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INTERVIEW

Interview

2017.03.31

花の女神がロールモデル

ロフトワーク 林千晶

林千晶
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そこにある知恵を統合し、問い続けることが大事

 


 

林:飛騨のプロジェクトは、公共の課題を民間の知恵で一緒に解決するために、あえて「第三セクター」という仕組みでスタートさせてもらいました。

第三セクターでやることについては、市長も反対していたんですけど。

 

山出:第三セクターで成功している例って、ほとんどありませんよね。

 

林:ええ。でも、利益を追求する「株式会社」ではなく、社会へのインパクトを追求する米国の「ベネフィットコーポレーション」のような存在として成立するのかを実際にやってみたかったんです。

みんなからは、これまでやってきたことを全部無駄にするくらい難しいことだよって言われたけど、森に入ったときに感じる気持ち良さをちゃんと価値にしたかったし、飛騨で脈々と受け継がれている古き良き生活の知恵を学びたいと思ったんです。

 

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山出:売り上げ目標って立てているんですか?

 

林:3カ年での売り上げ目標があります。

それに、飛騨で築120年の由緒あるお屋敷を買っちゃったんです。最初は借りるつもりだったんだけど、持ち主から「買ってもらえないなら取り壊して駐車場にすることも考える」と言われちゃって。壊してしまったら、この風景は二度と元に戻らないんですよね。

ビジネスの鉄則として不動産を持つなと言われていたし、これまでも持ったことがなかったんですけど、借金して買うことにしました。

 

山出:思い切りましたね。

 

林:私たちにとって、状況は背水の陣。借金で土地も買い、木工機械も買い、飛騨の良さを高めるために必死になっている。にもかかわらず、想いが簡単には伝わらないこともあって、残念に思う時はあります。

 

山出:そういうことを、きちんと言ったほうがいいんじゃないですか?

 

林:でも、もうちょっとやることをやってから話してみたい。少しずつ成果が見えてきたら、どこかでちゃんと「一緒に価値を作っていきましょう」と言えるようになりたいですね。

 

山出:今、流行り言葉のようになっている地方創生って、これからどこに向かうべきとお考えですか?

 

林:東京のような「都市部」が世界にとっての入り口となり、地方への流れを生み出す構造は変わらないと思います。でもそれは都市と地方のどちらかが重要ということではなく、それぞれ異なる魅力や体験を提供し、補完しあっていくのが理想的ですね。

地域がそれぞれ輝くために、何をすべきか。正解は出ていませんが、自分なりに答えを見つけようと挑戦し続けることも大事。だから、アイデアをたくさん集めて、地域の状況に合ったものを選んで、どんどん試してみればいいと思います。

『CREATIVE PLATFORM OITA』や『MORE THAN プロジェクト』が提供するノウハウも完成形ではないですよね。そこにある知恵を統合し、問い続けることが大事だと思います。

 

山出:世界にはすでにたくさんの価値があるということに向き合わないと、我々の活動も価値にはならないんですよね。
有名なパティシエが作ったケーキはもちろん美味しいけれど、子どもが一生懸命作ってくれた不恰好なケーキも美味しいでしょう。その価値はどこかにお手本があるわけではないんです。
今までは東京から地方への一方通行的に価値が発信されていましたが、逆もあるはずなんです。それを提起し続けないと日本はつまんなくなっちゃうと思います。どこかに中心的な価値があって、みんながそこに集まっていくようなものではないと思っています。

 

林:少し視点は変わりますが、個人的に、年を取ったときの暮らしを考えたら、東京ではなく地方がいいなと思います。今、老後に必要なお金は5千万円って言われているんですよね。私たちは死ぬために稼いでいるわけではないのに、大変な金額ですよ。

なぜ老後にこんなにお金が必要になってしまったのかというと、年を取った後に受けるサービスがどんどん有料になっているからなんです。昔は家族がやっていたことをヘルパーの方や病院に頼むなど、お金で解決しなくてはいけない場面が増えている。

その点、地方には地域で互いを支え合う「互恵関係」が残っている。お金には代え難い、気持ちのやり取りで支えられてきた、その豊かさを取り戻したいですね。

 

山出:もともとは人それぞれに得意なことや役割があって、それで支えられてきたんですよね。

 

林:その通りです。綺麗事ばかり言って、と思われるかもしれないけど、それでも構わない。

山出さん、花の女神ってご存知ですか? 数年前、イタリアの美術館で花の女神が描かれている絵を見る機会があったんです。そこには、たとえ目の前で人が死んでいても、争いごとが起こっていても、笑顔で花を撒き続ける花の女神が描かれていて、「プロだな〜」って感心してしまいました。

それと同じように、どんな状況の中でも、ワクワクする言葉を発し続けたい。その言葉が上滑りしないように力強く、責任を持った行動で、物語を紡いでいきたい。私にとって、花の女神は良きロールモデルなんです。

 

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(完)

編集長雑感

いつも笑顔で、僕らをワクワクさせてくれる林さんですが、今回のインタビューではロフトワークのプロジェクトにおける課題や困っていることも含めてお伺いし、いつもとは違う表情をたくさん見せていただきました。
最後に「私は花の女神になろうって思ったんです」とおっしゃったときの笑顔は本当に素敵で、林さんがみんなを元気にしていろんなものを活発化させる役割に使命感を
持っていらっしゃることが強く感じられて、感動しました。
しなやかな視点で人と向き合い、地域と向き合い、未来や経済と向き合っていく林さんの周りがいつも華やいでいるのはなぜなのか、モチベーターでありファシリテーターとしての林さんの信念を知ることができました。

Profile

林千晶

Chiaki Hayashi

ロフトワーク

1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間530件を超える。 書籍『シェアをデザインする』『Webプロジェクトマネジメント標準』『グローバル・プロジェクトマネジメント』などを執筆。 2万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「ロフトワークドットコム」、グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材をテーマにしたクリエイティブラウンジ「MTRL(マテリアル)」を運営。 MITメディアラボ 所長補佐(2012年〜)、グッドデザイン審査委員(2013年〜)、経済産業省 産業構造審議会製造産業分科会委員(2014年〜)も務める。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任(2015年4月〜)。

 

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