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INTERVIEW

Interview

2017.05.25

あえて読みづらい時計を作ることにしました

イラストレーター・陶芸家 中野伸哉

中野伸哉
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知らないからこそ提案でき、真っさらだからこそ、その物事の本質を捉えたいと心がけています

 


 

山出:『温故蜜柑』『ハンザキ柚子』以外にも、旅館やホテルのブランディングも行っていらっしゃいますよね。

 

中野:宿泊業なんかも僕は全くの素人なわけですが、知らないからこそ提案でき、真っさらだからこそ、その物事の本質を捉えたいと心がけています。

 

山出: 中野さんは別府市のリゾートホテル『潮騒の宿 晴海』(以下、『晴海』)と『GAHAMA terrace』のブランディングをしたとのことですが、具体的にどのように関わっていたのでしょうか?

 

中野:『晴海』のリニューアルのとき、オーナーが新しい部屋に置くための時計を探して僕の工房を訪ねて来ました。僕としては、本当にその空間に合う時計を提案したかったので、一度ホテルを見せていただくことにしたんです。実際に行ってみると、すごくスタイリッシュな空間で、僕の作っていた時計では合わないと感じました。

合わない理由をお話しするなかで、オーナーのお客様への気持ちを聞くと、「時間を気にせずゆっくり過ごしてほしいから本当は時計を置きたくないけれど、置かないとお客さんが困る」と言うんです。そこで、『晴海』のために、あえて読みづらい時計を作ることにしました。『ホワイトタイム』、つまり空白の時間という意味を込めて、白い文字盤に白い針、そして無音の時計です。一見時計には見えないけれど、時計を探している人にだけは大体の時間が分かるようなね。

ホテルの部屋のご案内には僕がこの時計を作った理由が印刷してあります、ホテル側からのメッセージだと、ちょっとお節介な印象になるので、僕が作者として「社長の思いを形にしたら、こんな読みづらい時計になってしまいました」っていうようなコメントを寄せています。現在この「ホワイトタイム」という考え方は 接客マニュアルの基本となっています。

 

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『White Time』

 

山出:そういう解決の仕方があるんですね。

 

中野:事細かく時間を教えること自体がサービスの本質ではないと思いますからね。接客においてもあれこれお世話をするのが目的ではないと思っています。

 

山出:『晴海』に関わることになって、実際にどこまでブランディングを行っているのですか?

 

中野:相談や質問があればそれに対して提案するスタンスです。あくまでも、僕の提案は社長の考えをまとめるための1つの材料なので、必ずしもその通りにしなくてもいいとも伝えています。

 

山出:隣接しているホテル『GAHAMA terrace』にはどこまで関わったんですか?

 

中野:立ち上げからです。

 

山出:ネーミングやロゴマークも中野さん考案なのでしょうか?

 

中野:いえ、名前は社長が考えたものです。ホテルがある地区を上人ヶ浜(しょうにんがはま)と呼ぶのですが、地元住民は親しみをこめて「がはま」と呼ぶそうです。「がはま」を「照らす」場所で『GAHAMA terrace』と決まりました。そのネーミングに社長がより確信をもてるようGA・HA・MAを使って英文を作り、「GAteway to HArmony and MArineresort.」としました。「この施設は調和への入口です」という基本のコンセプトがあれば、おのずとサービスの有り方も変わってきますよね。

 

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『GAHAMA terrace』外観

 

山出:具体的にどこからどこまでがというよりは、聞かれたことに応じる形で、寄り添いながらやっているんですね。

 

中野:でも、仕事の線引きははっきりしていますよ。たとえばロゴマークを作る場合、僕はデザイナーでもあるから自分でデザインができますが、もしもデザインができないプロデューサーだったら外注しますよね。プロデュースとデザインは別の仕事ですから、もし僕がデザインを依頼されたら、それはデザイン料金として別に請求することにしています。

 

山出:クリエイターがその線を示さなければ、企業もわかりませんからね。

 

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編集長雑感

『潮騒の宿 晴海』からの時計の納品依頼がきっかけとなり、プロデュースまで関わることになったということでした。中野さんは社長と対話するなかで、社長が望んでいることはお客さんに時間を忘れてその空間でゆっくり過ごしてもらうことだと知ります。一方で、時計がなければ困るお客さんもいるため、そこへの配慮も必要でした。既存の時計では、この相反するニーズを満たせないと思った中野さんは、社長の想いを受け止めるオリジナルの時計を制作しました。中野さんは、場合によっては経営者自身も気づいていない望みを抽出し、コミュニケーションを通して独自の提案を行い、その背中を後押しします。このようなクリエイターの姿勢は、新しいことを始めたいと思っている経営者にとってとても心強いものとなることでしょう。

Profile

中野伸哉

Shinya Nakano

イラストレーター・陶芸家

1958年福岡県出身。1979年、NHK(東京)にて番組制作(特殊美術)に参加後、1982年に渡米。その後、ニューヨークでの作品制作を経て1989年に渡豪、シドニー現地新聞社に勤務。帰国後、1999年より国東市に『陶器・ガラス工房 ラパロマ』、その後『ギャラリーマスヤ』オープン。企業のプロデュース、商品企画、地域プロデュースなどを手がける。
主な掲載雑誌は『プレジデント』、『プレジデントファミリー』、『ベースボールマガジン』、教科用図書など。主な企業・地域プロデュースに『潮騒の宿 晴海』(別府市)のブランディング、『温故蜜柑』(国東市)など。大分県国東市広報アドバイザー、宇佐市6次産業アドバイザーなども行う。
株式会社 国東七(Kunisaki Seven Inc.)取締役 会長。

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