MENU

CREATIVE PLATFORM OITA

supported by BEPPU PROJECT

INTERVIEW

Interview

2017.03.24

土地に対して思いを持った人たちと一緒に作りたい

D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長 ナガオカケンメイ

ナガオカケンメイ
page4
前のページへ

長く続いている産業の背景には、必ずその土地の風景があります

 


 

 

backnumber

画像提供元:D&DEPARTMENT PROJECT

山出:ナガオカさんが発行人となっているトラベルガイドブック『d design travel』って、一般的な観光ガイドブックとはコンセプトが全く違いますよね。

 

ナガオカ:ほとんどの観光ガイドブックって、編集者が情熱を持って取材しているわけではないんですよ。現地に行ったことがない人が企画していて、写真もきれいに加工してあるから、実際に行ってみたら掲載している情報と全然違うなんてこともあります。
よく「旅がお好きなんですね」なんて言われるけど、それが動機ではないんですよ。ちゃんと現地で取材して、実際に体験して感動したことを紹介していかないと、観光が歪んでしまうって思ったんです。
土地に対して思いを持った人たちと一緒に作りたいから、広告もその土地の企業に依頼しています。だから、広告営業も毎回ゼロから始まるんですよ。

 

山出:地方で広告を集めるのって大変なことですよね。

 

ナガオカ:大変ですよ。でも、制作費のうちの半分は広告費で、もう半分は実売で賄っています。
有名な雑誌でも、広告に頼りすぎて廃刊になってしまうケースがあるように、やっぱり実売しないとダメだと思っています。だからこそ、内容はビジネスベースではなく、その土地の良さを詰め込むことを意識しています。

 

山出:ナガオカさんのご活動の根底には「風土」というキーワードがあるように感じています。

 

ナガオカ:そうですね。僕は文章を書くときには必ず「風土」という言葉を取り入れるようにしています。
長く続いている産業の背景には、必ずその土地の風景があります。その土地固有の地形や立地であったり、寒いとか暑いとか、川や山があるとか、そういう要因によって生まれているんです。柳 宗悦も言っているように、その土地固有のものをベースにすることが大事なんです。

 

travel_15

画像提供元:D&DEPARTMENT PROJECT

 

山出:東京の手法がスタンダードになって、各地のデザインが似通っていくなかで、
これからデザイナーという職業をいかに考えていくべきでしょうか?

 

ナガオカ:やみくもに営業して仕事を増やしていくのではなく、何が必要とされているのかを考え、向き合っていくべきです。
デザイナーとは、デザインによって解決できる仕事を自ら探し出す職業でなければならないと思います。何が課題なのかを考え、解決の手段として自分の得意とするデザインという領域から提案していくことを目指していきたいですね。

 

山出:たとえば、人と人とを繋ぐことによって、新しい何かが生まれていくよう促したり、そういう役割もデザイナー的な視点のあり方ですよね。

 

ナガオカ:そうですね。形のないものをデザインした結果、形を作ることに繋がって、それが広がっていくみたいなあり方が理想ですね。自分の代表作を作りたいとか、あんなデザインをしてみたいとか、そういうことから始まると、みんな同じになっちゃうんですよ。
僕はデザイン学校で「デザイナーになるな」って教えています。デザイナーになることがどれだけ社会悪であるかを学生に教えているんです。

 

山出:社会悪!?

 

ナガオカ:だって、世の中のほとんどのゴミはデザイナーが作ったものですからね。そのうえで、どうしてもデザイナーになりたいんだったら…っていう授業をやっているんです。
正しいデザイナーとして輩出され続けたなら、社会は変わっていくんです。デザイナーが社会的な職業であることを、もっと教育しなければならないと思います。
大事なのはやっぱり中身です。それを補うのがデザインであるべきなんです。

 

山出:大分県って、まずは温泉があって、観光業をイメージされるかと思いますが、大きな企業の工場を誘致したことから製造業も盛んなんですよ。そういった地場の企業や中小企業に対して、デザイナーとしてどういう関わり方があると思いますか?

 

ナガオカ:ヒットした事例を真似ると、競争が生まれます。ないものを取り入れて無駄な競争をするのではなく、いかにその土地で生まれたものを大事にしていくかを考えるべきでしょうね。
無理をすると、どうしても異物感が生まれてしまいます。存分に大分らしさを活かして、大分だからこそできる産業を目指すべきだと思います。

 

 

(完)

編集長雑感

『d design travel』では、編集者が現地を訪れて取材するということ、そして土地に対する思いのある人と一緒に作るため、広告も現地の企業から募っているということに、デザイナーの社会的な役割が象徴されていると思いました。
大正から昭和にかけて活躍した宗教哲学者の柳 宗悦は、名もなき民衆が生活に必要な工芸品を作るなかで、深く土地と交わり、自然へと帰依していく姿にこそ美が宿るとし、「民藝」という言葉を生み出すとともに、日用雑器の価値を再評価する「民藝運動」を展開しました。ナガオカさんの一貫してその土地らしさを追求し続ける活動は、デザイナーの社会的な役割を担うために始まった、現代の「民藝運動」なのだと思います。
ナガオカさんの活動は、日本中がその土地らしさを活かし、より良くなっていくためのデザインを啓蒙し続けています。

Profile

ナガオカケンメイ

Kenmei Nagaoka

D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長

デザイン活動家。1965年北海道室蘭生まれ。1990年、日本デザインセンター入社。原デザイン研究所設立に参加。2000年、東京世田谷に、ロングライフデザインをテーマとしたストア『D&DEPARTMENT』を開始。2002年より『60VISION』(ロクマルビジョン)を発案し、60年代の廃番商品をリ・ブランディングするプロジェクトを進行中。2003年度グッドデザイン賞川崎和男審査委員長特別賞を受賞。日本のデザインを正しく購入できるストアインフラをイメージした『NIPPON PROJECT』を47都道府県に展開中。2009年より旅行文化誌『d design travel』を刊行。日本初の47都道府県をテーマとしたデザインミュージアム『d47 MUSEUM』館長。
2013年毎日デザイン賞受賞。武蔵野美術大学客員教授。京都造形芸術大学教授。

Mail Magazineメールマガジン

「CREATIVE PLATFORM OITA」のメールマガジンにご登録いただくと、最新の情報やイベントのお知らせ、会員だけが読めるスペシャルコラムなどを無料でお届けいたします。

メールマガジンの
ご登録はこちら

© CREATIVE PLATFORM OITA.