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INTERVIEW

Interview

2017.05.11

競争するのではなく、連携する

福岡地域戦略推進協議会 事務局長 石丸修平

石丸修平
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サービス業がビジネスとして成立すれば、他の地域にはない競争力の高い産業として成長が見込める

 


 

山出:近年、海外や東京をお手本にすることによって、地域がどんどん独自のものを失っているように感じています。どこかのモデルを取り入れていくのではなく、それぞれの文化や経済圏にあったやり方を構築し、地域性に基づいた産業を創出できれば、世界の競争の中でも勝てると思っています。ですが、日本はまだまだ新しい動きを誘発・促進していく仕組みができておらず、イノベーションが起こりづらい環境であると感じています。

そのあたりについて、福岡で取組をもう少し具体的に伺いたいです。

 

石丸:いま、市民とともに新しいことにチャレンジする『リビングラボ』という社会実験に取り組んでいます。『リビングラボ』では、市民とともまちづくりのサービスやコンテンツを考えたり、企業のサービスやプロダクトを実証しながら社会実装していくまでのプロセスを都市として提供する取組です。

先日、福岡市とスタートアップに対して実証実験をサポートする事業『福岡市実証実験フルサポート事業』を立ち上げました。これは防災減災や健康福祉など、市民の受益に直結する領域で、楽しいソリューションにチャレンジするパイロット事業です。サービス業という領域にもいろいろありますが、特に市民生活に直結するところにバリューが出せるものを支えていきたいと思っています。1個人に役立つものであれば展開の可能性は極めて高く、こうした領域で地域の事情に応じてカスタマイズできるモデルを作りたいと思っています。

また、福岡は第3次産業が圧倒的に多く、製造業の割合が低いんです。おそらく日本の都市で最もサービス業の割合が高い都市の1つだと思います。日本の弱みは、圧倒的な労働生産性の低さにあります。なかでも労働生産性が低いのは、サービス業ですよね。第2次産業は改善に改善を重ねながら、世界的なコスト競争の中で戦ってきましたが、サービス業にはまだまだ改善の余地があります。しかも、地域性を帯びた、極めて地域に直結する産業です。飲食もホテルも、その地域ならではのサービスの提供ができますからね。そこで、FDCとして第3次産業の生産性をしっかり高めるための取組を進めています。サービス業がビジネスとして成立すれば、他の地域にはない競争力の高い産業として成長が見込めると思っているんです。

 

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山出:福岡は九州の窓口であり、アジア諸国における日本の窓口でもありますよね。福岡のインバウンド需要が高まることには大きな意味があると思います。その中では、MICEの推進や誘致は大きいですよね。

 

石丸:FDCは福岡市ワンストップでMICEを誘致する仕組みを作り、これまで僅差で6年連続で国内の国際会議件数2位でしたが、昨年は前年度比83件増という成果を上げています。同年の日本全体の増加件数が約160件ですから、福岡が日本の成長を牽引できるところまできました。一方で、国際的な基準をベースにした福岡の位置付けは世界で87位くらいです。50位を目指す戦略の中で、段階的に進めながら確実にランクアップしているところです。

しかし、インバウンド需要として考えると、社会経済情勢が変わったということもあり、決して福岡が魅力的だから件数が伸びているだけではないと思っています。オペレーションのホスピタリティも含め、福岡のサービスレベルは他のグローバル都市と比して決して高くはありません。これを世界レベルに高めていかなければならないと思っています。その改善の仕組みとなるビジネスモデルを福岡で作り、世界で戦えるものとして成長させていきたいというのが、我々の視点の1つです。

 

山出:それは都市をコンテンツと捉え、そのコンテンツの質を高めるというようなイメージでしょうか。

 

石丸:むしろ、これまではコンテンツを磨いてきたんですよ。MICEをはじめ、世界水泳やラグビーなど、いろんなものを誘致してきました。福岡はクリエイティブ産業が強いので、ゲーム系のMICEのサポートもしています。さらには地域経済の発展にも寄与する取組も進めています。そういうコンテンツを磨く取組は進めてきましたが、現状ではオペレーションの向上には至っていないんです。そこで、コンテンツを積み上げるのではなく、そもそもの土台となる部分を磨くべきではないかと考えています。

 

山出:地域の受け入れ体制を強化するということですね。

 

