU PROJECTの活動は、あくまで別府や大分県という場所にこだわっているんです。活動がアーティストやクリエイターから始まるのではなく、地域や社会や未来をより豊かにしたいっていうことが原点なんです。いろんな人がいて、お互いが刺激しあい、いろんなことが起きる日常であるために、アーティストやクリエイターが必要だと思っている。どちらかというと場から始まっているんですよ。
NPOを選択した理由は、誰にも開かれた状態でありたかったことと、新しい公共について考える自治活動としての態度表明なんです。その活動の中で、創造力や洞察力を取り戻していくプロセスがプロジェクトなんだと考え、事業をプロジェクトと呼んでいるんです。

 

林:ロフトワークも事業をプロジェクトって呼んでいるんです。オリジナルの部分は違うけど、キーワードは似ていますね。

 

山出:プロジェクトって、始まりがあれば終わりもありますよね。『FabCafe』などのお店も、恒常的に続いていくイメージではなく、期間を区切って構想されたものなのでしょうか?

 

林:プロジェクトによって、設定する期間は異なりますね。例えばジャパンブランドの海外進出を支援する『MORE THAN プロジェクト』は、最初から3年間を1つの区切りに考えていました。国とのプロジェクトなので、それ以上やると大切にしたいものが歪んでしまうんじゃないかという心配があったので。『FabCafe』はあと10年か20年やってみたいなと思うし、飛騨の林業に関わるプロジェクト『飛騨の森でクマは踊る』は、逆に生きている間には終わらないなと感じています。

生きている間に終わらないプロジェクトを立ち上げて、次の世代に託していくのも悪くないなって。

 

山出:株式会社にこういう聞き方って適切ではないかもしれないけれど、自分が死んだ後に会社やプロジェクトがどうなっていくかって、考えることがありますか?

 

林:ロフトワークが続いても続かなくてもいいけれど、続けることが義務になってしまうのなら、無理して続けなくてもいいと思います。ロフトワークという形にはこだわりがないんです。ただ、ロフトワークで考えたこと、大切にしてきたことが、これから誰かのDNAの中に織り込まれて繋がっていけたら嬉しいですね。

もちろん、生きている間のバトンタッチは責任を持って果たしますよ。でも、たとえば『飛騨の森でクマは踊る』だったら、次の100年のためにどうメンテナンスすべきかは、やりながらじゃないと見つけられないんですよね。

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編集長雑感

僕は、創造力とは誰もが等しく持っている力だと信じています。忍耐力や洞察力や思考力と同じように、人それぞれに備わっているものであり、たとえばそれがある分野で活かされれば、イノベーティブと呼ばれたりするのだと思います。
近年、様々な領域で「創造力」の重要性が見直されていますが、僕は次に重要になるのは「洞察力」なんじゃないかと思っています。「矛盾を受け止めて、実践の中で発展的に解消する」という行為には、洞察力が非常に重要になるのではないかと感じました。
「やりながらじゃないと見つけられない」ことも、ただやみくもに実践するのではなく、どうすればより良くなるのか、何が課題なのかに気づく洞察力をもってこそ、発展的な解消が望めるのではないでしょうか。

Profile

林千晶

Chiaki Hayashi

ロフトワーク

1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間530件を超える。 書籍『シェアをデザインする』『Webプロジェクトマネジメント標準』『グローバル・プロジェクトマネジメント』などを執筆。 2万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「ロフトワークドットコム」、グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材をテーマにしたクリエイティブラウンジ「MTRL(マテリアル)」を運営。 MITメディアラボ 所長補佐(2012年〜)、グッドデザイン審査委員(2013年〜)、経済産業省 産業構造審議会製造産業分科会委員(2014年〜)も務める。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任(2015年4月〜)。

 

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