石丸:インバウンド需要が高まる中で、ハイクラスの人達を受け入れられる地域にならなければ、本当の意味でのMICE都市とは言えないと考えています。いま、福岡にはハイクラスをもてなすことができるホテルが1つもないんですよ。5つ星のホテルがなければ、都市としての競争力が持てません。そういうホテルの誘致を都市開発と絡めて推進していきたいと考えています。

また、付加価値の高いエアラインがあるかどうかも重要です。空港の民営化の最大の役割は、世界的なエアラインにアタックできることにあります。これによって都市の競争力は圧倒的に変わります。そういう機能を福岡はもっと担うべきですね。

九州全体で役割分担することも大事だと思います。福岡では、諸条件によって受け入れられないものをお断りすることもあるんですが、広域的に考えて、大分や熊本など、近隣の県と連携すれば実現できることもあると思うんです。競争するのではなく、一緒に受け入れる体制を作ることができると思っています。これまでは福岡だけで誘致しようとしていたから、間口が狭くなっていたんです。

 

山出:現状ではそういう取組は進んでいないのでしょうか?

 

石丸:FDCで始めています。今年、ライオンズクラブのMICEがあったので、実証実験をしてみたのですが、おおむね好評です。ホテルや飲食店を調査すると、MICEに関わった人達にはやはり経済的な波及効果が見られました。実証実験に参加した店舗で1年分の収益があったという店舗もあったんですよ。一方で、関わっていない人には全くお金が落ちないんですよね。今後はMICEが地域に及ぼす効果をしっかりアナウンスして、周知させていくことが課題ですね。

 

山出:熊本市に日本でも最大規模のMICE施設ができると聞いていますが、もう少しネットワークを上手く使っていくべきですよね。大きな施設の存在は国内での競争力にはなりますが、国際的な視点で考えると、大事なのは施設よりも地域の魅力ですよね。そうなると、空港やアクセスの問題が大きいのではないでしょうか。

 

石丸:おっしゃる通りです。MICEって、レセプションやアフターコンベンションが重要なんですよ。そこでどういうものを提供できるかが競争力になります。会場そのものはインセンティブにはなりません。それよりも、アフターコンベンションでどんな体験を提供できるかの方が重要なんです。

ヘルシンキでのMICEでは、バスで2日もかけてオーロラを見に行くこともあります。移動に2日もかけることが成立するのなら、日本なら福岡でのアフターコンベンションとして北海道に行くこともできますよ。競争するのではなく、連携する仕組みを作ることも、僕らの目標ですね。

 

山出:都市の魅力として発信できるカードをどれだけ持っているかということですね。

 

石丸:宗像大社でMICEを開催できるメニューを作ったら、すごく評判がよかったんです。こういう、いつも使いたいわけではないけれど、ここぞっていうスペシャルなとき使いたい場所も持っておくと強いですよね。

 

山出:選択肢が広がるというか、奥行きの深さが出ますよね。地元の人しか知らないところに行くとか、その地域ならではの体験って大事ですね。

 

石丸:そうですね。そういうところに細やかな対応力が求められると思います。

 

 

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編集長雑感

福岡は国内で最も第3次産業の割合の高い都市の1つです。第3次産業における差別化を図れなければ成長は見込めません。ましてMICE都市を目指すうえでは、ハイクラスのお客様をもてなすことができる、世界レベルでの高いサービスが求められます。
一方で、第3次産業は労働生産性の低い産業の筆頭格でもあります。その労働生産性を向上し、サービス業がビジネスとして成立するために、福岡では官民が連携し、他の地域にはない競争力の高い産業として成長させる戦略を立てていました。その1つとして、福岡だけでは担えないものも、広域的に連携することで担っていく考えがありました。近隣の地域と競争するのではなく、それぞれの地域のリソースを活かしながら共に実を取る考えは、先進都市福岡ならではのソリューションであると感じました。

Profile

石丸修平

Shuhei Ishimaru

福岡地域戦略推進協議会 事務局長

経済産業省入省後、大臣官房政策評価広報課、中小企業庁長官官房参事官室等を経て、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に参画。その後、福岡地域戦略推進協議会(FDC)に転じ、2015年4月より現職。アビスパ福岡アドバイザリーボード(経営諮問委員会)委員長、Future Center Alliance Japan(FCAJ)理事、九州大学地域政策デザイナー養成講座エグゼクティブディレクター、九州大学ロバートファンアントレプレナーシップセンター客員准教授、福岡女子大学地域連携センター客員研究員の他、大阪府吹田市情報化推進懇談会委員、沖縄MICE振興戦略検討委員会委員等公職も務める。

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